【力を抜く・無駄な力を抜く・リラックス】 |
大体、日本人の8割から9割は、人前で話したり、何かする時に「あがる」と言われています。
私の場合は、人前で話したり、空手で人前で演武したりする時は、緊張しましたし、心臓がバクバクしたり、顔が真っ赤になったりしていました。中学の時は「ゆでダコ」見たいと言われたりもしました。もし、今そういう機会に出会えば、同じように「あがる」事でしょう。「ええ歳して、ほんまかいな?」と、言われそうですが、最近のスポーツマンのインタビューなんかを聞いていると、実に羨ましい限りです。特に女性は肝が据わっているのか、見事に応対していますね。
もともと、人を羨ましいと思う事はありませんが、「あがる」事を克服できればなぁ、とは思います。今更ですが。
置かれた立場で、そんな状況に立たされる事は、十分考えられると思います。もう、私のように、自ら進んで「蟄居」の身であれば良いのですが、若い間は、そうも言っていられない事と思います。
私も30歳になる前に、公認の4段を受審した時に、こんな経験をしました。
武道館で審査のある、前日の事です。それまでも、色々緊張する場面は経験したつもりでいましたが、何と、高熱と下痢、嘔吐にみまわれました。もう、大変、寝る事も出来ません。「えらい、こっちゃ!」です。てっきり病気だと確信していました。それでも、大阪から大枚を叩いて来ましたし、泊めてもらったのが、妻の実家でしたから、大丈夫のような顔をして、ヨタヨタしながら、武道館に向かいました。
夢遊病者のように、審査を受け、何をどんな風にやったのかも、記憶にありません。一緒に受審した同僚に、「どうだった?」と聞くと、いつも通りやっていたと、言ってくれましたが、本当の所は解りません。
審査が終わって、その同僚と武道館の前の芝生で、横になり、30分ほど、ぐっすり寝てしまいました。さて、起きた時に、びっくりしました。全く熱が下がっているではありませんか。これが、緊張のあまり体に異変を来すことか、と思わぬ経験をしたのです。
この事ばかりではありません。仕事の面でも行き詰って、全身アトピー性皮膚炎になった事もありました。
今になって考えれば、まぁ、人生いろいろ、と思い出になりましたが、当時は大変だったように記憶しています。
程度の差はあっても、人は「あがる」ものと、理解する必要がありそうです。
私の場合を考えると、第一に考えられるのは、「自意識過剰」、ええかっこしいだったんでしょう。例えば、小学校の時なんかは、自信のあるテストを返してもらう時など、ドキドキしませんでしたか。逆に自信のないテストの場合はドキともしません。要するに、期待感が緊張させているのではないでしょうか。
専門家から言わせると、自律神経のバランス、いわゆる交感神経と副交感神経のバランスが崩れたと言うでしょう。
また、深呼吸をする事で、緊張感が和らぐとも言っています。その通りなんですけどね。緊張すると「アクビ」が出たりして、体が深呼吸を要求しますよね。
それで、緊張が本当に溶けるといいのですが、あまり期待しない方が良いと思います。型や組手をやっている時に、深呼吸できないですしね。体を動かす場合は特にです。それほど、筋肉が固くなるほどの緊張は、重症なんです。
もう一つ、型や組手と深呼吸は、相性が悪い事が挙げられます。なぜなら、胸で大きく呼吸をすると、重心が上がってしまうからです。ますます、肩に力が入って、体幹の必要な求心力が無くなってしまいます。
では、解決方法の一つを紹介します。
- まず、仰向けに寝てください。
- 足を90度くらい曲がるまで、踵をお尻に近づけます。
- 含胸抜背を寝たままやります。
- 腹筋運動のように頭を上げてはいけません。
- 息を吸い込みますが、その時、腰の部分(腰椎)を床に押し付けます。
- 腰を床に押し付けるように息を吸い込むと、骨盤が後屈します。
- 骨盤が後屈する感じは、お尻がしまり上に持ち上がる感じです。しかし、持ち上げてはいけません。
- イメージとしては、上半身が縮む感じです。腹筋が自然に硬くなります。
- 吐く時も、同じように床から腰椎を上げないようにしてください。
- 東恩納系に伝わる、三戦や転掌の型の場合も同様の呼吸法を使います。ただし、流派によって方法は異なります。
- 大体イメージ通り呼吸が楽に出来るようになったら、立って、自分のやりたい立ち方で、同じことをやりましょう。
- 静止した状態で、出来るようになったら、簡単な型で試してみます。
- 難しく言うと、足の裏で呼吸する感じですが、あまり気にする事はありません。
- なるべく呼吸は、お腹を膨らませて吸い、次に横隔を膨らませます。
- 吐く時は、肩を下げると横隔膜がしぼみ、お腹は膨らんだ状態を維持します。
- この呼吸をしている時は、胸を膨らませて、呼吸しない事です。
- 一通り型をやり終える頃には、呼吸方法と共に、「あがる」事から、心は呼吸に一心になっているでしょう。
なぜ、この方法が「あがり」を解消してくれるかというと、この呼吸法は、一つの「洗脳」の効果がある事を経験で知っているからです。
洗脳と言っても、宗教的なものではなく、どちらかと言うと、自己催眠にあたるのかも知れません。一心にしてくれると言う意味です。
沢庵和尚が聞くと、怒るかも知れませんが、我々凡人は、不動智の前に一心になるべきでしょう。健闘を祈ります!