「五輪書」から学ぶ Part-18
【水之巻】五方の搆の事

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   五輪書から】何を学ぶか?  

 ここでは、剣術の構えについて、詳細に書いています。空手の場合は、昔から「空手に先手なし」「空手に構なし」とも言われています。

 仕事をする上で、新しい事に取り掛かる時、無造作に取り掛かる事は、滅多にない事です。やはり、それなりの準備が必要になります。情報の収集も必要になるかと思います。

 武蔵が言う、五つの構え方とは、如何にも武蔵らしい、具体的な刀の構え方を詳細に語っていると思います。そして武蔵は、単に剣の振り方だけが、我流儀ではないと言っている事を念頭に読み進める事にしましょう。

【水之巻】の構成

 1. 水之巻 序           
 7. 五方の搆の事
 8. 太刀の道と云事
 9. 五つの表の次第の事
10. 表第二の次第の事
11. 表第三の次第の事
12. 表第四の次第の事
13. 表第五の次第の事
14. 有搆無搆の教の事
15. 一拍子の打の事
16. 二のこしの拍子の事
17. 無念無相の打と云事
18. 流水の打と云事
19. 縁のあたりと云事
20. 石火のあたりと云事
21. 紅葉の打と云事
22. 太刀にかはる身と云事
23. 打とあたると云事
24. 秋猴〔しゅうこう〕の身と云事
25. 漆膠〔しっこう〕の身と云事
26. たけくらべと云事
27. ねばりをかくると云事
28. 身のあたりと云事
29. 三つのうけの事
30. 面〔おもて〕をさすと云事
31. 心〔むね〕をさすと云事
32. 喝咄〔かつとつ〕と云事
33. はりうけと云事
34. 多敵の位の事
35. 打あひの利の事
36. 一つの打と云事
37. 直通〔じきづう〕の位と云事
38. 水之巻 後書
『原文』
7. 五方の搆の事 (原文を下記のルールに従って加筆訂正あり)
 五方の搆へは、上段、中段、下段、右の脇に搆ゆること、左の脇に搆ゆること、これ五方なり。
 搆、五つに分かつといへども、みな人を斬らむためなり。搆へ、五つより外はなし。いずれの搆へなりとも、搆へと思はず、斬ることなりと思ふべし。構への大小は、ことにより、利に従ふべし。
 上・中・下は体の搆へなり。両脇は、用の構へなり。右・左の構へ、上の詰まりて、脇一方詰まりたるところなどにての搆へなり。右り・左は、所によりて分別あり。
 この道の大事にいはく、搆への極まりは中段と心得べし。中段、構への本意なり。兵法大きにして見よ、中段は大将の座なり。大将に付き、あと四段の搆へなり。よくよく吟味すべし。
加筆訂正のルール
                 *仮名遣いを歴史的仮名遣いに統一
                 *漢字は現行の字体に統一
                 *宛て漢字、送り仮名、濁点、句読点を付加
                 *改行、段落、「序」「後記」を付けた
 『現代文として要約』

 7. 五方の搆えのこと

 五方の構えは、上段、中段、下段、右の脇、左の脇に構える。
 構えは五つに分けるが、それぞれ人を斬るためである。構えは五つ以外にはない。しかし、構えと思わず、斬ることと思う必要がある。構えは、その時の状態により、勝つ事ができる利にしたがい、大きくなったり小さくなったりする。
 上段・中段・下段は、基本の構え方である。両脇に構える方法は、その応用である。右脇、左脇に構えるのは、上が詰まった場所にて使う。片側が詰まっている時には、もう一方の構えで構える。それぞれ、その状況によって判断する。
 昔から、構えの極意は、中段と心得よ、とある。通常は中段に構える。兵法を大きな視点で見ると、中段は大将、この大将に従って、あとの四つの構えがある。
よく考えて見る事である。

 『私見』

 私は、「構なし」が有効と思っています。空手だけではなく、社会生活に於いても、経験上、こちらが構えると、相手も身構えてしまいます。

 もちろん、真剣を前にそのように、平静を保っていられるかというと、疑問ですが、内心は身構えたとしても、外から見て身構えていると感じさせない工夫が必要だと思っています。

 それでも、全く構えないかと言うと、そうではありません。

 例えば、下半身で言えば、棒立ちになる事ではありません。若干膝を曲げ、常にどちらにでも動きやすい状態にします。

 組手の練習をすれば、体に染みついてきますので、それが構えであり、すでに武蔵の言う「いずれの搆へなりとも、搆へと思はず」(原文)となっているはずです。この言葉が武蔵が伝えたかった事ではないかと思っています。五つの構えは教えるが、身についてしまったら、構えに拘る必要はない、と言っているだと思います。

 仕事にしても、事に当たるまでに、用意周到準備をしますが、仕事上で、こんなに準備しましたと見せびらかす必要もないし、自慢する必要もないではないですか。却って仕事の目的を忘れて、仕事が滞り、ついには失敗してしまう事にもなりかねません。正に、武蔵の言う「五つに分かつといへども、みな人を斬らむためなり。」の通り、仕事の場合の構えは、成功させるためにあります。

 組手の時に仰々しく構えたり、わざと手をダランと下げたりする必要もありませんし。相手を誘うために、故意に隙を作る必要もありません。常に構えに囚われないよう、自然と構えた姿勢が大切であると考えます。

 【参考文献】 

・佐藤正英(2009-2011)  『五輪書』ちくま学芸文庫.


 
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