「五輪書」から学ぶ Part-26
【水之巻】二のこしの拍子の事

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   五輪書から】何を学ぶか?  

 前回の一拍子から、武蔵の面目躍如とも言える「勝つ利」を得るための、具体的な稽古の方法が語られています。その一つ一つが、机上論では、ともすれば飛躍してしまうような事柄も、空理空論ではなく、実体験を本に書き残されたと思われる臨場感を感じさせてくれます。

 刀の扱い方、その時の心の在り方、体の置き方など、 不動智神妙録 Part3とは、違った、神髄とも言える事が、見えてくるのではないでしょうか。

 最近では、マニュアルという方法が、物事の習得を手助けしていますが、江戸時代の初期に、これほど克明に練習カリキュラムを明示する事を考えた、武蔵の非凡さをうかがい知る事が出来ると思います。
 大工を例に出し説明している武蔵が、背中を見て覚える方法ではなく、また手取り足取りでもなく、理論を示した事は、画期的な事だと思います。
 現在のマニュアルのように、全て、その通りにすれば事が足りるような、上辺だけ出来れば良いのでもなく、自分で会得し、考えさせる方法が同時に書かれてあることも、人を指導する立場の人は、見習わなければならない事だと思います。

【水之巻】の構成

 1. 水之巻 序           
16. 二のこしの拍子の事
17. 無念無相の打と云事
18. 流水の打と云事
19. 縁のあたりと云事
20. 石火のあたりと云事
21. 紅葉の打と云事
22. 太刀にかはる身と云事
23. 打とあたると云事
24. 秋猴〔しゅうこう〕の身と云事
25. 漆膠〔しっこう〕の身と云事
26. たけくらべと云事
27. ねばりをかくると云事
28. 身のあたりと云事
29. 三つのうけの事
30. 面〔おもて〕をさすと云事
31. 心〔むね〕をさすと云事
32. 喝咄〔かつとつ〕と云事
33. はりうけと云事
34. 多敵の位の事
35. 打あひの利の事
36. 一つの打と云事
37. 直通〔じきづう〕の位と云事
38. 水之巻 後書
『原文』
16. 二のこしの拍子の事 (原文を下記のルールに従って加筆訂正あり)
 二の腰の拍子、われ打ちださむとするとき、敵速く引き、速く張り退くるやうなるときは、われ打つと見せて、敵の張りて弛むところを打ち、引きて弛むところをうつ、これ二の腰の拍子なり。この書付ばかりにては、なかなか打ち得難かるべし。教へうけては、たちまち合点のゆくところなり。

加筆訂正のルール
                 *仮名遣いを歴史的仮名遣いに統一
                 *漢字は現行の字体に統一
                 *宛て漢字、送り仮名、濁点、句読点を付加
                 *改行、段落、「序」「後記」を付けた

 『現代文として要約』

 16. 二の腰の拍子のこと

 二の腰の拍子とは、我打ち出そうとした時に、相手が素早く退き、素早くその打ち出した刀を撥ねるような時は、我打つと見せて、相手が撥ねて弛むところを打つ。又は、退いて弛むところを打つ。これが二の腰の拍子である。
 ここに書いてあるだけでは、なかなか打つことが出来ない。手に取って教えられたら、直ぐに納得できる。

 『私見』

 ここに書かれてある事も、常々反復練習して、体得する必要があると思います。

 ただし、自分が打ち出す時に、相手の動きを予定して、打ち出すのは、良くないと思っています。要するに、殺陣のような順序が決まっている事は、いくら反復練習を重ねても、実戦の役には立ちません。逆に悪い癖がつくだけです。

 自分が打ち出す時は、この一手で相手を制する覚悟で、打ち込むべきです。稽古の時もこの気持ちが重要です。そして相手の動きをいち早く察知する練習をすれば、反復練習の意味が、格段に違ってきます。その反復練習によって体得した技は、術となって、武蔵の言う「勝つ利」に適うものと思います。

 ここでもやはり、ビジネスや個人的な仕事、趣味に至るまで役に立つことがあると思います。

 一時、想定内と言う言葉が流行りましたが、人間は想定外の事に出くわすと、パニックになる場合があります。予め想定してあっても、想定だけでは、やはりうろたえる事にもなりかねません。しかし、想定外の事を常に心において、身に付けて置く事で、まったく予想もしなかった事に出くわしても、対処する事の出来る心が備わって行くのではないでしょうか。

 【参考文献】 
・佐藤正英(2009-2011)  『五輪書』ちくま学芸文庫.


 
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