「五輪書」から学ぶ Part-39
【水之巻】三つのうけの事

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   五輪書から】何を学ぶか?  

 出会いがしらにぶつかると、思わぬ衝撃があり、相当のダメージがあります。交通事故などでもよくある光景です。

 ボクシングのカウンターに当たるものですが、相手の行く方向と、自分が行く方向が真正面であれば、速度が二倍になるので、当然、衝撃力は、自分が出せる衝撃力よりも強くなるのは、よく解ります。

 しかし、普通の場合は、ある程度自分の行く方向と逆の方向に相手は動きますので、衝撃力は吸収されて弱くなります。
 野球の捕球と同じで、球を受ける時に、若干グローブを飛んでくる球とは逆の方向に移動させます。球技では当然のように、技とは呼べない程、常識となっています。

 衝撃力の強さは、徒手空拳の場合は、重要な要素ですが、刀を持った場合は、触れれば斬れるので、さほど重要ではないと思うのですが、それでも、武蔵は「勝つ利」を得るためには、そのタイミングが必要と考えたのではないでしょうか。

 テーマ「三つのうけ」と、「受け」と呼んでいますが、相手が攻撃してきた場合の、攻撃方法と考えて、読んで見れば良いのかと思います。

 現在でも、理論構築さえしっかり出来ていれば、議論に勝たなければならない時に、重要な方法であるのではないでしょうか。

【水之巻】の構成

 1. 水之巻 序           
29. 三つのうけの事
30. 面〔おもて〕をさすと云事
31. 心〔むね〕をさすと云事
32. 喝咄〔かつとつ〕と云事
33. はりうけと云事
34. 多敵の位の事
35. 打あひの利の事
36. 一つの打と云事
37. 直通〔じきづう〕の位と云事
38. 水之巻 後書
『原文』
29 三つのうけの事 (原文を下記のルールに従って加筆訂正あり)
 三のうけといふは、敵へ入りこむとき、敵打ち出す太刀を受くるに、わが太刀にて、敵の目をつくやうにして、敵の太刀をわが右の方へ引き流して受くること、また、突き受けといひて、敵打つ太刀を敵の右の眼を突くやうにして、首を挟む心に突き懸けて受くるところ、また、敵の打つとき、短き太刀にて入るに、受くる太刀はさのみ構はず、われ左の手にて敵の頬を突くやうにして入りこむ。これ三つの受けなり。左の手を握りて、拳にて頬を突くやうに思ふべし。よくよく鍛錬あるべきものなり。
加筆訂正のルール
                 *仮名遣いを歴史的仮名遣いに統一
                 *漢字は現行の字体に統一
                 *宛て漢字、送り仮名、濁点、句読点を付加
                 *改行、段落、「序」「後記」を付けた
 『現代文として要約』

 29 三つのうけの事

 三つの受けとは、敵の懐に入り込むとき、敵が打ちだす太刀を受けるのに、自分の太刀で、敵の眼を突くようにして、敵の太刀を自分の右側に引き流して受ける事。また、突き受けと言って、敵の打つ太刀を敵の右の眼を突くようにして、首を挟むつもりで、突き懸けて受ける、また、敵の打つときに、短い太刀で入り、相手の受けようとする太刀は構わずに、自分の左手で敵の顔を突くようにして入り込む。これを三つの受けという。左の手を握って、拳にて顔を突くような気持になる。よくよく鍛錬する事。

 『私見』

 まだ、松濤館流を学ぶ前に、少しの間、糸東流を学んでいた時期があります。その時の、揚げ受けは、相手が上段を突いて来た時には、相手の拳と交差するように、相手の顔を突くつもりで上段突きをする事を習った記憶があります。確か、その時は、突き受けと言っていたと思います。

 松濤館流の上段揚げ受けは、相手の突きの、小手の部分(腕と手の境目)を下から跳ね上げるのが一般的だと思います。

 突き受けは、かなり度胸が要りますが、慣れると、跳ね上げるより、少しの力で相手の突きを外す事ができたように思います。

 突きではなく、それが刀の場合は、もっと度胸と鍛錬が必要と思います。それと、タイミングが合わないと、拳でも刀でも相手の攻撃の方が勝りますので、注意が必要です。

 競技の空手では、相手の攻撃と交差しながら攻撃するのをよく見かけます。これは、「火之巻」にある「三つの先といふこと」に書かれてある、相手に攻撃を仕掛ける方法の一つで、タイミングを合わせる事ができれば、非常に有効な攻撃技です。

 詳しくは「火之巻」に譲ることにしましょう。

 【参考文献】 
・佐藤正英(2009-2011)  『五輪書』ちくま学芸文庫.


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