「五輪書」から学ぶ Part-52
【火之巻】景氣を知ると云事

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  【五輪書から】何を学ぶか?  

 仕事でも、上手く行く時と、何をやっても上手く行かない時があります。色々な条件が重なり、国全体の景気が上向きになったり、低迷したりと、専門家でも分析は難しいのでしょう。近頃では国際的な動きもその要因の一つとなります。

 「栄枯盛衰」と言う事をよく言われます。「生者必滅、会者定離は世の習い」(平家物語)も聞きなれた言葉です。
 左の絵は一ノ谷の戦いで、平氏敗走の図です。当時隆盛を誇っていた平氏も追い詰められ、滅びていったという歴史が、「驕る平家は久しからず」と言う言葉となって、現在でも戒めの言葉として使われています。

 個人の事でも、バイオリズムなのか、季節に対応できないのか、朝と夜、四季によっても体調が狂います。ただ、この変化に、日本人は昔から、四季折々の楽しみを文化として持っていました。最近はどんどん廃れていってますが、どこに向かっているのでしょう。

 ここで言う「景気」と言うのは、兵法ですから、経済的な景気でない事は、直ぐに解ります。武蔵は、どんな「景気」を知る、と言っているのでしょうか。
 

【火之巻】の構成

1. 火之巻 序
2. 場の次第と云事
3. 三つの先と云事
4. 枕をおさゆると云事
5. 渡を越すと云事
6. 景氣を知ると云事
7. けんをふむと云事
8. くづれを知ると云事
9. 敵になると云事
10. 四手をはなすと云事
11. かげをうごかすと云事
12. 影を抑ゆると云事
13. うつらかすと云事
14. むかづかすると云事
15. おびやかすと云事    
16. まぶるゝと云事
17. かどにさはると云事
18. うろめかすと云事
19. 三つの聲と云事
20. まぎると云事
21. ひしぐと云事
22. 山海の變りと云事
23. 底をぬくと云事
24. あらたになると云事
25. 鼠頭午首と云事
26. 将卒をしると云事
27. 束をはなすと云事
28. いはをの身と云事
29. 火之巻 後書
  
『原文』
6. 景氣を知ると云事 (原文は、播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」http://www.geocities.jp/themusasi2g/gorin/g00.htmlを引用した)
景氣をみると云ハ、大分の兵法にしてハ、敵のさかへ、おとろへを知り、相手の人数の心を知り、其場の位をうけ、敵のけいきを能見分、我人数何としかけ、此兵法の理にてたしかに勝と云ところをのミ込て、先の位をしつて戦所也。又、一分の兵法も、敵のながれをわきまへ、相手の強弱、人がらを見分け、敵の氣色にちがふ事をしかけ、敵のめりかりを知り、其間の拍子をよく知て、先をしかくる所、肝要也。物毎のけいきといふ事ハ、我智力強けれバ、かならずミゆる所也。兵法自由の身になりてハ、敵の心を能斗て勝道多かるべき事也。工夫有べし。(1) 
【リンク】(1)は【註解】として、播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」にリンクされています。

 『現代文として要約』

 6. 景氣を知ると云事

 景気を見ると言うのは、合戦などでは、敵の勢いがある時、衰えている時を知って、相手の人数などの情報を知り、その場の形勢を考えて、敵の様子を見極め、味方の軍勢の仕掛け方を兵法の理に合うようにし、勝てる事を確信し、先に懸かる態勢を作り戦う。
 又、一対一の兵法でも、敵の動きを知り、相手の強弱、性格を見定めて、相手の心の隙に仕掛け、相手の抑揚を知り、その間隙の拍子をよく知って、先に懸かる事が肝心である。
 物事の景気と言うのは、自分の知力が強ければ、必ず見えてくる。兵法が自在の身になって、敵の心をよく測れば、勝つ道が多い。工夫する事。

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 『私見』

 ここでも、孫子の言う「彼を知り己を知れば百戦殆からず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆しが想起されますが、武蔵は抽象的な表現をせず、具体的な方法を示している所が、学者と武芸者の違いと言えると思います。より現実的な指標となるでしょう。

 中でも、敵の「人がらを見分と、性格まで考える所が凄いと思います。
 私はかえって「窮鼠猫を噛む」とか「男子三日会わざれば刮目して見よ。」を考え、出来るだけ予想、推測をしないようにしています。これも、油断をして痛い目にあった体験から、戒めの意味で心の隅に置いています。

 ただ相手が気勢が上がっている時に、わざわざ仕掛ける必要もないと、思いますし、相手の気勢が落ちている時に、攻撃を仕掛けるのは、戦いの常套手段であることは、間違いのない事です。

 それと、何度も対戦を経験すると、自然と相手の気勢が見えてくるものです。何も実戦を積む必要はなく、前回も紹介をした、基本組手で十分体験できると思っています。ただし、同じことを繰り返して言いますが、真剣になる事が上達の鍵です。無心の前の一心が、自分の人生を大きく変えてくれると信じています。

 武蔵が言う、「めりかり」と言っているのは、現在の言葉では、「乙甲」とも「減上」とも書き、邦楽の世界で音が上がる事を、「甲」や「上」と書き、下がる音を「乙」、「減」と書くそうです。一般的にはありまり馴染みがありません。
 これを抑揚と捉えて、その間隙を責めるようにします。この間隙と言うのがミソで、呼吸でも、吸っている時に攻撃する方が、効果があるとされていますが、経験上ですが、吐いて吸う間隙に隙が出易いとも言えます。
 抑揚というものは、気勢の事を指していると思いますが、身体の伸び縮み、すなわち腰を落としている時と、すこし腰を浮かせた時がありますが、その間隙を縫うと効果的であると思います。

 【参考文献】 
・神子 侃(1963-1977) 『五輪書』徳間書店.
・佐藤正英(2009-2011)  『五輪書』ちくま学芸文庫.

   【参考サイト】
・播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」http://www.geocities.jp/themusasi2g/gorin/g00.html


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