社会人になってからですが、友人が『知らない事は罪である』と言った事があります。そんな時、知らない事ばかりの私は、そう言われても・・・・、と思ってしまいました。
さて、知らない事と「礼節」には、どんな関係があるのでしょう。
今日も十七条憲法を解読しながら、『礼節』に近づきたいと思います。
前回同様原文は、下記のバーをクリックすると見る事が出来ます。
漢文では『諸任官者 同知職掌 或病或使 有闕於事 然得知之日 和如曾識 其非以與聞 勿防公務』
読み下して見ましょう。
『諸の官に任ずる者は 同に職掌を知るべし 或いは病或いは使えば 事に於いて闕ること有り 然知る之得る日は 和する如く曾識る 其を聞くに非ざる以って與す 公務を防げ勿』
それでは、現代文にして見ましょう。
『色々な役職に就く者は 前任者や同僚と同じレベルで仕事の内容を知る必要がある。病気で休み人や使いを頼まれた人がいる時は、仕事に支障をきたすことがある。そんな日は前からその仕事を知っていて直ぐに溶け込めるようにしておきなさい。人が欠ける事を聞いていないからと言って、公務を妨げるような事がないようにしなさい。』
現代では、仕事の専門化が進み、違う仕事を急に言われても、対処する事はできないと思います。出来ない仕事を出来るふりをして、仕事に就くより、評価を下げても辞退する方が、公務を妨げる事がないでしょう。
これは、職場により、時代により、臨機応変に対処しなければなりません。しかし、ここで言われている、『勿防公務』すなわち、『公務を妨げない』事が主体となって、物事を考える習慣がついている事が重要です。
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人間には自尊心があり、主客が逆転してしまうこともあります。結局自尊心を守ろうとした結果、面目丸つぶれにもなります。
『知ったかぶり』も結果的には、恥をかくはめに陥る事があります。だから、知っていると人に言えるくらい知る事が必要と言えそうです。
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ただ、この歳になっても、知っていると言える事があるのかと、疑問を感じてしまいます。
例えば、本来知っていなければならない、「空手道」に対してはどうでしょう。少なくとも60年は、空手の世界に身を置いています。それでも、知らない事の方が多いのですから、道半ば、なんて大きな事は言えません。まだとば口で、先は遠く先にあるような気がしてなりません。
昨年の年賀状に「分け入っても分け入っても青い山」(山頭火の句)を毛筆で書きました。ますます、知らない事が増えてきているように思います。まだボケている様子はないのですが、それでも「あっ、そういう意味」と思う事が毎日のようにあります。
これでは、生きている間に知識を得る事は無理なようです。
前にも書きましたが、随分幾つもの職業に携わりました。職業を変える度に、私が一番先に覚えたのは、仕事そのものではありませんでした。まず、会社の仕組みを覚えました。そして、どんな会社なのかをよく頭に叩き込みました。それから、自分の仕事が会社の中でどんな位置にあるのか、認識する事にしたのです。ようやくそれから職務に対する知識を身に付けました。
これも、人により色々な方法があると思います。例えば、一般的に女性は、全体が見えなくても、目の前にある仕事に専念できるようですが、男性は、全体が把握できないと、仕事が手につかないと言われています。そういえば、小学生や中学生の時は、女子の方が成績が良かった記憶があります。授業を受けても漠然としてなかなか全体が見えず、何を勉強しているのか分かるまでに卒業してしまった感じがします。その点、女子は、着々と勉強を積み重ねて、卒業する頃には、全体像が把握できていたのかも知れません。
犯罪かどうかは分かりませんが、知ったかぶりは、人を欺く行為です。行き過ぎれば詐欺罪が適用されるかも知れません。やはり、専門的な知識があるという事は、誠実に仕事ができると言う事で、「礼節」に適っているのではないでしょうか。
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私の場合は、知識もそこそこですし、相手の気持ちも計りかねます。ですから、自分が違和感を感じたり、いやな気持ちになったり、本来しなければならない事をせずに、恥ずかしい思いをする時に、作法に則り礼儀を現すようにしています。
この事も、「礼節」が相手に伝わらない事に、違和感を感じたり、いやな気持ちになったり、恥ずかしい気持ちになるように、身に付けておかなければ、そんな気持ちも起こりません。できるだけ、若い時に、赤っ恥をかいておくような体験があり、これを上手く経験にまで昇華できれば、身に付けられるのではないでしょうか。顔から火がでるような、恥ずかしい思いは、何度も体験したのを覚えています。若い時と書きましたが、気持ちは何時までも高校生のままです。林修氏の有名な言葉「いつやるか? 今でしょ!」の通り、人間は何時からでも始められると思います。近頃は、80の手習いと言うらしいですから。
仕事を熟知する事で、相手の期待に応える事も、「礼節」の一つである事を覚えておきましょう。