『礼と節』を徹底解剖 Part-13【十七条憲法まとめ】

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 前回、十七条憲法のまとめを投稿します、ご期待下さい。と書きました。昨日何とか投稿できればと、一日かけて書き綴りましたが、もう一度寝て、朝から推敲してみることにしました。
 今朝も日課の運動をすませ、イモを食べ、お習字をしてから、ブログに取り掛かっています。

 期待に副えたかどうか、とりあえず私なりに、自分が理解しやすくまとめてみました。

 これまでと同様、まず、原文を掲載しておきます。下記のバーをクリックすると見る事が出来ます。

『十七条憲法 原文』

第一条 一曰。以和為貴。無忤為宗。人皆有黨。亦少達者。是以或不順君父。乍違于隣里。然上和下睦。諧於論事。則事理自通。何事不成。
第二条 二曰。篤敬三寳。三寳者仏法僧也。則四生之終帰。萬国之極宗。何世何人非貴是法。人鮮尤悪。能教従之。其不帰三寳。何以直枉。
第三 三曰。承詔必謹。君則天之。臣則地之。天覆地載。四時順行。万氣得通。地欲覆天。則致壊耳。是以君言臣承。上行下靡。故承詔必慎。不謹自敗。
第四条 四曰。群卿百寮。以礼為本。其治民之本。要在乎礼。上不礼而下非齊。下無礼以必有罪。是以群臣有礼。位次不乱。百姓有礼。国家自治。
第五条 五曰。絶餮棄欲。明辯訴訟。其百姓之訴。一日千事。一日尚尓。况乎累歳須治訟者。得利為常。見賄聴 。便有財之訟如石投水。乏者之訴似水投石。是以貧民則不知所由。臣道亦於焉闕。
第六条 六曰。懲悪勧善。古之良典。是以无匿人善。見悪必匡。其諂詐者。則為覆国家之利器。為絶人民之鋒釼。亦侫媚者対上則好説下過。逢下則誹謗上失其如此人皆无忠於君。无仁於民。是大乱之本也。
第七条 七曰。人各有任掌。宜不濫。其賢哲任官。頌音則起。 者有官。禍乱則繁。世少生知。尅念作聖。事無大少。得人必治。時無急緩。遇賢自寛。因此国家永久。社稷勿危。故古聖王。為官以求人。為人不求官。
第八条 八曰。群卿百寮。早朝晏退。公事靡 。終日難盡。是以遅朝。不逮于急。早退必事不盡。
第九条 九曰。信是義本。毎事有信。其善悪成敗。要在于信。群臣共信。何事不成。群臣无信。万事悉敗。
十条 十曰。絶忿棄瞋。不怒人違。人皆有心。心各有執。彼是則我非。我是則彼非。我必非聖。彼必非愚。共是凡夫耳。是非之理能可定。相共賢愚。如鐶无端。是以彼人雖瞋。還恐我失。我獨雖得。従衆同擧。
第十一条 十一曰。明察功過。罰賞必當。日者賞不在功。罰不在罪。執事群卿。宜明賞罰。
第十二条 十二曰。国司国造。勿斂百姓。国非二君。民無兩主。率土兆民。以王為主。所任官司。皆是王臣。何敢與公。賦斂百姓。
第十三条 十三曰。諸任官者。同知職掌。或病或使。有闕於事。然得知之日。和如曾識。其非以與聞。勿防公務。
第十四条 十四曰。群臣百寮無有嫉妬。我既嫉人人亦嫉我。嫉妬之患不知其極。所以智勝於己則不悦。才優於己則嫉妬。是以五百之後。乃今遇賢。千載以難待一聖。其不得賢聖。何以治国。
第十五条 十五曰。背私向公。是臣之道矣。凡人有私必有恨。有憾必非同。非同則以私妨公。憾起則違制害法。故初章云。上下和諧。其亦是情歟。
第十六条 十六曰。使民以時。古之良典。故冬月有間。以可使民。従春至秋。農桑之節。不可使民。其不農何食。不桑何服。
第十七条 十七曰。夫事不可独断。必與衆宜論。少事是輕。不可必衆。唯逮論大事。若疑有失。故與衆相辨。辞則得理。
[出典]金治勇(1986)『聖徳太子のこころ』大蔵出版.

 以下には、漢文を私の拙い読み下しから、現代文に起こしたものを、第一条、第四条、第六条、第八条、第九条、第十条、第十三条、第十四条、第十五条、第十六条と、『礼節』に関係すると思われるものを抜粋して載せました。
 目障りになる人は、バーをクリックすると、見えなくなります。

『十七条憲法 現代文』
第一条
 『人に逆らわないようにして、人と仲良くしなさい。人には考えの合う人、合わない人がいて仲間をつくる。しかしその仲間の中に、その道に熟達している人は少ない。だから、上の者や父に従わず、すぐに隣の村の者と争う。しかし、上の者が和らぎ、下の者がむつまじくすると、議論する事ができ、直ぐに物事が解決する。』
第四条
『官僚が進んで礼の範になる、それは民を治める基本である。上の者が礼を無くせば下は整わない、下の者に礼が無くなれば必ず罪を犯す。だから、群臣に礼が有る時には秩序は乱れない、百姓に礼がある時は自ずと国家が治まる』
第六条
 『悪を懲らしめ善を勧めるのは、古き良きしきたりである。是にならい人の善行を隠すことなく、悪行を見たら必ず正せ。へつらい欺く者は、国家を覆す武器を持っているようなものであり、人民を滅ぼしかねない鋭い剣となる。また、口先が上手く媚びる者は、上に対して好んで下の過ちを告げ、下の者には、上の過ちを誹謗する。そのような人は皆忠義がなく、民に於いては思いやりがない。これは大混乱を招くもとである。』
第八条
 『役人は、朝は早く来て夜は遅くに帰る。公事は休む事無く、終日働いても尽くしがたい。ゆえに、朝遅く来れば急な仕事に間に合わず、早く帰れば必ず仕事が残ってしまう。』
第九条
『信は道理の基で、何事にも信が有る必要がある。善悪、正否には信があるかないかである。群臣共に信があれば、何事も成就できる。群臣に信が無ければ、何をしてもことごとく失敗する。』
第十条
 『怒りを絶ち、怒りを捨て、人が同意しない事に腹を立てない。人には皆それぞれに考えがある。自分が思う事に執着する気持ちがあります。彼は自分ではなく、また、私は彼でもありません。私が必ずしも賢いとは限らず、彼も必ずしも愚か者ではありません。共に凡夫なだけです。これが道理である事が分からなければ何も決める事ができない、彼も我も賢くそして愚を備えている、輪の端のようなものである。この事をよく理解して、人が逆らったとしても、まず自分を顧みて非が無いか確かめなさい。自分が適任と思っても、皆の意見に従って皆が選んだ人を推挙しなさい。』
第十三条
 『色々な役職に就く者は 前任者や同僚と同じレベルで仕事の内容を知る必要がある。病気で休み人や使いを頼まれた人がいる時は、仕事に支障をきたすことがある。そんな日は前からその仕事を知っていて直ぐに溶け込めるようにしておきなさい。人が欠ける事を聞いていないからと言って、公務を妨げるような事がないようにしなさい。』
第十四条
 『上司も部下も嫉妬する事のないようにしなさい。自分が人を嫉めば、人もまた自分を嫉む 嫉妬で心を痛めることに限りはない。だから自分より優れた人に対して良い感情を持たない。自分より才能がある人を嫉妬する。そんな事をしていると、いつまでたっても賢い人に遭う事はない。千年たっても一人の聖人に遭う事も難しい。賢く偉い人材がいなければ、何を以て国を治められるのか』
第十五条
 『私心によらず公務に向かうのは、臣下としての道である。皆、私心があれば必ず恨みが生じる。憾みあれば必ず背く事になる。背く気持ちがあれば、私心で公務をさまたげる。憾みが起これば制度を破り法を犯す。ゆえに、初めに挙げたように、上の者も下の者も共に和む事が叶えられるように言った言葉である』
第十六条
 『民を使うのは時節を考えるよう、古くから言い伝えられている。冬は昼間が短く夜が長いので、公務に就かせる、春から秋にかけては、農作物や桑畑の繁忙期だから、民を使ってはならない。農作業しないで何を食べようというのか、また桑の葉を育て蚕から絹を取らないで何を着ようというのか』

 なぜ、聖徳太子が十七条憲法を示したかを考えて見ましょう。

 上に立つ者も、下に就く者も仲睦まじく仕事をしないと、事がうまく運ばないからだと思います。
 これには理由があります。仕事に限った事ではありません、私が口癖のように言う、人は社会的な動物としてしか、地球上に存在する事が出来ないからだと思います。この社会的な構造が崩れた時に、人は思い思いに自由な行動をとってしまいます。
 世の中には、集団を形成しないと生きていけない生物と、固体でしか生きる事ができない生物がいます。人間は前者で、少なくとも、生まれた時から一人では生きていけないように出来ています。

 人間社会を維持しようとすると、すくなくとも、人間同士でルールが必要です。でなければ、人は人を襲う事も平気でやります。今も戦争は絶えません。そこには、どうしてもルールが必要です。しかし、ルールを守るのは人間です。

 そこで、ルールを守る事ができる人間が必要になってきます。
 そのルール以前の人間の良い部分を引き出そうとしたのが、『礼節』であったのではないでしょうか。

 聖徳太子は、人間を「性善説」でも「性悪説」でもなく、良い面も悪い面も持ち合わせていると考えたのではないでしょうか。ですから、第十条に賢愚を備えた輪の端のようなものだと言ったのではないでしょうか。
 だからこそ、国を治めるため、『礼節』を弁えた上司と部下を作りたかったのだと思われます。

 その為には、嫉妬わがままな心(私心)を持つ事を止めなさいと戒めています。この嫉妬心や私心が高じると、せっかく良い制度を作っても、これを破り法まで犯す事になると言っています。
 また、嘘偽りの心で物事を成そうとすると、結果は悪い事になります。そこに真心があれば善い事になります。物事が成功するか失敗に終わるかも、真心を込めて事にあたるかが大きな要因になります。その真心を以て事に当たる事が、物事にあるいは人に対する『礼節』と言えます。

 ここで言う、真心とは十七条憲法に書かれてある『信』であり、『嘘偽りの無い素直な心』の事を指しています。

 しかし、いくら真心と言っても、人それぞれに信じる考えがあると思いますので、意見の違う人に耳を傾ける必要があります。これは、『礼節』の根本であり、人に対する敬意です。
 第十条に書かれてある通り、私達は共に凡夫であり、賢愚を備えた存在です。自分の考えに固執してしまっては、正しい判断が出来なくなります。『礼節』を以て相手に接し、相手の意見を聞く耳を持てれば、意見が違っても争いには成らず、議論を重ねられる関係になれます。

 もちろん、面従腹背のような考えをもって、心から人に対して信頼感を持てない人は、『節度』の壁を越えていますので、組織を、ひいては国を混乱に陥れるでしょう。これはもう、『礼節』を語る事の出来ない、社会生活を逸脱する考えと言えます。これでは議論ができる関係を築く事ができません。
 先述した、たとえ考え方が違っても、腹を割って話し合える環境を作る事ができるのは、お互いに認め合う事ができる『礼節』を基盤としたものでなければなりません。

 また、お互い信頼し合った仲間であったとしても、人それぞれに立場もありその時に置かれた環境もあります。自らの言動にも時・所・場合を考え、相手を思いやる『礼節』が欠かせません。
 現在では、TPOと言う便利な言葉あります。これを実行することは、すなわち『礼節』をもって人に接するという事です。

 如何に世の中が自由で平等な社会を目指しても、まだまだ現状は、上の者が下の者に対して命令や依頼をしながら、組織は動いています。もちろん、昔のような直訴や目安箱といった制度はなくなり、会議の席で自由に発言する事はできる組織もあるでしょう。しかし、このような場合でも『礼節』のある言動が求められる事は、言うまでもありません。

 組織によっては、今でも自由な発言ができる環境にない場合もあります。公益通報者保護法ができて10年以上経過しました。いわゆる、内部告発です。
 法律家に言わせると、正当な権利であると主張します。確かに法律ですから、国民に与えられた権利です。しかし、権利には義務が必ずある事を忘れてはなりません。なぜなら、権利と権利がぶつかるからです。

 こういう制度を利用する場合も、『礼節』は欠かせないものだと言えます。本当に『私心』がなく、皆が納得できるものなのかを、真心をもって考えなければ、独りよがりの自分勝手な行動になってしまいます。こういう事を熟慮した上の権利の主張は、大いにすればよいと思います。

 しかし、この法律も人が幸せになるために、一つの歴史上の試みである事を理解する必要があると思います。この法律が絶対に正しいと判断できるのは、人間ではないのです。

 この法律問題でも、十七条憲法は訓戒を示しています。上に立つ者が率先して遂行しなければ、下の者が『礼節』を守る事もせず、ひいては、犯罪を生む土壌となると。
 ここで言う上に立つ者には、三権を司る者、いわゆる司法・行政・立法などがありますが、小さな組織から大きな組織まで、その権限を持つ者は、すべて、ここで言う上の者である事を認識すべきでしょう。

 私は、今年の初めてのブログで、『武道をしている人は、礼儀が正しいと、考えるのが一般的だと思います。しかし、それは単なる先入観だと思っています。』と書きました。
 なぜ、先入観なのかと言いますと、空手道を初め柔道、剣道などと言う武道の習得と、『礼節』に直接的な関係はないからです。
 たとえ、礼に始まり礼に終わると習い、お辞儀をして相手や場所に敬意を払っても、それは儀式に終わってしまいます。心から『礼節』を理解し、その心を相手に向ける事ができるようにならないと、聖徳太子の目指した国造りにはならないと思っています。

 私がなぜこの十七条憲法を取り上げて『礼節』を事細かに解剖し、解明しようとしているかと言いますと、人は生まれながらに『賢愚』を備えた凡夫であり、その者がひとたび権力を得れば、『礼節』無くして生きていく事が困難になる事を示したかったからです。

 十七条憲法では、下の者が礼節を守れば、国はうまく治められるとは、書いていません。上の者が率先して『礼節』を守りなさいと書いてあります。これは、権力者に対する訓戒です。

 武道をしている人は、自分が思う以上に、強くなります。それは、明らかに力を持つ事です。言い換えれば、人に対する権力と言えるでしょう。もちろん、私人が私心で武力を行使する事は、法律違反になりますが、人と人の関係では、法律以外の関係が生まれる事は明らかです。

 近頃は、法律で守られているからと、言葉の暴力を平気で振るう人も多く見られます。これらの人も、自分は権力を持っていると理解する必要がありそうです。
 
 武道を志す者は、この事に十分留意して、『礼節』を身に付けてほしいものです。

  さて、概ね『礼と節』の考え方は、分かったように思います。次回は、この考え方を、如何にして表現して、『礼節』を弁えた振る舞いができるかを、考えていきたいと思います。 
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