しかし、歴史の長い国では、それぞれ、『礼節』に適った作法を文化として昇華して来たと思います。それはその国の誇りと言っても良いと思います。
確かに近年は、多様化の名のもとに、何でもありの世の中になりつつあります。いや、何でもありの世の中になっているのかも知れません。
私も戦後の教育を受けた一人ですから、自由にふるまえれば、それに越したことはありません。しかし、1500年も前から、いやそれ以前からかも分かりません。聖徳太子の元に統率されているであろう、自分の幹部の部下に対して、『礼節』を守る事の重要性を説いて、十七条憲法を発布しています。
人間と言うのは、私も含めて自由でありたいと思う反面、ほっておくと収拾がつかない程かってな生き物ではないでしょうか。世の為人の為が結局自分の為になるという事は、「情けは人の為ならず」のように、人の為と思ってする行為も、結局は自分の所に帰って来ると言い伝えられています。
それでも、何か規律に沿って生きていく必要があるのだと思います。
その為の作法であり、しきたりだと思います。もちろん時代と共に変化する事に異存はありませんが、すくなくとも無くしてはならない『礼節』の心を忘れてはなりません。
一つ一つの行動を『礼節』に適っているか考える事は、余程教養と知識のある人でないと難しいと思います。そこで、昔から伝わっている「作法」や「しきたり」を身に付けて置くと、深く考える必要もなく、人に対して悪い感情を抱かす事もなくなるのではないでしょうか。
和食と言っても、懐石、会席、あるいは精進、本膳などの料理がありますが、松花堂弁当などに見られるように、見た目も四季折々に合わせた料理があります。
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ここでは、ちょっと知っておいた方が、食べるのに困らない事だけを、抜粋して載せて見たいと思います。
まず、 一口で食べる事の出来ないもの は、箸で押さえて一口サイズに分けて口に入れます。
食べる順序 は、そんにな気にする事はありませんが、左から順番に食べると良いと思います。左には薄味の物が、右には濃い物が置かれていると聞いています。
串に刺してあるもの は、左手で串を持って、箸で外して食べます。串のまま口に運ばない方が良いでしょう。焼き鳥屋さんは、串のまま食べるよう勧めていますが。その場所によって、食べ方を変える方が良いでしょう。ここでもTPOが大切です。
小鉢に入れてある物 は、小鉢を左手で持ちます。
ぬるぬるしていて箸で掴めない物 は、皿や鉢を左手で持って口をつけても構いません。ただし、音は立てないようにしましょう。
和食で困るのは、 お椀の開け方 です。特にお汁は、熱いうちに椀に入れて蓋をしますので、密閉されて開けにくい時があります。こんな時は、慌てないで、左手で椀を持ち、右手の指で椀の縁を押さえると空気が入り外れやすくなります。後は右手の人差指と親指で蓋の高台(蓋と椀の下についている円形の足)を掴み、裏返して料理の右横に置くと良いでしょう。蓋が外れたら、一瞬湯気の水分が落ちるのを待って、左手を添えて両手で持った方が、格好がつきますし、裏返して置きやすくなります。
食べ終わったら、蓋の付いている物は、取り外したのと逆の方法で蓋をして置きます。よく、裏返して置いてあるのを見かけますが、これはいけません。取れなくなります。特に塗り物は、高価なので丁寧に扱うようにしてください。これも『礼』に適った方法です。
意外と知らないポイントは、 ワサビ です。ワサビは、醤油に溶かない事が正解です。ではどうすれば良いかと言いますと、刺身に直接適量のワサビを乗せてから醤油につけます。食べる時は、醤油が垂れないように、醤油皿を持つか、懐紙があれば懐紙を添えて食べます。着物の女性でない限り、懐紙を持っている事は少ないと思いますので、醤油皿を添えて、醤油が下に垂れないようにすれば良いでしょう。
後は、 大皿 で出てきて、みんなで食べる場合、取り箸がない場合、よく見るのが箸を逆さにしているのを見ますが、あまり上品とは思えないので、逆さにする必要はありません。他の食べ物に自分の箸がつかないよう、自分の取り皿に入れてから食べるようにしましょう。大皿のまま食べるような事はしませんよね。
ちょっと、テクニックがいるのが、 尾頭付きの魚 です。通常は左に頭、右に尾が来るようにお皿に乗っています。
これを左から右に箸で食べますが、ひっくり返してはいけません。上の部分を食べ終わったら、中骨を外して横に置き、やはり、左から右に食べます。うまく身が外れると良いですね。
文章で書くと、なんだか小うるさい爺と思われるかも知れませんが、身に付けてしまうと、そんなに煩わしい作法でもありません。
ちょっと、気を張る席に呼ばれた時など、自信をもって食事をする事が出来ると思います。
それにしても、最近は、食事のマナーよりも、上の人を囲んでの食事会での態度には、目に余るものがあります。これも時代の流れなのでしょうか。