上司やお客様と席に着く時、知っておくと便利ですから勉強してみましょう。と、言ってもそんなに難しい事ではありません。
和室であっても、洋室であっても、車内でも上座(かみざ)はあります。その事を覚えて置けば、『礼節』に欠ける事はありません。知らなければ、常識がないと判断する上司やお客様がいるかも知れませんし、相手がお客様で作法に造詣が深い人からは、仕事の出来ない烙印を押されていしまうかも知れません。
そんなに難しい事は無いと言いましたが、これは文化なので、考えて分かるものではありません。知る事が『礼節』に適う事です。
私は、肘掛がある物が、お客様用だと思っていました。独立していて、一緒に誰かが座る事もできないと言う理由から、そんな風に考えていました。
しかし、上の写真のようなソファがお客様用なのです。それもお客様が3人の場合は、入り口から一番遠い場所が上座になります。続いて、真ん中、そして入り口に一番近い場所が三番目になります。
もし、訪問客が5名の場合はどうでしょうか。普通応接室には、応接セットが置かれていると仮定しましょう。上のソファの前に一人掛けのソファが2脚並んでいるとしますと、一番上座の前が四番目、そしてその横が五番目になります。
ですから、ソファにも順序があります。長椅子が一番で、次が一人掛けの肘掛椅子、その次が背もたれのある椅子、そして背もたれの無い椅子の順序になります。五人の訪問者があった場合、自分は背もたれの無い椅子を用意して、入り口に近い位置に座ると良いと思います。
普通は、五人も訪問者がある場合は、会議室に入っていただくようにした方がゆったりします。
長椅子が上座である起源は、ローマ時代にまで遡る事になるようですが、知らなくても良さそうです。蘊蓄(うんちく)にしかなりません。それより、広い方がお客様用程度に覚えておいてはどうでしょうか。
会議室での席順も知っておきましょう。
車の場合の席順です。
運転する人の地位にもよりますし、乗車する人数にもよります。基本的には、窮屈な思いをお客様や上司にさせない心遣いがあれば上手く行くと思います。
ですから、例え乗車する人が運転する場合でも、後ろの席が一人のスペースであれば、助手席が上座と固定しない方が良いと思います。
エレベーターに乗る場合も順序があります。自分以外はすべて上司又はお客様の場合には、一番最後に乗り操作盤を操作します。この時も出来るだけ上の人にお尻を向けないで立つようにします。エレベーターガールなどがいる場合は、その横か、後ろに立つのが良いでしょう。
降りる時は最後に降りましょう。みんなが下りるまでドアを開いておきましょう。
一応エレベーター内の席順を言いますと、入り口から入って左奥、右奥、右前、前の真ん中、左前と言う順番ですが、他の会社の方が乗る場合もありますので、自分の位置にだけ注意していれば良いでしょう。
和室の場合の上座は、床の間(通常掛け軸のある場所)の前が上座です。違い棚や戸棚がある側が次の席、そして反対側がその次とジグザグに席順が決まります。
円卓を囲む場合も和室の座り方のように、上座を挟んで左右左右と席順があります。
私が懇意にしていた学校の先輩で、大手の不動産会社の営業部長でしたが、NHKのテレビ番組で日本の営業部長として紹介された程の人物です。彼は、私と歩く時に必ず車道側を歩いていました。体の大きい人ですが、心遣いが繊細かつ大胆な人で、なるほどと思わせる人です。その人の凄い所は、全ての立ち振る舞いが、さりげなく少しも嫌みがなく、逆に大雑把に見える所です。それでいて、落ち度なく行き届いています。これが『礼節』と言うものでしょう。
それから私も人と歩く時に車道側を歩く習慣を身に付けました。
それから数十年経って、社会的な地位が高い人と二人で歩いている時、「三好君は、いつも車道側を歩いているが、いつ覚えたのか」と聞かれたことがありました。
世の中で私の事を「君」付けで呼ぶのは、同級生か、この方だけです。私は「君呼ばわり」と言う言葉が嫌いで、君付けは好きではありません。しかし、同級生とこの人だけは違和感なく聞き入れています。まぁ、20歳近く歳が離れていますからでしょうけど。私は人を君付けした事は、記憶にありません。
話が横道にそれましたが、一流の人(この場合は大手不動産会社の部長)を見て、その作法を盗む事が一番身に付く方法かも知れません。学ぶと言うのは、「まねぶ」、真似ると同じ語源と聞きます。
大いに一流の人と接する機会を持ちましょう。いつか、自分の為になると思います。