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論語を読んで見よう
【述而篇7-18】

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 確かに、子路は孔子より早く亡くなることになります。それも内乱に巻き込まれて生涯を終えるのですが、このタイトルは、いささか早すぎるのではないでしょうか。

 ここでも子路の人となりが、浮かび上がる『論語』の内容ですが、どこにも、勇武や最期を、連想できるような言葉は出てきません。

 『現代人の論語』の作者、呉智英氏は『論語』をなんども通読されていると書かれていますので、私とは違った深い読み方をされているのでしょう。

 ですから、このブログでの読み方と、副題は関係が無いと、思ってください。あくまでも、『現代人の論語』を参考にして、そのページ通りに読み進めていますので、副題を[第二十四講 子路-勇武なる最期]のように引用しています。
 
 今までのブログの更新での副題も、そのような理由で、全く内容と合致しない事がありますし、今後も副題に拘らないようしてください。ただ、今回は50講の内の24講目である事を示しています。

 と、言う分けで『論語』を読んで見たいと思います。
●白文

『葉公問孔子於子路、子路不対、子曰、汝奚不曰、其為人也、発憤忘食、楽以忘憂、不知老之将至云爾』。
●読み下し文
葉公しょうこう、孔子を子路しろに問う。子路こたえず。子のたまわく、汝なんぞわざる。その人となりや、いきどおりを発してしょくを忘れ、楽しみて以て憂いを忘れ、いのまさに至らんとするを知らざるのみと
』。【述而篇7-18】

 いつもと同じように現代文にして見ます。
 『しょうと言う所の政治家が、孔子の事について、その弟子である子路に問いました。しかし、子路は答えませんでした。孔子は、なぜ、孔子という人間は、憤りを感じたら食べる事も忘れるし、楽しみに興じると心配事も忘れるほど熱中し、自分が老いている事も忘れてしまう。そんな人だと言えばよかったのに。』こういう子路とのやり取りが『論語』にあるという事です。

 「葉」と言う所は、上の地図では、洛陽の右下、さいの左上にあたる場所です。ですから、孔子一行が諸国を遍歴していた頃の話でしょう。

 子路が政治家の問いに答えなかったのは、「礼」を貴ぶ孔子の弟子としては、如何に元無頼漢であっても、「礼」を欠く行為と思います。

 参考文献でも、その政治家については、の国の葉県の長官とありますので、やはり権威のある人です。なぜ、そうような地位の高い人からの問いに、子路が答えなかったか、『現代人の論語』以外でも色々な推測がされていますし、『現代人の論語』でも色々な説の中から結論を得ていますが、私は分からない事は、分らないで、良いと思っています。
 なぜ、推測をしないかと言いますと、この『論語』の文章の焦点がぼやけてしまうと思うからです。
 であれば、私は、どの言葉に焦点をてたのでしょうか。

 孔子は、子路の話を聞いて、『汝奚不曰』(汝なんぞわざる)、なぜ、言わなかったのだ。と言っています。別に小言を言っているようにも、思えません。気の利いた返答をすれば、目くじらを立てる事もなく、非礼にもならないのに。と言った感じです。

 子路と言う人が、孔子に好かれる理由がここにあると思います。正直者で愚直な一面だと思います。子路が返答しなかった理由は、子路なりに、あったのかも知れませんが、返答しなかった子路に悪い感情を持っていない事が、次の言葉によって明らかです。次の言葉は、いわば、冗談です。
 そんな場合には、こんな冗談でも言って、はぐらかせば良いと言っているのだと思いました。

 『論語』の中には、孔子が相手の言葉に反応して、即答する部分が書いてあります。文章ですから、即答かどうか、定かではありませんが、ある人は、その返答を『言い訳』と捉えているふしが見られますが、確かにそう捉える事もできます。しかし、ここでは、言い訳ではなく、「はぐらかし」の返答だと思っています。はぐらかす事ができるという事は、頓智を働かせる事で、即座に切り返す事が出来る能力です。
 
 子路に対して、直ぐに感情的になるのではなく、笑い話にしてしまえば良いと、教えているのだと思います。
 私は、子路のように、黙りこくってしまう事は、まずありませんが、残念ながら、即答する癖があります。
 孔子の言うように、はぐらかす事ができれば、良いのですが、頓智もきかさず、即答してしまいます。

 即答する内容が、正しければ良いのですが、いや百歩譲って、自分で納得する返答ができれば良いのですが、こじつけであったり、屁理屈であったりする場合もあると思います。ようするに、感情的になっているのでしょう。

 であれば、子路のように黙ってしまう方に、軍配が上がります。孔子が現在の『論語』批評家の間で、「とっさの詭弁」「取り繕い」「言い換え」「強弁」と言われている部分は、あながち間違っていないかも知れません。
 ですが、咄嗟に返答できるのも、能力の内です。しかし、このような評価が無い方が、気分的にも良いと思います。

 ここでは、私自身を振り返ってみて、子路に軍配を挙げたいと思います。

 内容はよく知りませんが、「タイガー&ドラゴン」の歌詞に「俺の話を聞け」と、クレイジーケンバンドさんが歌うフレーズ、ここ大好きです。

 私だけではなく、世の中には、一杯いるんですね。人の話を聞かない人が。

【参考文献】
・呉智英(2003-2004)『現代人の論語』 株式会社文藝春秋.
・鈴木勤(1984)『グラフィック版論語』 株式会社世界文化社.

 

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