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空手道における型について【2】
平安初段 1~10

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 参考文献『空手道教範』(富名腰義珍著作)を基に出来るだけ忠実に、現代文として書き直して見たいと思います。(本の紹介の空手道形教範とは違います。下部に紹介の『空手道教範』です。)

 この中で、青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。
 現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。

平安初段へいあんしょだん-1~10

 全部で21挙動、約1分にて全運動を完了する。

 型の前後には必ず礼を行う。 
 礼の方式は、演武する型の演武線によって適当な場所を定めて、閉足立で立ち、両手は自然に垂れて、軽く腿に触れ上体を腰から少し前に曲げて礼をする。【両手は腿の正面に垂れる】
『閉足立で立ち、両手は体側に自然に下し 立礼をします。』
 礼が終わったら、左足次いで右足を開き、左右の爪先の間隔が75cm位にする。
【両手は腿の前に拳を握って腿からすこし離す】
『左半歩右半歩の順に足を開く時、同時に両手を帯の位置で交差させて開いて用意の姿勢になります。』

 この時の「始め」の号令(号令は普通教授者が掛けるが時には自分自身でかけても良い。
『両手と腿の間は20cm程度離します』『自分で号令はかけません。』

1.顔を左方に向けながら、左足第一線上左へ一歩踏み出し、左手は右肩前(掌を開いて上向け)より、右手は斜め左下(同じく掌を上に)より、互いに引張るように反動をつけて、前屈の姿勢を取る。
(注)この場合左拳は左足の上およそ20cmの位置に構え、我が脇腹を攻撃する相手の手又は足を防ぐ心持である。両足は互いに中央へ引きつける様に。
【前屈とは、前足を曲げ、両足の踵は一直線上にある】
『現在は前屈立と立ち方の名称を明確にし、前方から見て、両足の間隔は、肩幅程度に開き、前足の膝から垂直に下した線が、指先から足首の間に来るように曲げる』『 「心・技・体」の「技」に私が考える前屈立を記述しています。
』『左手の受けは、現在下段払と名称が明確になりました。』『左手の位置は、膝頭より拳が一つと習いましたが、この場合中段を下段払で受けるので、20cm程度の方が合理的だと思います。』

2.第一線上に更に右手右足を一歩踏出す。この時左手を共に腰に引きつける。(手甲を下に向けて)と同時に、右拳で中段を突く。
(注)左手を以て相手を掴んで引寄せながら、右拳を以て相手の胸部を突く心持である。上体は常に真直に立てて、眼は前方、相手の顔を仮想して見つめる。
【ここで言う中段は、写真及び(注)にあるように胸部の事です。】
『この動作は現在追い突きと呼ばれています。現在中段は水月を言います。』『 「心・技・体」の「技」に追い突きの方法を動画と共に記述しています。』
『この動作で原点に戻したい動作は、左手で相手を掴んで引き寄せながら、と言う部分です。』

3.右第一線上に右足を引返しながら(左足はそのまま)右手は左肩前より、左手は右斜下より、(1.の時と同様)互いに引張るように反動をつけて、前屈の姿勢を取る。1.と正反対の形になる。(注)1.と同様、の脇腹への攻撃を防ぐ心持。足を左右互いに内方へ引しめる事も前と同じ。
『この場合も相手の中段への攻撃を、下段払で受けて右前屈立になることです。』

4.右手と右足とを同時に引く。右手は左肩の前から(額の前を大きく円を描く様に廻して肩と水平の位置に止める。また右足は引くと同時に膝を伸して立つ。
(注)前屈にて下段を受けた右手首を相手に掴まれたので、それを振り放しざま相手の手首を打つ心持である。
『この右手を相手に掴まれて外すには、タイミングが重要です。しっかりと相手に掴まれてしまって、前足を引くのは合理的ではありません。その場合には、後ろの足を前足の方向に寄せて、相手の中に入り、両手で外すか、あるいは、合気上げの要領で、相手の動きを止めなければ、外す事はできません。ですから、この場合は、相手に掴まれる瞬間、身体の重心を後ろに移動すると同時に右手を左肩の方向に振りほどく動作によって、相手の掴みかかるのを掴む前に外します。こうする事で、相手の手は掴もうとしたところに一瞬留まりますからこれを外し、右手の鉄槌で打ちます。』

5.左足一歩、第一線上右方へ前進しながら、右手を腰に引きつけると同時に、左拳にて中段を突く(2.と正反対になる前屈である)。
(注)右手にて相手を掴み引寄せながら、左手にて胸部を突く心持。
『現在の中段は水月です。』

6.右足を軸として、左足を一歩第二線上に踏出し、前屈下段受けの姿勢を取る。左手は右肩前より右手は左斜下より互に引張る様に反動をつけること。1.及び3.に同じ。
(注)顔・拳・足は一直線上にあつて右肩が前に出ない様にせよ。前方より来る敵の攻撃を受けたる心持。
【立った様子は、完全な半身です。】
『現在の半身は、骨盤の両側の角度が前方に対して45度を目安にしています。ですから、ここで言う右肩も前方から45度前に出ています。』

7.拳を開いて、額上に挙げる。この時左肘は心持曲げ、左手の甲と額との距離は約20cm。
(注)相手が、下段攻撃を防がれたので、突如左拳にて我が顔面を突いて来たのを、我が左手首にて受けた心持ち。
『致道館で習った時は、この動作はゆっくりと上げました。』
『手首の部分は検証すべきと思います。』

8.右足一歩第二線上に前進両膝を伸ばして立つと同時に、右拳は左肘の前に手甲を接し、左手は甲を外にかへし、左右の手首が十字を描く様に互に上下に引いて、左手は振りしめながら腰に、右拳は額に構へる。
(注)相手の左拳を左手で受けると同時にこれを掴み、逆に捻りながら、右手首を相手の左肘に当てゝ、逆を取る心持である。そして、この動作は上段攻撃を受ける手にもなる。
なお、以上7.8.は馴れたら一挙動として早く動作するのか゛良い。
『左手は甲を外に返し、の部分は原点に戻す方が良いと思っています。』

9.左足一歩第二線上に進みながら、額上に挙げた右拳を開き手甲を外にかへし、左拳の甲を右肘前に接するや互に手首が十字を描く様に引いて、右手は握りしめながら腰に、左拳は高く額上にあげる。すべて8.と反対動作。
(注)型の意味も前と同様、8.に準じて解釈せよ。
【立ち方は両膝を伸ばした立ち方】
『前屈立になっています。』
『両膝を伸ばしたレの字立、あるいは基立ち、又は歩幅の狭い撞木立ち、の何れかが原点に近いと思われます。』

10.第二線上に右足を更に一歩踏出しながら、額上にあげた左拳を開いて甲を外に返し、右手甲を左肘が接すると右拳は上へ、左手は握りしめながら腰へ、互いに手首が十字を描く様に引いて右拳は高く額上に上げる。すべて8.と同じ動作。
(注)右拳が額上に極る瞬間「エイ」と気合をかける。
【立ち方は両膝を伸ばした立ち方】
『前屈立になっています。』
『両膝を伸ばしたレの字立、あるいは基立ち、又は歩幅の狭い撞木立ち、の何れかが原点に近いと思われます。』

 次回は、平安初段後半を掲載します。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
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