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空手道における型について【7】
平安三段 11~23

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 文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。
〔ページを遡る煩わしさを避けるため、説明部分は、前回までと重複して記載しています。

 

平安三段へいあんさんだん-11~23

 前半は、 平安三段前半を参照してください。

11.右足その位置に、左足を右足に引つけながら、廻れ左にて後ろを向く(閉足立)と同時に、両拳を腰骨の上に(甲を前に、肘を張る)とる。
(注)10.で十分の力と気合を込め、11.はユックリと動作せよ。力の強弱、技の緩急とはこのような意味である。
『この部分は、膝を曲げた状態で回転し、ゆっくり立ち上がりながら両肘を張る動作をしています。理由は背後から抱き締められた手を解く意味です。』
この部分は、「ゆっくり立ち上がり
は、原点に添った動きと考えます。ただし、肘を張る動作を今は速くしていますが、これも原点にもどし、ゆっくり動作をした方が良いと考えます。この部分は現在一般的に行われている、おもむろに立ち上がり肘を張って構えるのは、原点の考え方とは違って見えます。
但し、実際に後ろから抱き締められた場合を想定した場合、膝を曲げ、身体を前に倒す事で、相手の力は後ろに引こうとした力が自然に出ます。この後ろに引こうとする力を利用して、一気に膝を伸ばす力と、腕の張りを利用する事は、合理的な外し技であると思います。

 この場合に前に体を倒す事が目的ではなく、相手が後ろに引く力を感じる事が大切で、後ろに引かれているのを利用して立ち上がり、腕を外す力に変える事がポイントです。

12.左足そのまま、上体の姿勢を崩さずに、右足高く(膝を曲げたまゝ)あげて第二線上後方へ一歩踏込むと共に右肘(拳は腰につけたまゝ)後ろに引いて反動をつけ、右足が地につくと同時に猿臂を使う(この時も拳は腰につけたまま)顔は第二線上後方の敵に向けよ。この時騎馬立ちとなる。
(注)足にて敵のももを踏み砕くと同時に、右肘にて水月を当てる心持。猿臂とは肘にて当てる事を言う。実際には両拳を腰につけたまゝでは不便であるから、突込んで来る敵の右手首を我が左手で受け、掴んで引寄せながら、右肘で胸を当て、直ちに右裏拳にて人中を打つ。
『この部分はももを踏み砕くと言う想定は無理があり、膝または足の甲を踏み、相手の動きを止める方が、合理的だと考えます。動作的には変わりません。』
(注)に「敵の右手首を我が左手で受け、掴んで引寄せながら」と書かれてありますので、この部分は形にした方が、動きの習得に繋がりますので、左手の動きを表した方が良いと考えます。

13.そのままの位置、姿勢で、右拳を右横(第二線上後方)へ打下ろす。肘は心持曲げ、拳は肩の高さ(甲は下向)。
(注)前記のように、裏拳にて敵の人中を打つ心持。
『現在写真右側のように、相手の中段突きを猿臂で受けて、相手の手を体の前に捌いて、顔の前を回して、相手の上段人中を裏拳で打つようにしています。』
『原点では、猿臂は相手への攻撃であり、裏拳も右肩の前(16.に記載)を通り上段人中に攻撃をしていますので、なんら不合理な部分は見当たらず、原点に戻す方が良いと考えます。』

14.そのままの位置、姿勢にて、右拳を元の位置(右腰骨の上に、甲を前に向けて)に戻す。
(注)13.14.は敏速に続けて行え。

15.右足そのまま、姿勢を崩さぬ様に、左足を第二線後方に踏込むと同時に、猿臂を使う。12.と反対の動作。

16.姿勢そのまま、左拳を左肩前より左横へ打下ろす(甲は下)。拳の高さは肩位13.の反対動作である。

17.姿勢そのまま、左拳を元の位置。左腰骨の上、甲を前に。14.の反対に戻す。

18.左足そのまま、姿勢を崩さぬ様に、右足を第二線後方に踏込むと同時に、猿臂を使う。12.と同じ動作。

19.姿勢そのまま、右裏拳にて右横へ打下ろす。13.と同じ動作。

20.姿勢そのまま、右拳を元の位置に戻す。14.と同じ動作。
(注)12.より20.までは同じ動作を三回づつ繰返している。この種の繰返しは沢山あるが、二回目は軽く、三回目に力を入れる様にするのがよい。

★この三回目に力を入れる方法は、推測にしか過ぎませんが、繰り返しの動作は、一回目は実戦的に、二回目は正確に形を整えてバランス良く、そして三回目は最大の力と速さを発揮すると考えると、理論的かとは思います。ここで、緩急を表現するためと、理解しない方が良いでしょう。★

21.右足をそのまま、左足を更に第二線後方へ踏出す(後方に向いて左足前屈となる)と同時に、左拳中段突、右拳は腰(手甲を下)に。
『原点では、22.の形から左足を踏み出して左拳中段突きをする間に動作はありませんが、髓心会では私が習った時のまま、ゆっくり掛手をしてから、中段追い突きをしています。』
この部分は、様々な会派で、工夫の跡が見えますが、この掛手をゆっくりしている部分は、追い突きの中間動作にした方が、原点を著しく逸脱しないように思います。従って立ち方は、追い突きの中間姿勢で相手の手を掛手で捕まえ、前屈立になって追い突きをする事になります。』

22.左足そのまま、右足を右前に進める(第一線上に左足と並べる)と同時に、右足を軸として左に廻り、左第一線上に左足を移す(騎馬立)と同時に、右拳(右肘を曲げたまま)を大きく振る様に左肩上へ突上げ(甲は上)左肘(拳のまま)十分に後ろに引く。顔は前方を向く。
(注)後方から敵が抱きすくめようとしたので、腰を落して右拳にて敵の顔面を突き、左肘にて敵の脇腹を突いた形。

23.騎馬立の姿勢のまま、右方へ寄り足しながら、左拳を右肩上に突上げ、右肘を引く。
(注)この寄り足と言うのは、左足に力を入れて地を蹴ると共に、右足を右えすり寄せ、同時に左足も右に寄るので、足の形を変へずに進退するのである。22.23.のように、空手では左右同じ手を使ふ事が非常に多いが、これは単に運動としての均整を保つ上からのみでなく、前後左右自由自在に動き、危急の場合の護身術となる様になっている事を忘れてはならない。

この動作は、若い頃に何度も試して見ましたが、思うように相手は動きません。ですから机上論にならないよう、工夫した方が良いでしょう。思わぬ解決策が見つかると思います。

(直れ)左足そのまま、右足を少し左に寄せて両膝伸ばすと共に、両拳を静かに腿の前に下して、用意の姿勢に復する。

 次回は、平安四段前半を掲載します。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・道原伸司(1976)『図解コーチ 空手道』成美堂出版.
・道原伸司(1979-1988)『空手道教室』株式会社大修館書店.
・田村正隆他(1977)『空手道入門』株式会社ナツメ社.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1989)『ベスト空手5 平安・鉄騎』株式会社ベースボール・マガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(上)』株式会社池田書店.
・金澤弘和(1977)『新・空手道』株式会社日東書院.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.
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