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文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。 |
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平安五段-13~23
今回は、平安五段の後半です。前半部分は、 平安五段前半を参照してください。
13.左足を軸として左廻りに右足を第二線後方に移す(騎馬立)と同時に、右拳下段払い。左拳は腰にとったまま、身体は前(第二線右方)向、顔は右(第二線後方)に向ける。
14.下体そのまま、顔を左(第二線前方)に向けると同時に、両手は弓を引くような心持で右拳腰に、左手(開いて掌を前に)を左方に伸ばす。
(注)左方からの中段突きを左手首にて引掛けて受ける心持。
『この開掌の手は、相手の位置を定めるために伸ばしています。』
★この手で相手の中段突きを手首で引っ掛けるには、少し無理な形だと思っています。であれば、手の甲で相手の拳を止めて、三日月蹴りをする直前に相手の手を掴む方が理に適うと思います。
(注)実際は左手で敵の右手首を掴んで引寄せながら、その胸部を蹴るのである。故に、稽古の時になるべく高く蹴る習慣をつけて、決して左手を下げてはいけない。これを三日月蹴りという。
16.右足を第二線前方に下す(騎馬立)と同時に、右猿臂(手甲外、右前膊と胸との距離約15cm)を左掌に打当てる。左掌の位置は14.から動かさぬよう顔は前(第二線の左方)を向く。
(注)左手に敵を引きつつ右肘にて当てる心持。
★左掌は、全く動かないのではなく、写真のように前に移動しているので、その分前に移動するのが良い。ただし、左掌の位置が肩より下がらないようにする必要があります。ただし、猿臂をする時には、肩の位置よりも下がり中段打ちになります。
(注)右膝は少し曲げる。拳は左右共甲下。16.にて敵に右猿臂を当てたとき、右方から中段の攻撃を受けたので防いだ心持。
『これは平安四段の時に出てきますが、交差立という立ち方です。 平安四段前半』を参照してください。平安四段の場合は攻撃ですが、この場合は受けになります。』
18.右足そのまま、顔を左方(第二線後方)に振向け左右の拳を(写真)のように伸ばす(甲下)と共に、左足も左方(第二線後方)に伸ばす(爪先を軽く地につける)。
(注)右足は少し曲げたまま、これに体重をかける。上体も少し右に傾け、右拳から左爪先までが斜めに一直線になる様。17.にて身を縮めると直ぐに18.で大きく伸ばして敵を威圧する心持である。「体の伸縮」というのこのような意味である。
『左右の拳は、斜め後方に突き上げるように上げる。』
19.第二線後方に、右足で地を蹴って左廻りになるべく高く広く飛込み、右膝を屈めて立ち、左足は右足の後ろに軽く接し、左右の拳を交叉(右を上)して下段受
けをする。顔は前(第二線右方)を向く。
『この場合、右足で蹴るのではなく、膝を上げる気持ちが大事です。左足が軸になりますので、蹴る足は左足になります。着地した状態は、髓心会では写真のように下段交差受け交叉立になります。これは呼称が定まっただけで、原点と同じです。』
20.左足そのまま伸ばすと共に、右足を右方(第二線後方)に大きく踏出し(前屈)、同時に右拳(甲は下)にて右方中段受け、左拳(甲は下)右肘に接し、顔は右に向ける。
21.顔を左方(第二線前方)に向けると同時に、右手刀を左膝上に打込み(掌を上)、左手刀(掌を上)を右肩前にとる(左手が上に)と直ぐに、左右の手を互に引張るように握りしめながら、右拳上段受け、左拳下段受けをする。
(注)この時下段受けの手は同じ側の足と並行にするように。
★この場合の左手刀の掌は、身体の構造上真上には向きません。ですから、掌を上に向けるように捻じるというのが正しい表現です。実際には左の掌は右頬を向くと思います。
22.右足及び上体そのまま、左足を右足に引きつける。
『髓心会では閉足立になります。』
『原点では、特に閉足立とは決められていませんが、決められていないと色々な解釈がされてしまうのですが、閉足立に近づけると、した方が良いと思います。なぜなら、閉足立になる直前で立ち方が次の項のように変わります。』
23.左足その位置で、左へ廻りながら右足を右方(第二線前方)に踏出す(左足後屈)と同時に、左手刀(掌を上)を右膝上に打込み、右手刀(掌を上)を左肩前にとる(右手を上に)と直ぐに、左右の手を互に引張るように、左拳は左方上段受け、右拳は右方下段受け。
『髓心会では、右膝上に左手刀を打ち込んだ後、直ぐに写真の右側のように行います。』
★ここでも21.と同様右の掌は、左の頬を向きます。
(直れ)左足そのまま、右足を第一線に戻して左足と並べ八字立となり、左右の拳もユックリと引いて用意の姿勢に復する。
★足跡を詳細に見てもらえれば分かるのですが、最終の後屈立ちの左足の位置は、用意の足跡より、若干左斜め前になります。これを元に戻そうとする必要はありません。初めにも記載しておきましたが、大体元の位置になれば良いのです。平安五段は比較的元の位置に近くに戻りますが、型によっては、大きく用意の位置と違う場合もありますので、気にする必要はありません。無理に近づけない方が正しいと思ってください。
【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・道原伸司(1976)『図解コーチ 空手道』成美堂出版.
・道原伸司(1979-1988)『空手道教室』株式会社大修館書店.
・田村正隆他(1977)『空手道入門』株式会社ナツメ社.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1989)『ベスト空手5 平安・鉄騎』株式会社ベースボール・マガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(上)』株式会社池田書店.
・金澤弘和(1977)『新・空手道』株式会社日東書院.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.