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空手道における型について【16】
鉄騎三段 1~16

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 文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。
〔ページを遡る煩わしさを避けるため、説明部分は、前回までと重複して記載しています。

 

鉄騎三段てっきさんだん-1~16

旧称ナイハンチ三段
全部で三六挙動、およそ一分で全動作を完了する。
演武線は初段二段と同じく第一線のみ。

(用意)八字立ち、両手を腿の前に自然に垂れ前方を見る。
平安初段用意の姿勢と同じ。
『髓心会では、外八字立ちと呼称しています。』

1.左足そのまま、右足一歩右へ踏込む(騎馬立)と共に、
左手中段受け(手甲下)右拳腰にとる。 鉄騎初段後半(26)参照。
『船越義珍師の昔の映像では、踏み込みはありません。』
『髓心会では踏み込んでいます。』
『原点に戻す方が良いと考えます。』

2.姿勢そのまま、左拳は右肩前より下方へ、右拳は左肘外より上方へ、互に引張るように右手中段受け、左手下段受。

3.姿勢そのまま、(3)のように左手を(手甲上)胸部前方に水平に構えると同時に、右拳(甲外)を左方に倒す。右肘が左手首に接するよう。
(注)(2)にて中段、下段を受けた時に敵が素早く引いて直ちに諸手突きの攻撃に来たので我が左手にて敵の左手を押え、右手首にて敵の右手を打ち外したところである。
この左手は文章においても、船越義珍師の昔の映像でも、構えであり、(注)に書かれてあるように、敵の左手を押える動作はないものと思われます。従って(注)に書かれてある文章の「押え」を「ブロック」すると、解釈した方が理解しやすいと思います。

4.姿勢及び左手そのまま、右手だけ右後に引く。(4)を見よ。
(注)執拗な敵は左手を押え右手を外されても屈せず、左手を引いて更に突いて来るのを、右手首にて敵の左手首を受けたところ。

5.姿勢、及び左手そのまま、右裏拳にて正面上段へ打込む、右肘が左手首に接するよう。(5)を見よ。
(注)右拳の位置は中央、目より見下す高さ。敵の人中と思える位置に打込め。熟練したら(3)(4)(5)は成るべく続けて敏速に動作せよ。

6.姿勢そのまま、右拳を右腰に引く、(甲下)と同時に、左手を開き(四指を揃へて伸ばし拇指は下)、右手首の上に掌を軽く当てる。

7.姿勢そのまま、右拳を前方中段に突出すと同時に、左掌は右手に従って流れ、右肘の上に接する。
(注)(6)(7)も熟練したら敏速に行え。

8.顔を右方へ向けると同時に、右拳を裏返す(甲下向)姿勢、及び左手はそのまま。

9.その姿勢を崩さず、左足は軽く右足を越えて交叉する。右足は屈し腰を落したまま、上体前屈みにならないよう。

10.左足そのまま、右足右方へ踏出す(騎馬立)と同時に、左手を添えたまま、右手を右方へ押しやる。(10)参照。
(注)右方よりの中段突きを払った所。

11.そのままの姿勢で、右拳を返す(甲上向)と直ぐに、左前方より額上にかけて大きな円を(右肩を軸として)描くように振り廻す。左手を肘に添えたまま。(11)参照。
(注)右側の敵が足をあげて脇腹を蹴ろうとするのを我が右手首内側にてその足首を引掛け振り捨てる。
『振り回す。との表現で、最後の拳の向きは記載されていません。』
『髓心会では、手の甲が上向き(第一線上斜め上)にし、拳の第二関節で打つ動作をしています。』
『船越義珍師の昔の映像では、劣化が激しくこの部分を観る事はできませんが、注意書きを見る限りでは、手首が後ろ側、もしくは後ろ側斜め下の方が自然だと思います。原点に戻すか検討を要します。』
他の団体でも、当会と同一のものもあれば、手の甲が後ろ向きで鉄槌で打ち落とす、などもあります。

12.下体そのまま、右拳を腰に(甲下向)とると同時に、左掌は軽く流して右手首に添え、顔前方に向く。

13.姿勢そのまま、右拳前方へ突出す(甲上)と共に、左掌は軽く右前腕を滑らして右肘に添える。

14.姿勢そのまま、右拳を起して中段受け(甲下向)すると同時に、左拳下方に打下して下段受(甲上向)

15.姿勢そのまま、左拳は右肘外より上へ、右拳は左肩前より下へ、互に引張るよう、(15)のように右手下段受、左手中段受に受けかえる。

16.そのままの姿勢で、左拳を左肩上に引くと直ぐに裏拳で前方上段を打つと同時に、右手(拳のまま甲を上)胸部前方に水平に構える。左肘が右手首の上に接するよう。(15)(16)は続けて急速に行え。
『髓心会では、水平に構える前腕の位置は、胸部よりやや下になると考えています。体格により若干の差はありますが、裏拳の肘を伸ばさない限り、水月の前あたりに水平に構えるのが自然だと思っています。ただし、この胸部の意味が水月を含んで表現されているのかも知れません。』

演武線ではイメージが湧きにくいと思いますので、実際の足跡をたどってみました。ここでは、黒の塗りつぶしの足形と黒枠の足形が後半になります。
 次回は、鉄騎三段後半を掲載します。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・道原伸司(1976)『図解コーチ 空手道』成美堂出版.
・道原伸司(1979-1988)『空手道教室』株式会社大修館書店.
・田村正隆他(1977)『空手道入門』株式会社ナツメ社.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1989)『ベスト空手5 平安・鉄騎』株式会社ベースボール・マガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(上)(下)』株式会社池田書店.
・金澤弘和(1977)『新・空手道』株式会社日東書院.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.
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