空手道における型について【21】
観空大 26~45

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 文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。
〔ページを遡る煩わしさを避けるため、説明部分は、前回までと重複して記載しています。

 

観空大かんくうだい-26~45

「空手道教範」では、観空となっていて、大はありません。現在は、小がありますので、大をつけて松濤館流の流れをくむ団体では、観空大と呼称しています。
今回は、観空大ですが、少し長いので、序盤・中盤・終盤と三つに分けて掲載します。今日はその中盤です。
序盤は、 観空大序盤にあります。

26.右腰に両拳を重ねる(右甲下、左甲前)と同時に、左方(第三線右方)に顔を向け、左足を右膝上に上げて左横蹴りの構え。
『現在は「空手道教範」の通り動作をしていますが、私が習った頃は、一旦閉足立になってから(26)の形になっていました。』

27.左裏拳にて左方(右第三線上)上段に打込むと同時に、左足刀にて左横蹴り。
『髓心会では「空手道教範」に掲載の横蹴りとは違って写真のように蹴っています。「空手道教範」の横蹴りは 平安二段前半を参照してください。


28.蹴放した左足をその場(右第三線上)に下す(左足前屈)と同時に、右猿臂を使い、左掌にて右肘を打つ。(27)より(31)までは平安四段の横蹴りと全く同じであるから、同項を参照せよ。 平安四段前半

29.右足を左足に引きつけて立ち上ると同時に、右方(左第三線上)を向き、両拳を左腰に重ね、右足裏を左膝上に摺り上げる。

30.右裏拳にて右方(左第三線上)上段に打込むと同時に、右足刀にて右横蹴り。

31.蹴り放した右足をその場(左第三線上)に下す(右足前屈)と同時に、左猿臂を使い、右掌で左肘を打つ。
(注)右足を下す時、少し左足を引摺って進める気持ちがあってよい。(28)も同じ要領。
『横蹴りの足を下し、猿臂をする場合は、身体を捻るので左足が少し右足に近づいても良いと言う意味です。』
前屈と書いてある場合は、現在の前屈立と混同してしまいますが、書いて字の通り、前足を曲げる意味で、立ち方として制約のあるものではありません。このあたりも、「空手道教範」に書かれてある方が柔軟性があり、納得できるものです。現在の立ち方の名称は、あくまでも、便宜上制約したものだと理解すべきだと思います。

32.両足の位置そのまま、右足後屈の姿勢にて左方(右第三線)を振り向くと同時に左手刀受け。

33.左足そのまま、右足を一歩斜め左前方に踏出すと同時に右手刀受け(左足後屈となる)
(注)(32)より(35)までは平安二段(12)より(15)までと全く同じ。同項を参照せよ。 平安二段前半 平安二段後半

34.左足そのまま、右足を第三線上に戻して(左足後屈のまま)右手刀受け。

35.右足そのまま、左足を一歩斜右前方に踏出すと同時に、左手刀受け(右足後屈となる)。

36.右足そのまま、左足を第二線上後方に移すと同時に、右手刀を額前より(手甲が額に接する位に)右方に廻して前方(第二線上後方)に向って水平に打伸し(掌が上向)右手極まる時左手刀を額上(掌前向)に上段受け。この時左足前屈になり、右肩を前に出して、上体左へ捻じる心持。
(注)(16)(17)に同じ。
観空大序盤

37.右足を飛ばして右手の先を蹴上げる。蹴った足は直ちに引け。

38.右足を前方(第二線後方)に一歩飛び込み、右足を屈してこれに体重をかけ、左足を右足の後に軽く添えて立つと同時に、左手は一度伸して前の物を掴んで引寄せる心持で腰にとり、右手は腹から胸へ摺り上げるように大きく廻して裏拳にて上段を打つ。手足同時に極まるよう。
(注)これも平安四段の飛込みの手と全く同じであるから、同項を参照せよ。
平安四段前半 『髓心会では、この部分の立ち方を交差立と呼称しています。』

39.左足を一歩引く(右足前屈)と同時に右拳にて中段内受け。

40.下体そのまま、右拳を腰に引くと同時に左拳中段突。

41.下体そのまま、左拳引くと同時に右拳中段突。
(注)(40)(41)は連突きであるから敏速に続けて突くのである。

42.左足を軸として、左廻りに後方(第二線前方)へ振向くと同時に、(42)のように右膝を高く上げ、両掌にて右にて右太股左右から摺り上げるようにしながら右拳(甲下)前方中段に突出し、左掌を右手首に添える。

43.左足そのまま、右足を前方に下すと同時に、(43)のように右足前屈両手の指先を地に着ける。但し目は前方を見つめよ。
(注)これは観空独特の姿勢で、互に手の詰った時急に伏せて意表をつき、敵の虚を衝く手である。
『髓心会でも、手の平を全て着くのではなく、指の部分をつけて、指先が内側に向くように着いています。後ろ足は、指先だけ着けるのではなく、足裏全体を着くようにしています。』

44.両足そのまま、上体を左へ捻じって後方を振り向くと同時に、右足後屈の姿勢にて、左手刀にて左方下段払(左掌は左腿と向い合い20cm程の距離)、右手刀は乳下に構える(掌上向)。
左手下段払の時の後屈立は、私が習った頃は、やや前かがみになり低い体勢で受けていた記憶があります。
『(44)の場合は、後屈と言う言葉にとらわれず、前かがみになっても、低い態勢に戻した方が良いでしょう。』

45.左足そのまま、右足一歩第二線上後方に踏出して右手刀受け(左足後屈)。
『この時の立ち方は、現在の後屈立にしています。』

演武線ではイメージが湧きにくいと思いますので、実際の足跡をたどってみました。この足跡は26.~45.までの足跡です。
 次回は、抜塞大後半を掲載します。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1979)『ベスト空手6 抜塞・観空』株式会社講談社インターナショナル.
・中山正敏(1989)『ベスト空手6 抜塞・観空』株式会社ベースボールマガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(下)』株式会社池田書店.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.

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