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空手道における型について【29】
半月 17~41

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 文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。
〔ページを遡る煩わしさを避けるため、説明部分は、前回までと重複して記載しています。

 

半月はんげつ-17~41

 今回は、半月の型の後半を掲載します。前半は、 半月前半を参照してください。

17.左足そのまま(この左足の位置が第一線と第二線の交叉点に当たる訳である)右足を右横(即ち左第二線上)に踏出す(前屈)と同時に、顔も右方に向け、右拳中段内受け(甲下)左拳腰に
(注)この所は敏速に行う。

18.姿勢そのまま、右拳を腰に引く(甲下)と同時に左拳中段突き。

19.そのまま左拳を引くと同時に、右拳中段突き。
(注)(18)(19)は敏速に続けて突く。これを連突きという。

20.足はそのまま、右第二線上の方向(17.と反対方向)に振り向きながら、寄足で右第二線上に進む(前屈)と同時に、左拳中段受(甲下)右拳腰に、(17)と反対の姿勢。
(注)寄足については組織篇の立方の部及び平安三段(50)等を参照せよ。この所では(19)の姿勢に於ける前屈の右足で地を蹴つて、左足の方へ進み寄るので、寄足で進むと共に上体も向きを変える。

『平安三段(50)と言うのは、「空手道教範」の写真掲載の通し番号です。組織篇の立方に寄り足についての説明はありませんが、騎馬立についての記述がみられます。平安三段(50)の動作は、23.の動作ですが、写真がありませんので、慈恩の最後の動作を(寄り足)として写真を掲載します。』
「足はそのまま」と言う表現が随所に出てきますが、全く同じ場所で同じ形ではありません。当然180度左回りに回りますし、寄り足で移動もします。立ち方も右前屈立から左前屈立に変わります。

21.姿勢そのまま、左拳を引くと共に右拳中段突き。

22.姿勢そのまま、右拳を引くと共に左拳中段突き。
(注)(18)(19)と同じく(21)(22)も連突きせよ。左足そのまま、右足を後第一線上に半月形に踏出す、

23.多少寄足気味である方がよい。前屈になると同時に右拳中段受け、左拳腰に。(17)と同じ姿。

24.姿勢そのまま、右拳を引くと共に左拳中段突き。

25.姿勢そのまま、左拳を引くと共に右拳中段突き。
(注)(24)(25)は敏速に連突きせよ。

26.右足そのまま、右拳右腰にとり、顔を後に(第一線の前方)振向けると同時に、左拳を右拳に、左足を右足に引きつけながら(26)のように、左拳、左足、なるべく高く廻すように、第一線前方に左足を下す(騎馬立)と共に、左裏拳(手甲下)を打伸ばす。目は前方左拳に注ぐよう。
(注)左拳、左足はユックリと大きく廻し、右拳、右足に接する時も運きを止めないようにする。型の極まる瞬間には手足、丹田に力を込め、左裏拳にて敵の手を打つ心持であること。(三)は(25)から(26)に移ろうとする途中を示したも
のであるからその積りで見てもらいたい。又身体の向き方も便宜上横向に撮つてあるが、実際は演武線に示した通りである。
『(三)は「空手道教範」の写真番号で、このブログでは(26)の右側に相当しています。』
『原点に戻すまでは、この動作は後屈立で立っていました。』
★この裏拳は人中を打つときのように肘を曲げるのではなく、相手の手を打ち落とす意味から、肘を伸ばす事がポイントです。

27.そのままの姿勢を崩さず、右足は軽く左足を越して(第一線前方へ)交叉する。
(注)左拳を敵が右手で取って引き寄せようとしたので、敵に引かせつつ近寄る心持。
『交差立と呼称しています。』

28.右足そのまま、左足で左拳の先を蹴上げると同時に、左拳を右肩先まで引く。
(注)敵の右手を蹴上げると共に、取られた手を引抜いた所。


29.左足を第一線上に下す(騎馬立)と同時に、左拳(甲上)にて左方へ中段突き。
(注)上体・下体共に前向(第二線の方を向く)。顔だけ左肩の方に向ける。多少寄足気味であってよい。
『原点に戻すまでは、前屈立で立っていました。中段流し突きと呼称しています。』

30.左拳腰に引くと同時に、上体左方に捻じるようにしながら右拳で中段突、同時に前屈(足の位置は其のままで左足を屈する)となる。
(注)左手を捕つた敵の手を蹴つて左手を抜くと直ぐに中段を突き、続いて右拳にて連突きをする意味。
『前屈立と呼称しています。中段逆突きと呼称しています。』

31.姿勢そのまま(左手にて上段受け平安初段(9)参照)
(注)(28)より(31)までは熟練したら続けて敏速に動作せよ。
『前屈立のままです。』

32.左足そのまま、左拳腰にとり顔を後(後第一線の方)に振り向けると同時に、右拳を左拳に、右足を左足に引きつけるようにしなが高く廻して、第一線後方へ右足を下す(騎馬立)と共に、右裏拳(手甲下)を打伸ばす。(26)と反対動作。
『原点に戻すまでは、この動作は後屈立で立っていました。』
★この裏拳は人中を打つときのように肘を曲げるのではなく、相手の手を打ち落とす意味から、肘を伸ばす事がポイントです。

33.そのままの姿勢を崩さず、左足は軽く右足を越えて(第一線後方へ)交叉する。(27)の反対動作。

34.左足そのまま、右足をあげて右拳先を蹴ると同時に、右拳を左肩前に引く。(28)と反対動作。

35.右足を第一線上に下す(騎馬立)と同時に、右拳(甲上)にて右方へ中段突き、左拳腰にとつたまま(29)と反対動作。
『原点に戻すまでは、前屈立で立っていました。中段流し突きと呼称しています。』

36.右拳を腰に引くと同時に、上体を右方に捻じって左拳中段突き、同時に前屈(足の位置はそのままで、右足を屈し、左足を伸す)となる。(30)と反対動作。
『前屈立と呼称しています。中段逆突きと呼称しています。』

37.姿勢そのまま、右手にて上段を受ける。平安初段(10)参照、但し前屈。これと同時に、左拳腰に引く。(31)と反対動作。
(注)(34)から(37)までは熟練したら敏速に動作せよ。

38.右足そのまま、右拳腰にとり、顔を後(第一線前方)に振リ向けると同時に、左拳を右拳に、左足を右足に引きつけるようにしながら高く廻して、第一線前方に左足を下す(騎馬立)と共に、左裏拳を打伸ばす。(26)と同じ動作。
『原点に戻すまでは、この動作は後屈立で立っていました。』
★この裏拳は人中を打つときのように肘を曲げるのではなく、相手の手を打ち落とす意味から、肘を伸ばす事がポイントです。

39.左足そのまま、右足を大きく前方より左方に廻して左手(掌を開く)を蹴る。三日月蹴りである。
(注)平安五段(15)及び抜塞(27)の三日月蹴を参照せよ。(38)の姿勢にて、左手で敵を掴んで引き寄せながら右足にて敵の胸部を蹴る心持である。 平安五段後半 『原点に戻す前は、左手を開きながら下段に下ろし、その左手を目標に三日月蹴りをしていました。』
左手は、三日月蹴り右足の裏が当たる瞬間に開き、右足を元の位置に戻す瞬間に握りながら左腰に引いて、同時に右中段逆突きをする一連の動作とするのがポイントです。

40.左足そのまま、右足を元の位置に戻す(前屈となる)と同時に、上体を左に捻じって左拳を腰に、右拳中段突き。
(注)右拳を突出す処は、丁度左拳のあった位置。(39)(40)は敏速に続けて行え。
『原点に戻す前は、右下段突きをしていました。』

41.右足そのまま、左足を右足に引つけて(41)のように猫足立となり、両手を左膝頭の処で写真のように合せて足受けの姿勢。
(注)猫足立は組織篇立方の部にも述べた通り、ここでは右足を曲げてこれに体重をかけ、左足も曲げて軽く爪先を地につけ、上体を真直ぐに立てる。難しい形であるからよく写真を見て練習せよ。

(直れ)右足そのまま、左足を引いて用意の姿勢に復する。 

 一口メモ  

 組織篇立方の部とあるのは、「空手道教範」第二篇空手の組織、第三章立方の事を言っています。
 猫足に対しての説明は、『猫が獲物を見付けてまさに飛びかゝからうとする姿勢に似てゐるので、かく名付ける。後足を曲げて之に全身の體重を支へながら、前足は膝を曲げて輕く指先を地につける。この立ち方は進退共に敏捷で、蹴放し、蹴込み等には最も適してゐる。』(原文のまま)とあります。
 猫足の膝を開く流儀と、膝を閉じる流儀があります。私は、膝を閉じたり開いたり色々試してきましたが、今は膝の位置はニュートラルにして、踵を内側に絞り、騎馬立のような感覚で立ちます。この立ち方は故崎浜盛次郎先生(柔剛自然流開祖)から学んだものです。

   

演武線ではイメージが湧きにくいと思いますので、実際の足跡をたどってみました。後半足跡とあるのは、17.~41.までの足跡です。全足跡と書かれてあるのは、前半後半の全足跡です。

 次回は、燕飛前半を掲載します。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1979)『ベスト空手7 十手・半月・燕飛』株式会社講談社インターナショナル.
・中山正敏(1989)『ベスト空手7 十手・半月・燕飛』株式会社ベースボールマガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(下)』株式会社池田書店.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.
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