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空手道における型について【31】
燕飛 19~37

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 文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。
〔ページを遡る煩わしさを避けるため、説明部分は、前回までと重複して記載しています。

 

燕飛えんぴ-19~37

 前回は、 燕飛前半を掲載しましたが、今回は、その後半を掲載します。

19.右足そのまま、左足を左第一線上に開き(左足前屈)ながら、左拳を右肩前より、右拳を右斜下より、互に引張るように、左拳下段払、右拳右腰にとる。顔は左向、すべて平安初段(一)に同じ。
『平安初段(一)と言うのは、このブログで言えば〔1.〕の事です。』 平安初段前半を参照してください。

20.足はそのまま、左拳を左腰に引つけると同時に、右拳にて上段突、この時上体を少し左へ捻じる様。

21.左足原位置、右足を第一線上左方へ踏出す(左足後屈)と同時に、右手刀中段内受け。
『髓心会では、左後屈立、右中段手刀受と呼称しています。』

22.右足を左足の処まで引き、左足を第一線上左方(右足のあつた位置)に踏出す(右足後屈)と同時に、左手刀中段内受けをする。
『髓心会では、右後屈立、左中段手刀受と呼称しています。』

23.足そのまま、左手を腰に引く(握って)と同時に、右拳で中段突。
『ここでの「足そのまま」と言う表現は、立ち方も場所もそのままと解釈できます。』

24.左足原位置、右足を更に第一線上左方へ進める(左足後屈)と同時に、右手刀中段内受けをする。
『髓心会では、左後屈立、左中段手刀受と呼称しています。』

25.両足の位置そのまま、後方(第一線右方)を振向くと同時に(左足前屈)左拳下段払い、右拳を右腰にとる。
『「両足の位置そのまま」と言うのは、大体その場所と捉えた方が良いでしょう。』
理由は、180度左回りに回転し、立ち方も、後屈立から前屈立になりますので、全く同じ位置ではありません。

26.足そのまま、左拳を引くと同時に右拳にて上段を突上げる。この時上体を捻じって、左肩を後に引く様。

 考察  

 この文章の「上段を突上げる」というのは、前回の〔6.〕の(注)にある「下顎を突上げる」のと同様の攻撃です。しかし、この文章の印象から、さまざまな解釈がされていますが、私は、ボクシングのアッパーカットのように、裏突きで突き上げて、拳が極まる位置は敵の頭上で、形は正拳突きにするのが良いと考えています。〔20.〕に記載の「この時上体を少し左へ捻じる様。」と言うのも同様の意味であると考えています。

 

27.第一線右方に向って、右足一歩飛込みながら、右手にて物を掴み寄せるように左二の腕の上に引寄せると同時に、左拳にて下段(丹田)を突く、この時左足は、右足の後に軽く接する。
『「二の腕」とは、この場合上腕部、力こぶのある部分と解釈した方が良いでしょう。』

 一口メモ  

 「二の腕」と言うのは、腕の俗称で、一般的には上腕部、肩から肘の間を指していいますが、大辞林第三版では、(1)肩からひじまでの間の部分。上膊じようはく部。(2) 肘と手首との間の腕。となっています。

 

『髓心会では交叉立と呼称しています。』

28.左足を一歩後方(第一線左方)へ引く(左足後屈)と同時に、左拳左腰に、右拳を下段に構える(18.と同じ要領)
『これは、身体の向きを主体に考えると前屈になり、相手の攻撃を主体に考えた場合は、後屈になると思います。髓心会では、左前屈立と呼称しています。』

29.足そのまま、第一線左方を向いて(自然左足前屈になる)左手下段払、右拳右腰にとる。

30.足そのまま、左拳を左腰にとると同時に、右掌(掌を上に、指先を折曲げ、手首を下へ折曲げて)で押上げる様に中段を受ける。
(注)右手の形は(30)参照。
『右掌は昔の映像から判断すると、演武線第一線と第二線の間、斜め方向に上げています。着眼は映像が劣化のため判断に苦しみますが、同じ方向を見るのが一般的でしょう。』
『この時、髓心会では、(30)のように演武線第一線と第二線の間、右斜めに着眼を移し、同時に左手を開き指先を曲げ、掌底で上に押し上げる動作をしています。』

31.左足そのまま、右足を第二線上に移す(前屈)と同時に(31)のように、右掌(上向)押上げるように、左掌(下向)押下げるように、両手受けをなす。
『この動作は、昔の映像を見ても、左足を右足に寄せる動作はありません。髓心会でも、原点同様、右足のみ第二線上に移しています。』

32.左足を一歩、第二線上に前進する(前屈)と同時に、左掌上へ、右掌下へ、(五)と左右反対の姿勢をとる。
『(五)と言うのは、「空手道教範」に掲載の写真の番号です。ここでは、(33)の写真の反対と言う意味で、(32)の写真の動作の事です。』
写真番号については、このブログでは、全ての動作を撮影して掲載していますので、動作番号と写真番号は同じになっています。

33.右足一歩前進、右掌上へ、左掌下へ、互に上下を受ける。(五)の姿勢。
(注)31.から33.までは例の通り同じ技の三回繰返しである。二回目軽く、三回目に十分の力を入れる事を忘れないよう。
『(五)の姿勢は、(33)の姿勢の事です。』

34.足の位置そのまま、左手を下より、右手を左肩前より、互に上下に引絞るような心持で、左拳左腰に、右拳右方(第二線上前方)下段に構えると同時に左足後屈となる。
(注)左肩を引き、上体は第二線左方に向い、顔は前方を向く。右拳は右腿上約15cmのところにある。

35.第二線前方に向って寄足にて進むと同時に、(35)のように、右肘曲げて、(肘は脇腹に接する位、掌は上に向け、左手は頭上より(掌上向)20cm位に構える。
『「(肘は」の「(」は、印刷ミスです。』

36.エイと掛聲諸共両足にて地を蹴り、第二線上後方へ向って左廻りに、なるべく高く広く上って、一回転して地上に立つと同時に左足後屈、右手刀中段内受けの構えをする。
(注)敵の上段突の手を左手で受けると同時に、右手を敵の股に入れ、両手にて投飛す意味。地上に立つ際は、両足一時に地に着く様に。
『髓心会では、着地時は、左後屈立、右中段手刀受と呼称しています。』

考察

 最近、この部分の気合が、飛びあがってからかけるのをよく見ますが、私の考えでは、理に適うものではありません。かけ声にしても気合にしても、勢いをつけるために、自然発生的に出るものですが、やはり、飛びあがるために気合は出すべきだと考えています。

 

37.右足一歩退き(右足後屈)ながら、左手刀中段内受けをする。
『髓心会では、右後屈立、左中段手刀受と呼称しています。』

(直れ)左足を引きながら、おもむろに用意の姿勢に復する。

演武線ではイメージが湧きにくいと思いますので、実際の足跡をたどってみました。

 次回は、燕飛前半を掲載します。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1979)『ベスト空手7 十手・半月・燕飛』株式会社講談社インターナショナル.
・中山正敏(1989)『ベスト空手7 十手・半月・燕飛』株式会社ベースボールマガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(下)』株式会社池田書店.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.
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