空手道における型について【33】
岩鶴 21~42

スポンサーリンク

 

 文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。
〔ページを遡る煩わしさを避けるため、説明部分は、前回までと重複して記載しています。

 

 但書 

 前回も書き添えましたが、これまでの写真は、大部分が、演武線の正面から撮影したものを掲載してきました。前回同様、演武線が縦一線なので、見えにくいと思い、横からの撮影をしました。そのつもりで見てください。

 

岩鶴がんかく-21~42

 松濤館流の基本的な型と言われる、十五の型を「空手道教範」(富名腰義珍著)を現代文にしながら、かつ写真を掲載して説明してきました。
 今回で、十五の型の掲載が終わります。

 岩鶴を前半と後半に分けて掲載しましたが、前半部分は 岩鶴前半を参照してもらいたいと思います。

21.両拳を腰にとり甲前に肘を左右に張る。

22.左膝を曲げ、右膝を伸し、上体を左へ捻じりながら右猿臂を使う。顔は相手の方に向けたまま。

23.右膝を曲げ、左膝を伸し、上体を右へ捻じって左猿臂を使う。全く前の反対。

24.右足を軸として廻れ右をしながら、中段掻分けの姿勢をとって(拳甲下)と共に、左足を右踰後へ引付ける。
『踰は踵の印刷ミスと思われます。』

25.一旦右手を左斜下左手を右肩上に、両手を交叉して、両手握りしめながら引張ると同時に、左足を右膝裏に上げて(25)のように左側面の敵を見る。
(注)この片足立の姿勢が岩上の鶴に似ているのでこの手を岩鶴と名づけたのである。


26.片足立のまま、右腰に両手を重ね(右甲下、左甲前)左側面を見る。

27.左裏拳を飛すと同時に、左足蹴放す。拳は人中へ、足刀は腹部へ。
『私は相手の腕の付け根を下から蹴り上げるつもりで稽古しています。』

28.左拳を引き左足を地に下すと同時に、右足前進、右拳にて中段突をする。
(注)「二九」「卅」は熟練したら迅速に続けよ。
『「二九」「卅」は、「29.」「30.」の事ですが、これは、「27.」「28.」の印刷ミスと考えられます。』
『髓心会では、この突きの名称を中段追い突きと呼称しています。』

29.左足で立ち、左手右下斜より、右手左肩上より、互に引張るよう、上段、下段を受けながら、右足を左膝裏に上げ、敵を見つめる。(六)の反対姿勢。体勢は演武線の左方に向う。
『(六)と言うのは、このブログの写真(25)と同じです。』

30.そのまま、両拳を左腰に重ねる。(二六)の反対。
『(二六)は、このブログの(26)の事です。』

31.右裏拳、右足を同時に飛す。(二七)の反対。
『(二七)は、このブログの(27)の事です。』

32.右足が地につくと同時に(この時騎馬立となる)、右拳を右腰に引きながら左拳右方(演武線前方)へ中段突。
『髓心会では、騎馬立の変形の形をとります。』

33.右足で立ち、左足を右膝裏に上げて、左方(演武線後方)を振向くと同時に、左右の手を一旦交叉して上下に構える。(六)に同じ。
『(六)と言うのは、このブログの写真(25)と同じです。』

34.そのまま両拳を右腰に重ねる。

35.左裏拳、左足刀を同時に飛す。

36.左足が地につくと同時に左拳を左腰に引き、右拳左方(演武線後方)へ中段突。
『この時の立ち方は〔32.〕と同じで騎馬立です。』
『髓心会では、騎馬立の変形の形をとります。』

37.そのまま顔を右方(演武線前方)へ向けると同時に、右手(四指を揃へ掌を前に)で物を掴むような気持で右方中段受け。騎馬立二段(六)参照。
『騎馬立二段(六)とは、動作で言えば〔13.〕の事です。』 鉄騎二段後半

38.下体そのまま、上体を右へ捻じって左猿臂を右方(演武線前方)に突出す(前腕直立して)と同時に、右掌にて左肘を打つ。胸部より約15cmの間隔。

39.下体そのまま、左手を左腰に引き、右拳(甲前)を左掌に押当てる。目は右方に注げ。

40.右足一本で立って右廻りに一回転すると同時に、両手は四指を揃えて(左手を上)頭上高く身体と共に廻しながら握りしめ、体勢の極まる時両拳右腰に重ね、顔は左方(演武線後方)に向ける。

41.左裏拳、左足刀を同時に飛す。

42.左足地につくと同時に、左拳を腰に引つけ、右足を一歩踏込みざま、右拳中段突。
『髓心会では、この突きを右中段追い突きと呼称しています。』

(直れ)廻れ左して、左足を引きながら用意の姿勢に復する。

 

 宿題  

 慈恩-18~30 において考察に、次のように書きました。 慈恩中盤

 「29.の動作から両手を交差する場合、スムーズに交差できるのは、原点の解釈どおり、両手が上にあるとき、左手が内側の方がやり易いのですが、26.の動作では「右手下、左手上」との記載がありますので、基本的に交差する時は、右手が外側にしているのかも知れません。この交差する手の位置は、動作ごとに原点にもどすか、あるいは、交差する時の富名腰義珍師の習慣なのか、判断に迷う所です。次回の下段交差受け、あるいは、平安五段の下段交差受けの場合は右手が上、そして上段交叉受けの場合は、右手が内側にあり、逆になっています。やはり、型ごとに交差の仕方を原点にした方が、混乱せずにすみます。
 最後の岩鶴を掲載するまでに、髓心会での方法を決定したいと思います」

 

 宿題の回答  

 髓心会では、「空手道教範」を原点として再編集していますので、このブログに紹介した方法で、左右の手を交叉したいと思います。
 念のため、下記に自分の視線に対して外側なのか内側なのか、あるいは上か下かを示しておきます。
平安四段:第3動作下段交叉受けの場合は右拳が左拳の上に重ねる。
平安四段:第14動作掻き分けの場合右拳が内側、左拳が外側。第18動作も同じ。
平安五段:第8動作下段交叉受けの場合は右拳が左拳の上に重ねる。
平安五段:第9動作上段開掌交叉受けの場合は右掌が内側左掌が外。
平安五段:第10動作中段押え受けの場合は、右手が下、左手が上、右掌は上向き、左掌は下向き
平安五段:第19動作下段交叉受けの場合は、右拳が外側、左拳が内側。(左拳の上に右拳)
観空大:第61動作下段交叉受けの場合は右拳が内側左拳が外側(右拳の上に左拳)
十手:第8動作上段交叉受けは右拳外、左拳内側
慈恩:第31動作下段交叉受け右拳上左拳下
慈恩:第34動作右拳外側左拳内側(左下)
岩鶴:第1動作側面上段交叉受け右手内側左手外側
岩鶴:第2動作開掌押え受け右掌上、左掌下
岩鶴:第6動作上段交叉受け右手内左手外(右手上)
岩鶴:第8動作下段交叉受け右手上左手下
岩鶴:第40動作両掌回し受け左手上右手下
以上の中で岩鶴第6動作は、第8動作の関係から、右手が内側としました。

演武線ではイメージが湧きにくいと思いますので、実際の足跡をたどってみました。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1979)『ベスト空手7 十手・半月・燕飛』株式会社講談社インターナショナル.
・中山正敏(1989)『ベスト空手7 十手・半月・燕飛』株式会社ベースボールマガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(下)』株式会社池田書店.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です