お習字から書道へ Section 38

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 地震から四日目ですが、まだライフラインが復旧できずに、不便な生活をされている人も沢山いると、ニュースで見ました。

 それほど遠くない地域で起こっている事ですから、常日頃から心の準備は、しておかなくてはならないのかも知れません。

 今朝も文字を選んで書く事にします。

 この文字を選ぶときには、『楷行草筆順・字体字典』から、上手く書けそうな文字と、難しそうだな、と思う文字の二種類の文字を選ぶようにしています。

 前回は、「つちへん」「たまへん」「たつへん」を取り上げました。
 文字は、「地」「坂」「型」、「玩」、「章」「端」、を楷書で、「玩」「章」「端」を書写体で書きました。

 今回は、「あしへん」「やまへん」「くちへん」を取り上げました。
 文字は、「距」「路」「蹴」、「岐」「岩」、「右」「名」「君」、を楷書で、「距」「路」「岐」「岩」「右」「君」を書写体で書きました。 


 「あしへん」と言うのは、上にある「口」と下の「止」のバランスが難しい文字です。「口」が大きすぎると頭でっかちになって不安定になりますし、小さいと落ち着きがなく感じます。

 楷書の方は少し「口」が小さかったように思います。書写体くらいの「口」がしっくりするようです。

 文字のバランスは、部分の面積により重さがあるように思いますので、これがバランスを調整する上で重要な要素になると思います。
 


 
 楷書の「路」は、バランスはそこそこですが、少し縦長になり、間が抜けた感じがします。

 書写体の方は、あまりにも部分の繋がりがないように思ったので、字自体もバラバラの感じです。

 見た感じはそんなに悪くもないと思うのですが、この文字は見慣れていないせいもあるかも知れません。

 


  「蹴」は、漢字としては、空手でよく使うのですが、今回は、一口メモにある、「三勺さんしゃく」や「左右占地歩さゆうせんちほ」あるいは、「中占地歩ちゅうせんちほ」の結構法をイメージしたのですが、どの結構法も当てはまらないように思いました。
 手本から受けるのは、中の「京」の文字をできるだけ細く長く書かれてあるように思い、そのイメージで書きました。
 
 

 「岐」を書く時は、偏にあたる「山」と旁になる「支」の幅を同じくらいに扱い、「山」は縦の中間になるように書き、「支」は、縦の長さを十分に使って、左払いの収筆で「山」を下から支えるようにしました。

 自分では、楷書、書写体ともまずまずの出来だと思っています。

 

 

 「岩」と言う文字が、こんなに書きにくいとは、思いませんでしたが、いざ書いて見ると、横画がバラバラになってしまったように思います。

 書写体の方も、いまひとつパッとしません。

 

 

 「右」の書写体は、このように書くのですね。初めて見ました。

 「右」と「左」では、部分は同じようですが、書き順が違う事と、横画の長さによって、こんなにも違う文字になるのですね。

 しかし、楷書、書写体とも上手く書けた方ではないでしょうか。

 

 

 「名」の一番気を付けたいのは、一画目の左払いでしょう。左斜め下に払うのですが、もう少し二画目の払いとのバランスを開いた方が、良かったと思います。

 「君」は、楷書、書写体とも違ったポイントだと思います。

 楷書の方は、横画に変化を持たせ、書写体も変化を持たせるのですが、徐々に角度を変えて行くようにしました。

 これは、手本を観察しての事ですが、文字的には調和したように思っています。

  

 

 考察 

 今回、「くちへん」を取り上げましたが、「口」と言う文字の右隅の横画で縦画を受けるか、それとも縦画に横画を付けるかで、迷っていました。
 学説的には「口」は、横画を出して縦画を受ける形になるのが正しいということですが、文部科学省の文字に対する考えの中で「許容」というものがあり、また、活字体では縦画に横画が付く場合があります。昔のように正字体というものがあれば正誤がはっきりするのですが、判然としてなりません。
 私がこのブログで手本にしている、『楷行草筆順・字体字典』(江守賢治著)では、概ね横画が縦画を支える形になっていますが、『はじめての書道楷書』(関根薫園著)では、「あしへん」では、縦画を伸ばして、横画が縦画に当たっています。
 また、『楷行草筆順・字体字典』(江守賢治著)でも、字画に変化を持たせるためか、横画と縦画がぴったり合わさっている場合も多く見られます。
 今回も、楷書の「君」や「右」の場合は、どちらかというと、ぴったり合ってしまいました。

 

 一口メモ 

  前回からの続きで、『はじめての書道楷書』(関根薫園著)で、中国の李淳と言う人の手による「結構八十四法」と言う文字の組み合わせ方を説明していきたいと思います。

 今日は第十二回目です。取り上げるのは、「搭勾とうこう」「重敝じゅうべつ」「攅点さんてん」「排点はいてん」の4つです。【「重敝じゅうべつ」の「べつ」の文字は左側に〔てへん〕が入りますが、環境依存の文字なので、この字を当てました。】

 「搭勾とうこう」これは、右はねの方法と同じですが、「衣」を例にしています。ここでは、縦画から最下点で筆を離さず、そのまま大きく長くはねる。としていますが、もう一つの説明のように一旦左へずらす方法もあるので、私は、後者で書きます。

 「重敝じゅうべつ」この説明に「及」と言う文字を取り上げています。この「及」の文字の一画目は左払いから入ります。そして二画目が横画から入り二つの折れを通過して左に払います。ここでは、この二つの左払いの在り方を説明しています。初めの左払いは長くして、二つ目の払いは短く収筆の線上に一つ目の左払いの収筆があるようにします。この二つの払いに変化をもたせ平行線にならないように気を付けます。

 「攅点さんてん」、「爰」と言う文字を例にしていますが、私はこの文字を知りませんでした。「援」の文字は使いますが、「爰」と言う文字の読み方は「ここ・これ・なん」などと使うそうです。
 ここでの説明は、一画目の左払いから下の点三つを繋がりのある部分として対応させるように書かれています。
 また、文字全体は真ん中の点に向かって集合するように書くよう説明があります。この点とは、位置の事を言っているのだと思っています。

 「排点はいてん」この文字の例は「然」です。ここでは「連火」と書かれてありますが、東京書道教育会では「れっか・れんが」とかなで示されています。ここでのポイントは、点です。四つの点に変化を持たせるのですが、一番目と四番目の点は、「ハ」の字のように開くとバランスがとれます。
 よく似ていますが、前回の「屈脚くつきゃく」とは、少し趣が違いますので、分けて覚えた方が良いでしょう。ちなみに、「屈脚くつきゃく」の場合は、「馬」を例に上げています。

 

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.

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