お習字から書道へ Section 48

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 前回まで、中国の李淳と言う人の「結構八十四法」の解説を「一口メモ」として掲載してきました。

 しかし、なるほど、と思える部分と、理解できないところ、あるいは、これは「結構」ではなく、点画の筆法ではないか、など疑問点も幾つか見つけました。もちろん、歴史上、書道界では重要な研究であって、私などがとやかく言う事では無い事は、十分分かっています。

 ただ、私の頭の中で、このまま放置しておくと、単なる絵に描いた餅に過ぎません。
 とりあえず、なるほどと思った部分だけ使う事にしたいと思っています。

 もう一つの難問は、どの書風を柱にするかによって、全く「結構法」が変わってしまう事です。

 さて、今朝も文字を選んで書く事にします。

 この文字を選ぶときには、『楷行草筆順・字体字典』から、上手く書けそうな文字と、難しそうだな、と思う文字の二種類の文字を選ぶようにしています。

 前回は、「ひへん」「やへん」を取り上げました。
 文字は、「灯」「燃」「燥」、「知」「短」「矯」、を楷書で、「燃」「知」「矯」を書写体で書きました。
 今回は、「たにへん」「かねへん」「しょくへん」を取り上げました。
 文字は、「谷」、「針」「鈍」「鉄」、「飲」「飼」「養」、を楷書で、「鉄」「養」を書写体で書きました。
 


 常用漢字では「たにへん」は、「谷」しか見つけられませんでした。
 文字にも好き嫌いがあって、「谷」は、好きな文字ではありません。理由はバランスが取りにくいと、頭から思っているからです。
 今回は、その固定概念を払拭しようと、よく手本を観て、書いて見ました。
 やっぱり、上手く書けません。「ひとやね」の開き方が難しいと感じています。
 
 「針」は、上手く書けると思っていましたが、結果は良くありません。

 日によって、調子の良い時と、悪い時があるのは、集中力の差かも知れません。ようするに気が乗らない、と言う事です。
 


 「鈍」は「針」と同じ「かねへん」ですが、私が何も見ないで書くと、「かねへん」の最後の画は、右上に払います。しかし、この手本では、収筆をしっかり止めています。書きやすさでは、慣れのせいか、払いの方が文字としてのまとまりがでます。
 

 同じ「かねへん」ですが、手本通りには行きません。「失」の頭が出すぎた感じです。漢字と言うより出てますね。

 書写体の方が形が良い気持ちもしますが、これも手本ではもう少し旁の方が立っている感じです。

 

 

 

 「飲」は手本を見ずに書くと、こういう感じには仕上がりません。やはりペナントの三角形をイメージすると良い感じに仕上がります。

 

  

 「飼」と言う文字は、旁の「司」の起筆を「食」の点の延長線上(右上がり)から始めて十分横画を取ってから折れに、そしてはねる方向は「食」の最終画に向かい、その中に小さい横画と口を入れるようにすると、バランスが取れるようです。「司」の一画目がなければ、ペナントの三角形をイメージして書くと良いと思いました。
 

「養」は、縦長になりますが、少し上の横画の幅を詰めて、左右の払いを工夫して「良」の字を中心から外れないように入れる事を念頭に書いて見ました。

 書写体は、少し上の画が大きく書くと、意外とまとまった字になりました。

 

   

 一口メモ 

 『はじめての書道楷書』(関根薫園著)で、中国の李淳と言う人の手による「結構八十四法」と言う文字の組み合わせ方を21回に渡って説明しました。

 そもそも、字が上手く書けるようになるためには、一つは筆の使い方と言われる筆法を知って見に付ける事があります。しかし、点画だけうまく書けても文字が上手く書けるわけではありません。

 では、どうすれば良いかと言うと、偏や旁と言われる部分を上手く結合してバランスを取れるようにする事です。これが「結構」と言われるものです。

 最も優れていると言われているのが、欧陽詢が作ったとされている「結体三十六法」と、すでに紹介しました、明の李淳と言う人の手による「結構八十四法」とされています。

 「書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘」(余雪曼著)が、「結体三十六法」と「結構八十四法」を基に九成宮碑文の特殊な結構を参酌して四十四に書き表したものを紹介して、前回までの釈然としない事柄を払拭できればと思っています。

 今回は、その四十四の名称だけ掲載することにします。

(1) 上蓋下法
(2) 下載上法
(3) 上下相等法
(4) 上寛下窄法
(5) 上窄下寛法
(6) 上平法
(7) 下平法
(8) 上中下相等法
(9) 上中下不等法
(10) 左右相等法
(11) 左寛右窄法
(12) 左窄右寛法
(13) 譲左法
(14) 譲右法
(15) 左中右相等法
(16) 左中右不等法
(17) 承上法
(18) 蓋下法
(19) 中大法
(20) 頂戴法
(21) 全包囲法
(22) 半包囲法
(23) 排じょう法
(24) 穿挿法
(25) 大成小法
(26) 小成大法
(27) 意連法
(28) とうちゅう法
(29) 重併法
(30) 重へい法
(31) 屈脚法
(32) 垂曳法
(33) 補空法
(34) 増減法
(35) 疏法
(36) 密法
(37) 斜法
(38) 正法
(39) 大法
(40) 小法
(41) 向法
(42) 背法
(43) 長法
(44) 短法

 以上の44項目です。李淳の「結構八十四法」よりも、名称が理解しやすいものも見受けられます。次回以降に、それぞれの説明をして行きたいと思います。 

 

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.
・余雪曼(1968-1990)『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』株式会社二玄社.

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