お習字から書道へ Section 56

スポンサーリンク

 近頃は、書籍によって正しい書き方が色々あって、矛盾を感じている事を度々書いています。書籍と言うより書道の団体と言うべきでしょう。

 空手の場合は、相手を制するための方法ですから、色々なやり方があっても納得できるのですが、少なくとも文字は国字と呼ばれているのですから、統一してほしいと思っています。一応統一はされているようですが、お習字の手本となると色々あると言う意味です。

 書写の場合も、昔から書かれている文字を楷書とするのか、それとも標準字体の楷書をさすのか、それとも、教科書体や活字の楷書のフォントを正しい書き方とするのかを、統一してもらいたいと思っています。手書きの場合は色々あるからと言っても、点画の交わり方や方向を規制するのではなく、これが、正しい書き方と統一するのは良くないのでしょうか。正しい書き方が決まっていて、その文字の許容できる範囲を決めれば矛盾しないのですが、私の勉強不足なのか、各団体の主張が強いのか、定かではありません。しかし、現在の私には、掴みどころがありません。

 またまた、愚痴から書き始めましたが、さて、今朝も文字を選んで書く事にします。

 今まで通り『楷行草筆順・字体字典』(江守賢治著)から、上手く書けそうな文字と、難しそうだな、と思う文字の二種類の文字を選ぶようにしました。

 前回は、「また」「るまた」を取り上げました。
 文字は、「及」「友」「取」、「段」「殿」「毀」を楷書で、「友」「取」「段」「毀」を書写体で書きました。
 今回は、「ぼくづくり」「あくび」「おのづくり」を取り上げました。
 文字は、「改」「放」「敏」、「次」「欧」「歌」、「断」「新」を楷書で、「敏」「断」を書写体で書きました。
 

 線の太さが意外と難しく、文字自体はこれで良いと思うのですが、線が細すぎると思っています。

 まだ、空白に文字を書く時に、出来上がりを瞬時にイメージ出来ません。
 

 難しい文字ですが、手本を観察すると感じを掴むことが出来そうです。

 


 「敏」は、線が細すぎました。しかし、字体としてはすっきりしている感じです。

 右払いの書き方を少し変えました。書きやすくなりました。これは、ちょっと文章では伝えにくい僅かな筆の動きです。

 

 
 「次」は、五画目の左払いが太過ぎました。
 しかし、形としては良く書けたと思っています。

 一画目の点と、最後の頂点の位置が、同一線上にある事が文字を調和させたのでしょうか。これは江守賢治先生の感性だと思います。
 

 
 「欧」は、手本から、旁の一画目に対して二画目の位置がかなり下にある事を知りました。
 これは、手本がないと、一画目の中ほどから二画目を書くところでした。
 書いて見ると、なるほどと思うような文字になったと思います。
 
 
 「断」の楷書は何とか形になったと思いブログに載せましたが、よく見ると、「おのづくり」の一画目が短いように思います。
 書写体の方は、全く字を書いている気がしません。画数の多い文字は、書きなれないといけないと、つくづく思いました。

 

 
 「新」の文字は、上が手本としている江守賢治先生の文字を書写したものです。下の字は、『毛筆書写事典』(續木湖山編著)の文字を書写したものです。

 線の太さはともかく、四画目を見てもらうと、明らかに違いがあります。

 『楷行草筆順・字体字典』(江守賢治著)では、両方とも楷書としてこの形が良いとの記述が見られます。

 『毛筆書写事典』(續木湖山編著)の方では、上の文字は許容字体とされています。

 この文字は、東京書道教育会の初級の時の課題で『日新』と半紙に書くものがあり、手本を見て驚きました。私が長年書いていたのは、上の文字だからです。これが標準の字体ではないとすれば、「書道三体字典」(高塚竹堂著)も『入門毎日書道講座1 楷書』(青山杉雨・村上三島編)も許容字体を楷書として書いたのでしょうか。

 私が疑問に感じているのは、こういう所です。ここに名前をあげた書道の先生は日本の書道界では第一人者と呼ぶに相応しい方々です。
 

   

 一口メモ 

 「書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘」(余雪曼著)が、「結体三十六法」と「結構八十四法」を基に九成宮碑文の特殊な結構を参酌して四十四に書き表したものを紹介します。
 今回は、その8回目です。
 【ここで書いてある文字は、九成宮醴泉銘を私が臨書したものです。赤い線は。『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』を参考に入れています。】
  
(17) 承上法
 
 右払いと左払いが交わる点は中心で左右対称になる。
 また、両払いは伸び伸びと書く。
 「書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘」(余雪曼著)では、左払いをて偏に敝と書いて「へつ」と言い、右払いを捺と書いて「なつ」と呼称しています。

 

 

(18) 蓋下法
 
 「人字頭」や「ひとやね」と言う部分がある場合は、その中心の取り方に注意する必要がある。
 この九成宮碑文の場合は、やや左に「ひとやね」の交点があるようです。

 左払い、右払いともに伸び伸びと書くようにします。


【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.
・余雪曼(1968-1990)『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』株式会社二玄社.
・續木湖山(1970)『毛筆書写事典』教育出版株式会社.

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です