『礼と節』を表現してみよう。
Part-6
1. 話し方で『礼節』に適う事・・・・品格篇

 私が今までにお目にかかった人の中で、一番品位を感じたのは、今の皇后陛下、美智子妃殿下でした。

 美智子妃殿下が音楽鑑賞にみえると言うので、皇宮警察と警察、そして民間の警備会社数社が警備に当たった時の事です。私は、一つの民間警備会社の代表として私を含めて4人が、私服で会場の警備に当たりました。

 偶然にも、私がたった一人で警戒していた会場の廊下の扉が開き、美智子妃殿下と御付きの人が、予告も無く見えられたのです。
 美智子妃殿下から丁寧に頭を下げられ、「ご苦労様です」とねぎらいの言葉がありました。恐縮してしまい、こちらも直ぐに頭を下げたのですが、頭が当たりそうなくらいの至近距離でした。

 テレビで見るのとは違い、後光が差しているような感じで、変な例えようですが、品が立っているという感じです。正に品格そのものでしょう。
 言葉ば見つからないほど、高貴な人でした。今から20年程前の事ですから、還暦を少し超えた年齢だったと思います。「たおやか」と言う言葉がぴったりくると思います。すでに「たおやか」という言葉が使われる事も少ないと思いますが、「姿・形・動作がしなやかでやさしいさま」(出典:大辞林 三省堂.)と言う意味の言葉です。

 まず、話し方で、美智子妃殿下に習うとすれば、まず穏やかな発声、その場、その人に合った言葉の選び方、心のこもった話し方、と言ったところでしょうか。
 しかし、その他に、その人の生まれ育った環境、教養、現在の生き方などが言葉の裏側にあるような、「ご苦労様です」でした。感動しました。たった一言で人の心を鷲掴みにされた感じです。これを徳というのでしょうか。

 私には、まったく「徳」が見当たりません。なんとかなりませんか。

 私の人生は、結構浮き沈みがありましたから、世の中で偉い人と呼ばれる人とも、お目にかかる機会は、何度かありました。それでも、美智子妃殿下の場合は、ちょっとレベルがかけ離れているように思いました。私は、天皇制に違和感を持つ者ではありません。また、生まれた時から反感をもった事もありません。しかし、極端に天皇家に対して崇拝すると言った習慣もありませんでした。
 その私が、一度お目にかかった、と言うと語弊がありますが、まじかで見る事ができたのは、偶然であり、幸せな事だと思っています。

 今は事情があって、疎遠になっていますが、私の義兄の家も、昔は栄えていて、昭和天皇がお召しになったと聞いています。確かにその家族の育ちは、少し、庶民とは違う感覚を持っていましたが、品の塊といった印象は持ちませんでした。そんなにびっくりするほどのものでもなかったように思います。

 品格を辞書で引くと、「その物から感じられるおごそかさ。品位。」(出典:大辞林 三省堂.)とありますが、うまく説明できるとは思いませんし、先述した通り、本物を見て感じる事が必要であると思います。言葉には代えがたい、と言うべきものが、品格かも知れません。

 もう少し、場面を変えて見ましょう。

 例えば、「霊験あらたか」などと言うと余計に分かりにくくなると思いますが、神社に詣でたとき、すこし心が引き締まると言うか、真面目な気持ちになった事はありませんか。背筋が伸びるというか。今ではパワースポットなどと呼ばれる場所は、多分そんな神聖な気持ちにしてくれるのかも知れません。

 そんな気持ちになる事が、「おごそか」と言う言葉で表されるのではないでしょうか。冠婚葬祭の場所で、気持ちを引き締めず、おごそかな気持ちになれないとしたら、それは、やはり『非礼』『無礼』になると思います。

 大概の人は、衣を正し、気持ちを正すと思います。これが『礼儀』です。

 話す場合も、衣を正し、姿勢を正し、心を正し、穏やかに、そして、人を思いやって、美智子妃殿下に習い、品格のある表現ができれば良いと、心から思います。