【生活に必要な「姿勢」から空手道に必要な「姿勢」まで】 |
もう、35年程前になりますが、故米山嘉一氏(日本空手道剛志会初代会長)の誘いで、故許鴻基氏を紹介され、形意拳を知ることになりました。米山氏は非常に勉強家で熱心に探究されていましたが、私は付き合い程度しか、稽古しませんでした。それでも、散打や型の稽古を、何度か一緒に練習した事があります。
その中でも千賀正明氏(許鴻基氏の弟子であり、現在、中國武術鴻龍會 会長 千賀正明老師)主催のセミナーに、米山氏と参加し、その下半身の鍛え方に驚いた経験がありました。
今日は、「姿勢」についての話のはずが、と思われた思いますが、関係あるんです。中国拳法の言葉に、「含胸抜背」(がんきょうばっぱい)という言葉がある事をその時に知りました。日本にも肥田式強健術と言うのがありますが、どちらも自然体を作る方法を示していると思っています。
写真は、左から直立(一般的に正しい姿勢)、次が軍隊式の気を付けの姿勢(胸を張り顎を引きます)、その次は猫背と言われる悪い姿勢の代表です。最後の右端は、含胸抜背と言われている立ち方です。
- 一般的に正しい姿勢というのは、耳・肩・腰骨・踝(くるぶし)が垂直になる立ち方です。骨盤の上に背骨がS字を描いて頭を支えています。
- 次の気を付けの姿勢は、胸を大きく上に突き上げ、顎を引き、如何にも気を引き締めている態度です。
- その次の猫背については、仕事上永い間に身に付けてしまった。あまり体に良くない姿勢と言えます。
- 最後の右端の含胸抜背という立ち方です。一見左端の正しい姿勢に似ていますが、良く見ると、若干肩の位置と背筋の形が違って見えます。
【含胸抜背】はどうすればできるのか。私が教えてもらった方法を説明します。
- 一般的に正しい姿勢をとります。両肩を上から下に回すようにして、胸を包みます。この時、胸筋に力が入ります。
- 肩で胸を包むようにすると、肩甲骨が開き、背の力が抜けます。
- 次に肩甲骨を腰に近づけるように落とします。
- C.の動作によって、首から肩にかけて張りがでます。同時に胸の力が抜け、空洞ができたように感じると良いと思います。
- 自然に脇が締まります。
- 背中の形が、猫背までにはなりませんが、やや丸みを帯びます。
空手に限らず、体を動かす運動やスポーツ、武術や舞踊においての「姿勢」はどうでしょう。常に動いているわけですから、静止状態でバランスを取っている分けには行きません。そこで、先述した自然体という「姿勢」が必要になるわけです。私は、どちらにも動けるニュートラルな精神と肉体の姿と思っています。
剣道・柔道・合気道・ボクシング・座禅・能などの姿勢を見る時、決して奇を衒(てら)うような仰々しい形を取らないものと思います。気負わない姿勢が、精神の落ち着きを導いているのではないでしょうか。
「身を聳えること太だ過ぎて、人をして気息に不安ならしむことを得ざれ。耳と肩と対し、鼻と臍と対し、舌は上の腭を拄え、唇歯相い著けしむることを要せよ。」と、座禅儀にも書かれています。