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文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。 |
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慈恩-31~47
今回も慈恩ですが、序盤中盤に引き続き最後の終盤を掲載します。
序盤は、 慈恩序盤を、
中盤は、 慈恩中盤を参照してください。
『「(右上)」と言うのは、交差する時の手の組み方で、この場合は、右手が左手の上と言う意味です。』
『髓心会では交差立で立っています。』
32.左足を一歩退くと同時に、両手を(32)のように後方に掻分ける。
(注)両手で受けた足を、右手か左手で掻き払った意味。
『「後方」と言うのは、自分の身体の左右と言う意味です。』
33.右足をそのまま、左足一歩進むと同時に、両手(右上)で中段掻分け。
『「(右上)」と言うのは、交差する時の手の組み方で、この場合は、両手が交差するのは、帯のあたりなので、右手が左手の上と言う意味です。』
34.右足一歩進む(前屈)と同時に、両手で額上高く(34)のように上段挟み受けを為す。左手は下に。
(注)この所三項は空手組織中最も精妙を極めた処で、下段、中段、上段と千変万化、実に面白く出来ている。空手を学ぶ者は、型の中からこのような手を探し出してよくよく玩味すべきである。
『「左手は下に」と言うのは、左手が内側、右手が外側と「空手道教範」の写真から判断できます。』
35.そのまま右裏拳で敵の顔面を打つ。
36.そのまま左掌で打ち被せて受けるのと同時に、右拳を高く肩の上に(肘を曲げて)構える。
『「空手道教範」には、「打ち冠せて」となっていますが、あまり現在使われていないと思いましたので、「被せて」としました。』
37.相手の人中を裏拳で打つ心持で、右裏拳を正中線に打出す。この時左手首の上に右肘が接する様。騎馬立初段(二四)参照。
(注)以上三挙動は熟練すれば敏速に続けて動作すべき所である。
『「騎馬立初段(二四)参照」と記載されていますが、印刷ミスかも知れません。騎馬立初段の(二九)は、立ち方は騎馬立ですが、左手首に右肘が接するよう右裏拳をしている動作があります。 鉄騎初段後半(29)参照。』
39.同一線上に、右足前進すると同時に、左拳を引き右拳中段突き。
『髓心会では、右中段追突きと呼称しています。』
40.同一線上で、左足を軸として右へ廻りながら、右足を一歩踏出して右手中段内受、左手腰
『左手腰、で句読点もなく文章が途切れていますが、印刷ミスと思われます。このままでも、意味は同じですが、「左手腰に引く。」あるいは、42.のように「左手腰。」と読めば良いと思います。』
41.左足一歩踏込み(前屈)左手中段突き、右拳を腰に引く。
(注)以上左右の動作は同様の要領である。
『髓心会では、左中段追突きと呼称しています。』
『髓心会では、左前屈立左下段払いと呼称しています。』
43.(43)のように右拳右足共に高くあげて、相手の突込む手を打落しながら、右足を踏込む。
『踏み込んだ時の立ち方は、騎馬立にしています。髓心会では、相手の中段突きを打ち落としています。』
『文章では相手の攻撃位置が明確ではありませんが、(44)(45)と同じ動作の連続と推測し、上段突きを打ち落とす方が、動作としては理論的と思います。』
44.左拳左足共に高く上げて、左手首で敵の上段突きを打落すと同時に、左足を踏込む。
『髓心会では、相手の中段突きを打ち落としています。』
『原点のとおり、相手の上段突きを打ち落とす方が、動作としては理論的と思います。』
★一口メモ(1)参照。
45.右拳、右足共に高く上げて、右手首で敵の上段突きを打落すと同時に、右足を踏込む。
『髓心会では、相手の中段突きを打ち落としています。』
『原点のとおり、相手の上段突きを打ち落とす方が、動作としては理論的と思います。』
★一口メモ(1)参照。
『髓心会では、手を交差する動作と肩の位置に伸ばす手を一つづつ動作をします。肩の位置に伸ばす事を、流し突きと呼称しています。』
『この文章のように、寄り足をしながら手を交差して、寄り足が終わる時に突き終わる方が良いと考えています。私が習った頃はそんな記憶があります。』
47.前と反対に、右へ寄足しながら、左右の手を交叉(左を上)すると直ぐに、引裂く様な心持で右拳を右方へ伸し、左拳を胸の前に止める。顔右向。
(注)側面から突込んで来る敵の手を、引き掴むと同時に引き寄せながら、敵の脇下を突く意味である。
『髓心会では、手を交差する動作と肩の位置に伸ばす手を一つづつ動作をします。肩の位置に伸ばす事を、流し突きと呼称しています。』
『この文章のように、寄り足をしながら手を交差して、寄り足が終わる時に突き終わる方が良いと考えています。私が習った頃はそんな記憶があります。』
★現在では、最後をゆっくりと動作していますが、原点に戻して早く動作するべきだと考えています。
(直れ)右足をおもむろに引き、両手も用意の姿勢に復する。燕飛、岩鶴、慈恩のような型は、研究すればする程深い味があり、実に又と得難き型である。
次回は、半月前半を掲載します。
【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1979)『ベスト空手8 慈恩・岩鶴』株式会社講談社インターナショナル.
・中山正敏(1989)『ベスト空手8 慈恩・岩鶴』株式会社ベースボールマガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(下)』株式会社池田書店.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.