言葉が無ければ、人間はどのような歴史をおくったのでしょうか。そして、文字の存在がその歴史を作って来たと言っても過言ではないでしょう。
ただ、言葉を発しても、それは記憶の中にしか残りません。しかし、その言葉を書き記す事で、言葉はそのまま時代を経ても、書かれた当時のまま後世に伝えられます。
前に聖徳大使の「十七条憲法」や、孔子の「論語」、あるいは宮本武蔵の「五輪書」「独行道」、そして沢庵和尚から柳生宗矩に送られた「不動智神妙録」など、昔の文章を読んで来ましたが、これも文字が書かれるという事から出来たものです。
言い伝えというものは、伝言ゲームのように、多分に装飾されたり、欠落する事はやむを得ない事ですが、書かれた物は、他者が介在する事無く、書いた本人の思いが伝わってきます。
その中でも、「論語」以外の物は、現物が残っています。中には原本の写本もありますが、この文字を見ますと、それぞれの文字にその人の品格が現れていると思います。
私は、まだ文字に現れた芸術性や、書かれた人の品格が解るまでには、到達していませんが、こんな字がさらさらと書けるようになりたいと思ってしまいます。
では、いつものように一文字一文字、観察して、書いて見ましょう。
「ま」と言う文字の特徴は、縦長です。赤い点線の内側に収まるように書きます。
ここでも、結びがありますが、 上達ポイント(Section 6)の特徴をよく知って書いて見てください。
一画目と二画目の間を広く開けるようにすることが、ポイントです。
「み」の特徴は、上の方が大きな菱形の中に書くとバランスが取れます。文字の始めの横線は、ほぼ水平に短く引いて、中央の線に接すると左斜め下に一気に引き下ろします。下の赤い点線にぶつかると上に上げて結びます。丁度菱形の左の頂点で右にほとんど水平に横の線を引きます。ここでも、ひらがなですから、真直ぐではなくやや上に膨らむようにほんの少し右上がりに引きます。これは、図のようなふくらみと右上がりを参考にしてください。最後の線の最終が菱形の下の頂点で終わります。この菱形の下の頂点は、少し中央線から右側に逸れていることに注意しましょう。
「む」の文字も「は」と同じように正方形に見えますが、少し縦長に書く方が形がとれます。「む」の文字のポイントは、最後の点の位置だと思います。赤い点線の右上に少し大きめに点を打ちます。左の部分と広く間を開けます。結びの最下点とほぼ同じ水平線上に水平に線を引き最後に上の点に繋げるように上げます。
「め」は、こじんまり書くと、他の文字と釣り合いが取れます。一画目と二画目「の」の交わる点に注意する事がポイントです。そして、最後の線を引き出す長さも図を見て調整してください。二画目の線の入れ方は、中央線より右側から少し中央線に添うように下ろしてから左斜めに膨らみを持たせて引いて、赤い点線の枠に当たる前に左斜め上に引き上げ、赤い点線の枠に当たってから右上に丸めます。
「も」は、中央線に添うように左側に大部分があります。最後の曲げで少し中央線から出ます。二本の横線は、縦の線の半分の所に赤い点線を引いていますので、これを目安にすると、全体のバランスが取れます。この文字もバランスの取りにくい文字なので、何度も練習して下さい。
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【参考文献】
・鷹見芝香(1966)『ペン習字』 株式会社主婦の友社.