サイトアイコン 髓心

お習字から書道へ Section 11

スポンサーリンク

 なんとか、「あいうえお」から始まって、50音も最後の「を」まで辿り着きました。おなじ『ペン習字』(鷹見芝香たかみしこう 著)に「いろは順」の最後に「ん」の文字がありましたので、50音に追加して掲載します。

 本気になって、10日余りを練習した人は、きっと美文字を手に入れるスタートラインに立てたのではないでしょうか。

 それでも、すこし練習すると気付く事があると思います。私が、まず思った事は、意外と線が引けないと言う事でした。この引けない線を引けるようになるのが練習なのですが、引けないからこそ、個性がでるのではないでしょうか。

 形は、何度も練習している内に、赤枠や赤い点線を覚える事によって書けるようになると思います。

 得意不得意と言うのは、それぞれあると思います。縦線はなんとか書けるが、横線になると上手く書けないとか、またその逆の場合もあると思います。

 そんな時には、ただ数を多く稽古するだけではなく、工夫が必要だと思います。自分なりの方法を見付ければ良いのではないでしょうか。

  
 硬筆の場合は、そんなに長い線は書きませんので、練習さえすれば、縦横の線も淀みなく書けるようになると思います。

 これが、毛筆となると、肘も手首も付けずに、筆を運びますので、不安定に慣れなければ、線が踊ってしまいます。

 江守賢治えもりけんじ  

 元・文部省主任教科書調査官(書道・書写・美術担当)
 文部省認定・書写技能検定協会(書道検定・ペン字検定)理事
出典:江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
★書写技能検定は、現在文部省認定ではなく、文部科学省後援になっています。

 

 山下静雨やましたせいう  

 第一回ペン習字検定試験最高位合格
 文部大臣賞受賞
 日本ペン習字研究会師範及び師範会常任理事
 全日本ペン書道展審査員及び運営委員
 日本硬筆指導者連盟常任理事
 日本硬筆書作家連盟常任理事
 税務大学講師ほか
 毛筆 日展作家
    毎日書道展嘱託
    謙慎書道会理事ほか
出典:山下静雨(1979)『ボールペン習字』株式会社ナツメ社.

 

 鷹見芝香たかみしこう  

 文部省高中学校書道学習指導要綱編集委員(硬筆習字)。
 全日本書道教育協会総務。
 東京都中学校書道研究会副会長。
 日本書作院同人。
 東京都立豊島高等学校講師。
出典:ペン字いんすとーる(http://cumacuma.jp/review/review_index/pen_life/)

 

 では、「ひらがな」最後の文字です。一文字一文字、観察して、書いて見ましょう

 「わ」と言う文字は、「ね」とか「れ」に似てはいますが、それぞれに特徴があります。その特徴を捉える事が、上手く書くコツになると思います。
 一画目の入り口は、「わ」が一番上、続いて「ね」、一番下が「れ」の順で形をとります。ただ上下の差は殆どありません。右側の形により調整する感じです。「わ」が一番上から書く理由は、最後の線の伸びが一画目よりややでる事に関係します。

 この「ゐ」は、「ぬ」と同じように書く気持ちがあれば、なんとか形になると思います。
 一画目は中央線の左上部の少し下から右下に45度位の角度で入ります。中央線に当たると左下に直線に近い緩やかな曲線を描いて左下に伸ばします。赤枠の下から四分の一程度からほぼ真上に上げるよう左上に少し上げてから鋭角に線を曲げて右斜め上に直線的に入って来た線を交叉して右側に伸ばします。中央線を越え右側の領域に入ってからゆったりと線を曲げて、左下に向かいます。赤い点線の円弧を想像しながら、結びを中央線で作ります。

 「う」は、「あいうえお」の時に出ていますので、同じ事を書いて置きますので、復習してください。
 一画目を打つ位置は、中心線上にやや大きめに書く方が良いと思います。そして、二画目との間が狭くならないように書きます。二画目は赤い点線で示しているようには楕円形になるように中心線から左に抜けるように左斜めに書きます。

 この「ゑ」は、「恵・惠」が元の字とされています。その形をある程度残していますので、下の部分は、「心」の草書と全く同じと言えます。
 折返し部分も沢山あり、結びも、円弧もありますので、殆どの線の特徴を含んでいますので、現在、普通の文章で使う事は、まず無いと思いますが、文字を習うには、格好の文字と思いますので、練習を勧めます。
 図を見て、中心線に留意する事が、バランスをとるコツだと思っています。特に「心」の部分で左側から中心でハネて上に上がる、最下点の位置を考えて書くと良いと思います。

 「を」は難しく、形の取りに行く文字だと思っています。しかし、縦長に書き、中心線の右と左のバランスを図のように取る事によって、文字の安定が保てると思っています。

 

「ん」は、現在受講している通信教育で、東京書道教育会の指導でも、ポイントは左下から上に一旦上がった線を、突き上げるようにしてから、下に半円を書くと言う、突き上げるという事を強調されています。この部分が鋭角ではなく丸くなっている手本もありますので、あくまでも、一つの書き方として認識しておく必要があります。

 上達ポイント  

 なんどか、ひらがなの字源と書きましたが、「ひらがな」には元になった漢字があります。

 その元になった感じを知る事も、「ひらがな」を書く上で知っておいて損はしないと思います。

 「ひらがな」の歴史は、日本でいわゆる当て字と呼ばれる、暴走族なんかが、「夜露死苦よろしく」と言うような漢字と意味が噛み合わない書き方ですが、これが「古今和歌集」などに書かれてある「万葉仮名」と呼ばれているものです。「ひらがな」の始まりでしょう。そして時代を経て、「ひらがな」が定着しました。

 それまでは、当て字であったものですから、色々な漢字が「ひらがな」として活躍しましたが、現在私たちが「ひらがな」として使っているものは、原則として一つの漢字が元になっています。

 それでは、「50音順」に対比してみましょう。
「あ」←「安」、「い」←「以」、「う」←「宇」、「え」←「衣」、「お」←「於」
「か」←「加」、「き」←「幾」、「く」←「久」、「け」←「計」、「こ」←「己」
「さ」←「左」、「し」←「之」、「す」←「寸」、「せ」←「世」、「そ」←「曽」
「た」←「太」、「ち」←「知」、「つ」←「川・門」、「て」←「天」、「と」←「止」
「な」←「奈」、「に」←「仁」、「ぬ」←「奴」、「ね」←「」、「の」←「乃」
「は」←「波」、「ひ」←「比」、「ふ」←「不」、「へ」←「部」、「ほ」←「保」
「ま」←「末」、「み」←「美」、「む」←「武」、「め」←「女」、「も」←「毛」
「や」←「也」、「ゆ」←「由」、「よ」←「与」
「ら」←「良」、「り」←「利」、「る」←「留」、「れ」←「礼・禮」、「ろ」←「呂」
「わ」←「和」、「ゐ」←「為」、「ゑ」←「恵・」、「を」←「遠」
「ん」←「无」
 この中で、太字の「禰・祢」、「川・門」はどちらも字源の候補になっています。
 また、「恵・」については「惠」と言う文字は仮名が発生した平安時代では「恵」という文字が使われていました。同様に「為」「呂」も同じです。
 また「安」「幾」も漢字変換できませんので割愛しますが、書写体と呼ばれている文字から仮名になっています。

 もう一つこれは、蘊蓄ですが、変体仮名と言う言葉も時々見られます。また、看板などには使われている文字ですが、「万葉仮名」の中で「ひらがな」にならなかった文字、すなわち当て字の草書の漢字が、変体仮名といえます。

 

 一口メモ  

 今回は『ペン習字』( 鷹見芝香たかみしこう  著)に書かれてある、変体仮名についての記述がありましたので引用してみます。

 『・・・一字一音に転用した多くの「草がな」の中から、もっとも広くもちいられていたものやもっとも簡素で字形の美しいものが、最大公約数的に選ばれた結果と考えられます。一方、それまでに用いられていた同音異字の変体がなを混用する習慣は、現在でもまだ残っています。たとえば「は」のかわりに「破、半、伴、八、婆」などを用いるのがそれで、「は」には十五字も種類があります。この中でおそらくいちばん長い生命を持続するのは「者」であろうと思われます。』

 今引用した文章の中に「者」がありましたが、宮本武蔵の「独行道」にも、「者」の草書を「は」と読んでいます。
【出典:熊本県立美術館 所蔵品  データベース   独行道】
「者」変体仮名は、私の自筆です。
今では、全く無用と思われますが、書道としては、今でも変体仮名は、多く使われていますし、また、古典の臨書には無くてはならない知識ですから、ある程度は身に付けたいと思っています。 

【参考文献】
鷹見芝香たかみしこう(1966)『ペン習字』 株式会社主婦の友社.
・山下静雨(1979)『ボールペン習字』株式会社ナツメ社.

スポンサーリンク
モバイルバージョンを終了