心
『礼と節』....<6/12>
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この上も下もなく、という言葉が、上下関係の厳しかった、いや、身分制度が厳然とあった時代に確立されたことに、大きな意味があると思います。
先ほど紹介した、茶道における「一期一会」の精神にも、茶室に入るときは、にじり口という小さい入り口から入るため、刀を取って入り、中に入っては、主と客は対等であると聞きます。
利休の時代に茶道を学んだのは、多くは大名や身分の高い侍、裕福な商人たちでした。茶会に招かれた客は、侍であっても、茶室に入るときまず刀をはずさなければなりません。そうしなければ、茶室の小さな入り口、「にじり口」から入ることができません。侍の象徴である刀をはずすことはとても意味のあることです。たとえ一国の主といえども、刀ははずさなければなりません。このような方法で、茶室の中では厳格な封建社会の身分ではなく、人間性を持って敬意を払われる茶道の世界に入っていきます。
そのかわりに、茶室の中では、正客や次客という具合に、厳しく振る舞いが決められています。このようにして、茶室の中では、社会における平等を学ぶということが、茶道の大きな特徴となったのです。
話がそれましたが、その小笠原家に伝承された教えとして
『手も足も みな身につけて つかうべし 離れば人の目にや立ちならん』
『無躾は 目にたたぬかは 躾 とて 目に立つならば それも無躾』
『仮初(その場かぎりのこと)の 立ち居にもまた すなおにて 目にかからぬぞ 躾なるべき』
三首の歌が残されているらしいんですが、いずれも、礼と節を的確に言い表していると思います。
○要するに身につかない、つけやきばの礼儀は、不躾である。
○節度なく行き過ぎた礼は慇懃無礼である。
○なにも、特殊なときに礼と節が表現されるのではなく、その場かぎりのことであっても心を込めて礼を尽くさなければ礼とはいえない。
と言っているのでしょう。

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