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軟酥(なんそ)の法

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  【白隠禅師と軟酥(なんそ)の法】  

  あがりを克服して、力を抜く!!でも書きましたが、私は元来気が弱く、体質もひ弱であったんだろうと思います。小学生の頃は、タクシーに乗って1メーターも行かない間に具合が悪くなったり、人前では上がるし、きっと、頑張って虚勢を張って生きて来たんだろうと思います。
 孔子の言葉に、「四十にして惑わず」とありますが、とてもそんな域に達して居なかったのでしょう。大阪から仕事を変え、東京に行き、小さな会社を設立した時の事です。借金が膨らみ精神的に追い詰められていたのでしょう。ある日、鏡を見て驚きました。両目がウサギになっていたのです。ウサギは飼っていましたが、まさか自分がウサギになるとは思ってもいません。
 すぐに病院に行きました。アトピーだと言われました。しばらく経つと、腰の周りが痒くなり、顔を除いて、全身に広がりました。家にいる時は、妻のスカートを胸の下まで上げ、下着は付けられない程になりました。想像しない方が良いですよ。笑いが止まらなくなります。
 本人は、それどころでは無いんです。それでも仕事はしないといけませんから、外に出ます。もう、痒くて痒くて。ズボンも釣りバンドにし、腰回りはブカブカの物を履いていました。
 かなり強い薬も塗ってみましたが、一向に、回復に向かいません。

 そんな時です、病気を治す坐禅の方法があったと気が付いたのです。早速、軟酥(なんそ)の法を調べました。まだインターネットで簡単に調べられる時代には成っていなかったので、本屋に行き、白隠禅師が座禅をやり過ぎて病気になり、これを治すのに軟酥の術(その頃私はそう呼んでました)を編み出した事を知ったのです。

 なんの根拠もないのですが、兎に角やってみました。「手当」も経験していましたので、自分でも効くのかも、と半信半疑で。
 「手当」のように直ぐには効いてきません。やっぱりだめか、と思いながら、でも、もう他に手立てがないものですから、毎日毎日、軟酥(なんそ)の術です。
 不思議なことに、日を追うごとに、少しづつ、少しづつ、赤みが取れて来ました。ホントにサルノコシカケ見たいなお尻をしていました。
 何か月かが過ぎ、ほとんど治ったかに見えました。いや、治ったのですが、残ったと言った方が良いでしょう。両肘の部分だけなぜだか治らないのです。
 でも、痒さはなかなか我慢できるものではありません。なんとかならないかと、思案して、ふと、もしかしたらと思ったことがありました。

 軟酥(なんそ)の法は後で紹介するとして、ざっくり言うと、座禅のスタイルです。足の上で手を重ねると、肘が出ますね。この肘では、軟酥(なんそ)が通って行かないのではないかと思い、手を前で重ねるのを止め、両膝の上に手のひらを上にして置くようにしました(写真参照)。推測は見事当たりました。全快です。

 それからも、何度もアトピーの症状はでます。その度に軟酥(なんそ)の法です。もう、サルノコシカケみたいに重症にはなりません。

軟酥(なんそ)の法(「夜船閑話」原文から抜粋)
予が曰く、酥を用ゆるの法得て聞いつべしや。幽が曰く、行者定中四大調和せず、身心ともに勞疲する事を覺せば、心を起して應に此の想をなすべし、譬へば色香淸淨の輭酥鴨卵の大さの如くなる者、頂上に頓在せんに、其の氣味微妙にして、遍く頭顱の間をうるほし、浸々として潤下し來つて、兩肩及び双臂、兩乳胸膈の間、肺肝腸胃、脊梁臀骨、次第に沾注し將ち去る。此時に當つて、胸中の五積六聚、疝癪塊痛、心に隨つて降下する事、水の下につくが如く歴々として聞あり、遍身を周流し、雙脚を温潤し、足心に至つて即ち止む。行者再び應に此の觀をなすべし、彼の浸々として潤下する所の餘流、積り湛へて暖め蘸す事、恰も世の良醫の種々妙香の藥物を集め、是れを煎湯して浴盤の中に盛り湛へて、我が臍輪以下を漬け蘸すが如し、此の觀をなす時唯心の所現の故に、鼻根乍ち希有の香氣を聞き、身根俄かに妙好の輭觸を受く。身心調適なる事、二三十歳の時には遙かに勝れり。此の時に當つて、積聚を消融し腸胃を調和し、覺えず肌膚光澤を生ず。若し夫れ勤めて怠らずんば、何の病か治せざらん、何の德か積まらざん、何の仙か成ぜざる、何の道か成ぜざる。其の功驗の遲速は行人の進修の精麤に依るらくのみ。[出典:『夜船閑話』小さな資料室 URL:http://www.geocities.jp/sybrma/310hakuin.yasenkanna.html]
 白隠禅師というのは、臨済宗の中興の祖と言われるほど有名なお坊さんです。その修行の厳しさは凄まじいものだったと伝わっています。しかし、あまりの激しさに、ついに無理がたたり、心身ともに病に侵されます。
 これを治すため、白幽仙人から瞑想法を教わり、ついに病気を根治させるのです。「夜船閑話」という著書の中で記されている瞑想法に、「内観の秘法」と「軟酥の法」があります。
 私が実践したのは、この「軟酥の法」です。原文も今でいえばイメージトレーニングの方法ですが、余りにも昔の言葉の羅列なので、現代風に箇条書きにしてみました。
  1. 原文では鴨の卵とありますので、鶏の卵のちょっと小ぶり(Sサイズ)の大きさの丸薬が頭の上に乗っているとイメージして座禅の形をとります。
  2. この丸薬が軟酥と思ってください。
  3. しばらくすると、この丸薬が体温で溶け出し、頭の外側、頭蓋骨を浸透して頭の中まで、内外と流れ出します。イメージとしてはバターが溶けて流れる感じです。
  4. このバターが呼吸と共に両肩に流れ、内側は肺を満たし、内臓をことごとく潤し、同時に外側では肘・胸・腹を流れて行くことを想像します。
  5. ついには、背骨を通過して腰椎から尾てい骨に至るまで、バターで満たされます。
  6. 大切なのはイメージですが、単なる想いではなく、満たされていくことを感じているような錯覚に陥ることが大切だと思います。いや錯覚を通り越して現実に感じるようになります。
  7. ついにこのバターのように溶けた軟酥が下半身に溜まり足を湿らせるように感じることが必要です。
  8. これを何度も何度も繰り返します。
    ※上記は、私がやっていて、感じた方法です。
    ※できる人は、類まれな匂いまですると言われています。
    ※酥というのは、醍醐の事だと思います。醍醐味という言葉がありますが、チーズの液体状のものです。ですから、軟酥はそれよりも柔らかい乳を煮詰めたものを言っているのでしょう。
    ※軟酥の法では、この軟酥を仙薬といい、万病を治す薬と言っています。
  9. この効果が現れるには、早い人も遅い人もあるが、これはその人の真剣に取り組む姿勢にある。と言っています。
     また、この方法で治らない病はないとも。また、この方法で高い徳を積むことができる。必ず禅の道も修めることができる。とこの効果の高さを強調しています。
      ●この軟酥の法で一番大切なのは、9.で言っている、その人の真剣度だと思います。ただ、真剣なだけではなく、これしか無いと思う気持ちが成功の鍵だと思っています。その真剣度によってイメージできるか、できないかが決まります。6.で書きましたが、イメージを通り越して、現実に感じるまで一心になることです。他に手立てがないと思い切れるかどうかにかかっています。  

 私には、科学的検証もできませんし、その能力もありません。しかし、現実にアトピー性皮膚炎を克服したことも事実です。
 心身統一、瞑想が体に影響を及ぼしていることは、現在の科学では当たり前になってきています。科学の詳細については解りませんが、社会生活でストレスを感じたり精神に異常を来し、ついには身体にまで影響がでているようであれば、一度は試してみる価値があるのではないでしょうか。

幸運を祈ります!

【転載資料】
・『夜船閑話』小さな資料室 URL:http://www.geocities.jp/sybrma/310hakuin.yasenkanna.html

【参考文献】
・太田雅男・大森崇・小向正司・高木俊雄(1992) 『禅の本』株式会社学習研究社.
・村瀬玄妙(1980)『禅問答入門』株式会社日本実業出版社.
・紀野一義(1966-1983)『禅 現代に生きるもの』日本放送出版協会.
・禅心滋光(1994)『SUPER ZEN』KKベストセラーズ.
・朝比奈宗源(1973)『覚悟はよいか』PHP研究所.
・無能唱元(1981-1993)『新説阿頼耶識瞑想術』致知出版社.

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