【五輪書から】何を学ぶか? |
仕事でも、上手く行く時と、何をやっても上手く行かない時があります。色々な条件が重なり、国全体の景気が上向きになったり、低迷したりと、専門家でも分析は難しいのでしょう。近頃では国際的な動きもその要因の一つとなります。
左の絵は一ノ谷の戦いで、平氏敗走の図です。当時隆盛を誇っていた平氏も追い詰められ、滅びていったという歴史が、「驕る平家は久しからず」と言う言葉となって、現在でも戒めの言葉として使われています。
個人の事でも、バイオリズムなのか、季節に対応できないのか、朝と夜、四季によっても体調が狂います。ただ、この変化に、日本人は昔から、四季折々の楽しみを文化として持っていました。最近はどんどん廃れていってますが、どこに向かっているのでしょう。
ここで言う「景気」と言うのは、兵法ですから、経済的な景気でない事は、直ぐに解ります。武蔵は、どんな「景気」を知る、と言っているのでしょうか。
【火之巻】の構成
1. 火之巻 序
2. 場の次第と云事 3. 三つの先と云事 4. 枕をおさゆると云事 5. 渡を越すと云事 6. 景氣を知ると云事 7. けんをふむと云事 8. くづれを知ると云事 9. 敵になると云事 10. 四手をはなすと云事 11. かげをうごかすと云事 12. 影を抑ゆると云事 13. うつらかすと云事 14. むかづかすると云事 15. おびやかすと云事 |
16. まぶるゝと云事
17. かどにさはると云事 18. うろめかすと云事
19. 三つの聲と云事
20. まぎると云事
21. ひしぐと云事
22. 山海の變りと云事
23. 底をぬくと云事
24. あらたになると云事
25. 鼠頭午首と云事
26. 将卒をしると云事
27. 束をはなすと云事
28. いはをの身と云事
29. 火之巻 後書
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6. 景氣を知ると云事
景気を見ると言うのは、合戦などでは、敵の勢いがある時、衰えている時を知って、相手の人数などの情報を知り、その場の形勢を考えて、敵の様子を見極め、味方の軍勢の仕掛け方を兵法の理に合うようにし、勝てる事を確信し、先に懸かる態勢を作り戦う。
又、一対一の兵法でも、敵の動きを知り、相手の強弱、性格を見定めて、相手の心の隙に仕掛け、相手の抑揚を知り、その間隙の拍子をよく知って、先に懸かる事が肝心である。
物事の景気と言うのは、自分の知力が強ければ、必ず見えてくる。兵法が自在の身になって、敵の心をよく測れば、勝つ道が多い。工夫する事。
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『私見』
ここでも、孫子の言う「彼を知り己を知れば百戦殆からず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し」が想起されますが、武蔵は抽象的な表現をせず、具体的な方法を示している所が、学者と武芸者の違いと言えると思います。より現実的な指標となるでしょう。
中でも、敵の「人がらを見分」と、性格まで考える所が凄いと思います。
私はかえって「窮鼠猫を噛む」とか「男子三日会わざれば刮目して見よ。」を考え、出来るだけ予想、推測をしないようにしています。これも、油断をして痛い目にあった体験から、戒めの意味で心の隅に置いています。
ただ相手が気勢が上がっている時に、わざわざ仕掛ける必要もないと、思いますし、相手の気勢が落ちている時に、攻撃を仕掛けるのは、戦いの常套手段であることは、間違いのない事です。
それと、何度も対戦を経験すると、自然と相手の気勢が見えてくるものです。何も実戦を積む必要はなく、前回も紹介をした、基本組手で十分体験できると思っています。ただし、同じことを繰り返して言いますが、真剣になる事が上達の鍵です。無心の前の一心が、自分の人生を大きく変えてくれると信じています。
武蔵が言う、「めりかり」と言っているのは、現在の言葉では、「乙甲」とも「減上」とも書き、邦楽の世界で音が上がる事を、「甲」や「上」と書き、下がる音を「乙」、「減」と書くそうです。一般的にはありまり馴染みがありません。
これを抑揚と捉えて、その間隙を責めるようにします。この間隙と言うのがミソで、呼吸でも、吸っている時に攻撃する方が、効果があるとされていますが、経験上ですが、吐いて吸う間隙に隙が出易いとも言えます。
抑揚というものは、気勢の事を指していると思いますが、身体の伸び縮み、すなわち腰を落としている時と、すこし腰を浮かせた時がありますが、その間隙を縫うと効果的であると思います。
【参考文献】
・神子 侃(1963-1977) 『五輪書』徳間書店.
・佐藤正英(2009-2011) 『五輪書』ちくま学芸文庫.
【参考サイト】
・播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」http://www.geocities.jp/themusasi2g/gorin/g00.html
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