【五輪書から】何を学ぶか? |
崩れると言うと、この絵のようにビルが倒壊する場合も、ありますし、雪崩や山崩れによる土砂災害なども毎年のようにニュースに上がります。
人間の場合には、身を持ち崩すことも、崩れるということですが、武術やスポーツにおいては、崩れる事は、致命傷になりかねません。
スキーなどにおいても、ダイナミックな動きの中でバランスをとり、安定した滑りをしますが、ほんの少しバランスを崩すと転倒してしまいます。
オートバイなども、雨で流された砂の上にタイヤが乗った瞬間にバランスを崩し、大きな事故につながる事もあります。
仕事を考えても、スムーズに事が運んでいる時に、ちょっとしたミスが仕事を台無しにしてしまう事も、崩れと言えるでしょう。
相手がある勝負では、相手の崩れるのを誘う事も作戦上、有効な方法と言えます。いや、有効と言うより、崩すために、色々な作戦や戦略をたてるのではないでしょうか。
仕事の面でも、人生の上でも、「崩れる」「崩す」というのは、見逃すことができません。武蔵は、どのように「くずれ」を知るのでしょう。
【火之巻】の構成
1. 火之巻 序
2. 場の次第と云事 3. 三つの先と云事 4. 枕をおさゆると云事 5. 渡を越すと云事 6. 景氣を知ると云事 7. けんをふむと云事 8. くづれを知ると云事 9. 敵になると云事 10. 四手をはなすと云事 11. かげをうごかすと云事 12. 影を抑ゆると云事 13. うつらかすと云事 14. むかづかすると云事 15. おびやかすと云事 |
16. まぶるゝと云事
17. かどにさはると云事 18. うろめかすと云事
19. 三つの聲と云事
20. まぎると云事
21. ひしぐと云事
22. 山海の變りと云事
23. 底をぬくと云事
24. あらたになると云事
25. 鼠頭午首と云事
26. 将卒をしると云事
27. 束をはなすと云事
28. いはをの身と云事
29. 火之巻 後書
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8. くづれを知ると云事
崩れという事は、色々な所でみられる。
家が崩れる。身を持ち崩す、敵が崩れる事も時にはあり、リズムが違い崩れる事がある。
合戦においても、敵が崩れる拍子を知って、その間を逃さぬように追い立てる事が肝心である。崩れる時に休ませると、立て直される事がある。
又、一対一の戦いでも、戦っている間に、敵の拍子が違って、崩れが現れるものである。その時に、自分が油断してしまうと、相手は立ち直して、上手く行かない。その崩れた所を付け込んで、相手が立て直さないよう、追い立てる事が肝心である。
追いかけると言うのは、直ぐに強く出る事である。相手が反撃しないよう、討ち砕くものである。うちはなすと言う事を、よく判断すること。相手を討ち砕いてしまわなければ、鈍くなる気持ちがある。工夫する必要がある。
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『私見』
武術であっても、スポーツであっても、相手を崩す事を考えるのは、真っ先に考えなければならない事だと思っています。
護身の為の戦いではなく、相手と戦うと言う事が分かっていて、対峙してから戦い始めるのであれば、相手も自分も、万全の準備をしていると状態だと思います。
その時に、容易に攻撃を仕掛けても、上手く行かない事は、経験がなくても、容易に想像できると思います。
まず、相手の出方を観察します。そして、攻撃のチャンスを伺います。又は、チャンスを作って行きます。これは、バスケットでもサッカーでも、フットボールでも、相手とのやり取りが勝負を分ける事であれば、ごくごく自然の闘い方です。
枕を押さえたら、先を取ったら、場を見定めたら、次にどうすれば良いのかを書いています。
武蔵が言っているのは、相手に二の手をさせない、という事を、くどいくらいに強調しています。そして、崩れたら相手に立ち直らせる時間を与えないよう言っています。
普通に考えると、崩れたらこの機会を逃すまいと思うのではないでしょうか。それでも、武蔵は、ほっと、気を弛めることに気を配っています。
これは、どういう事なのかと言うと、前にも私の体験を書きましたが、あまりにも上手く受けられた時、または崩せた時に、人間は、「上手く行った」と思ってしまうのです。特に、崩すのに手こずった場合は、「ほっと」してしまいます。この事を武蔵は、戒めているのではないでしょうか。
「したるき心あり」(原文)の、したるというのは、大辞林(出典:大辞林第三版 三省堂.)では、
(1) 衣などがべたついている。
(2) ものの言い方が甘ったるい。
(3) にぶい。のろのろしている。
などの意味が書かれています。
私は、(3)の意味をとり、鈍くなる、と読みました。
崩れた時に間髪を入れずに打つのであれば、その流れのまゝ打てば良いと思うのですが、実際には、意外と慌ててしまって、討ち損じる事が多いと思います。
ですから、チャンスの時に一気に打ち砕いてしまわないと、身も心も鈍くなってしまいます。相手が立ち直る前に、自分は万全の態勢を整え、一気に討つ事が大切だと思います。
【参考文献】
・神子 侃(1963-1977) 『五輪書』徳間書店.
・佐藤正英(2009-2011) 『五輪書』ちくま学芸文庫.
【参考サイト】
・播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」http://www.geocities.jp/themusasi2g/gorin/g00.html
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