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【五輪書から】何を学ぶか? | |
今、世間を驚愕させている「猟奇殺人事件」は、稀であってほしいと願いますが、立て籠りによる人質事件も、過去には多発しています。
今回のテーマは、「敵になる」と言う事ですが、相手の気持ちになって考えれば、解決の糸口が見つかるのかも知れません。
しかし、信じられない事件の場合は、相手の気持ちを察する気持ちにも、なりたくない思いです。
護身術と格闘術は、根本が違います。立て籠りの相手から人質を救出するのと、制圧するのとでも、目的が異なります。
色々な場面で、相手の気持ちを察する状況は違うと思いますが、相手と上手く付き合う場合でも、相手を捕える場合でも、相手を打ちのめさないといけない場面でも、相手を知るための方法として、気持ちは察する必要がありそうです。
今回のテーマでは、仕事や人間関係で、相手の気持ちになって考える、そんな場面を想定しながら読み解くと、座右の銘の一つになるかも知れません。
【火之巻】の構成
1. 火之巻 序
2. 場の次第と云事 3. 三つの先と云事 4. 枕をおさゆると云事 5. 渡を越すと云事 6. 景氣を知ると云事 7. けんをふむと云事 8. くづれを知ると云事 9. 敵になると云事 10. 四手をはなすと云事 11. かげをうごかすと云事 12. 影を抑ゆると云事 13. うつらかすと云事 14. むかづかすると云事 15. おびやかすと云事 |
16. まぶるゝと云事
17. かどにさはると云事 18. うろめかすと云事
19. 三つの聲と云事
20. まぎると云事
21. ひしぐと云事
22. 山海の變りと云事
23. 底をぬくと云事
24. あらたになると云事
25. 鼠頭午首と云事
26. 将卒をしると云事
27. 束をはなすと云事
28. いはをの身と云事
29. 火之巻 後書
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9. 敵になると云事
敵になると言うのは、自分を敵になったつもりで考える事である。世の中を見ると、盗みなどをして、家の中に閉じ籠るような者でも、その者を想定外に強い者と思ってしまう。しかし、閉じ籠っている者の心境になれば、世の中の人をみんな敵にまわして逃げ込んでいるのだから、どうしてよいか判らない気持ちになっている。だから、閉じ籠っている者を雉と思えば、捕えようとする者は鷹である。よく考えてみる必要がある。
合戦においても、敵と言えば、強いものと思ってしまい、大げさに考えてしまいがちである。味方が常に適正な人数で、兵法のやり方をよく知り、勝つ方法をよく考えれば、特に気にする必要もない。
一対一の戦いでも、敵の気持ちになって考える必要がある。兵法をよく知って、やり方をよく考えることの出来る、兵法の道に熟達した者に遭うと、必ず負けてしまうと思うのである。よく考える必要がある。
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『私見』
よく、相手の気持ちになって考えてみよう、などと言う事は聞きます。その場合は、良くない事をする場合に、自分がされたらどう思うのかという、注意喚起だと思います。要するに、道徳上の事ですね。
ここでは、相手の精神状態を知って、過大に評価する事がなければ、いらない心配をせずに済むと言った事です。
戦いの場合には、この相手の精神状態も、自分の精神状態も、ややもすると、異常な状態になりがちです。もちろん戦いですから、平静ではありません。
平静な状態も、異常な精神状態でも、人間にとっては、ごくごく自然な事なのです。ですから、異常な精神状態でも、頭から拒否しなければ、容易に推測することが出来ると思います。相手の身になって考えるようにしましょう。
それでも、場面場面で状況は違いますし、おなじ局面でも時間の経過によって、相手の気持ちも移ろうのは、当然の事です。この気持ちが変わるという事にも、心を配る必要があります。
性格にもよると思いますが、私の場合は、相手を甘くみるより、侮らないよう気を付けています。どちらにしても、相手の技量を図る時に狂いが生じると、良い結果を導けません。
相手を甘く見過ぎてもいけませんし、侮り過ぎてもよくありません。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と言うではありませんか。
日々の稽古を通して、相手の技量を正確に見定めることができる眼力を、養成しておくことが求められるのではないでしょうか。
武蔵が言いたいのは、戦う前に勝手な空想で、心が折れない事を戒めているのだと思っています。
【参考文献】
・神子 侃(1963-1977) 『五輪書』徳間書店.
・佐藤正英(2009-2011) 『五輪書』ちくま学芸文庫.
【参考サイト】
・播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」http://www.geocities.jp/themusasi2g/gorin/g00.html
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