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お習字から書道へ Section 49

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 現在使われている文字は、融通が効きすぎて、どれが正しい文字なのか、分かりません。と言うより、常用漢字表を定める時に、「許容の形」として許されていますので、どの文字が正しいとは言えないのが現状でしょう。

 少なくとも、標準の字体を覚えておいた方が良さそうです。

 毛筆も標準の字体があれば、悩まなくても良いのですが、そうもいかないのが現状です。

 私は、たまたま、以前から所有していた、『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』あるいは、『楷行草筆順・字体字典』で文字を調べますので、このとおりに書くと、点画の接続などの方法が、東京書道教育会とは違っていて、間違いと指摘されます。
 そこで、東京書道教育会の手本を書かかれている續木 湖山先生の手による「 毛筆書写事典 (1970年) 」を注文しました。これは古本(1600円)です。今週末には手に入ると思います。これで一つの柱ができれば良いのですが。

 さて、今朝も文字を選んで書く事にします。

 この文字を選ぶときには、『楷行草筆順・字体字典』から、上手く書けそうな文字と、難しそうだな、と思う文字の二種類の文字を選ぶようにしています。

 前回は、「たにへん」「かねへん」「しょくへん」を取り上げました。
 文字は、「谷」、「針」「鈍」「鉄」、「飲」「飼」「養」、を楷書で、「鉄」「養」を書写体で書きました。
 今回は、「よう」「いとへん」を取り上げました。
 文字は、「幻」「幼」「幾」、「級」「素」「絵」、を楷書で、「幼」「素」「絵」を書写体で書きました。
 

「幻」と言う字のポイントは、「結構八十四法」の「譲左」にあたるでしょう。ようするに、左に譲って、左を上に、そして右側の部分を下に書くとうまく文字が収まってくれます。

 

 「幼」も「幻」と同じで、「譲左」です。「力」を下に下げて書くとバランスが取れます。

 書写体の方は、初めて見る文字ですが、手本をよく見て書いて見ました。

 なんとなく、バランスはとれたように思います。

 この「よう」はいとへんにもありますが、一画目の折れが難しい折れ方です。

 これは、点画の筆運びを十分に観察して、練習する必要があります。この折れが出来ないと、仮名文字の草書を書く時に大変困る筆使いです。
 

「幾」は、「機」など偏が左に付くと、意外とまとまりやすいのですが、「幾」だけだと、なんとなくまとまりが悪いように思います。少し真ん中の空白が広くなり過ぎたように思っています。

 それにくらべて、書写体の方は、文字としての良し悪しは分かりませんが、線の構成だけをデザインとしてみると、なかなか様になっているように思いました。

 

 

 「いとへん」の下の点は、楷書ではこのように書きますが、三点の並びに工夫が必要です。この字の場合は手本を観察しての事ですが、慣れていないのか、上の部分との繋がりが出来ていないようです。旁の方は上手く書けたと思いますが、要するに「結構」部分の繋ぎにもう一工夫する必要がありそうです。
 
  
 同じ「いとへん」でも「素」の下の部分は、「糸」を書きます。しかし活字と違うのは、「糸」の下の部部が点と長点になる事です。「糸」だけ見るとまずまずの出来と思うのですが、上の部分とのバランスがいま一つ調和していないように感じています。

 上の部分だけみると、これも結構上手く書けているので、やはり繋がりが悪いのでしょう。「糸」の一画目が太いのか、それとも長いのか、工夫して見る必要があります。

 書写体では、「糸」の下の部分が、三点になるのですね。
 


「絵」は、書写体の方が上手く書けたと思います。楷書の旁の上の「ひとやね」の交点が右に行き過ぎたのでしょう、バランスが良くありません。

 それに比べて、書写体の方の旁は、まとまりがあります。

 楷書・書写体ともに、「いとへん」の上の部分の二画目の右に払う角度を若干上に上げると良いのかも知れません。
 

   
 一口メモ 

 「書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘」(余雪曼著)が、「結体三十六法」と「結構八十四法」を基に九成宮碑文の特殊な結構を参酌して四十四に書き表したものを紹介します。
 今回は、その1回目です。
 【ここで書いてある文字は、九成宮醴泉銘を私が臨書したものです。赤い線は。『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』を参考に入れています。】
(1) 上蓋下法

 この文字は九成宮醴泉銘の文字の形ですが、現在楷書として「宮」や「宇」も同様に上が大きく下を小さくこの赤線の中に入るように書くと、まとまりのある文字になります。

 同様に「営」「官」「京」「禁」などは、逆三角形に書くと良いと思っています。

 この名称も、下の部分に蓋を置くと解せば覚えやすいかも知れません。蓋ですから、下の部分を全て覆いかぶせるような配置になります。

  
(2) 下載上法
 「豈」は「き・け・あに」、「盖」は、「がい・かい・かさ・ふた」と読みます。
 普通の生活でまず書く事はないと思いますが、臨書などの場合は、出てきますので、書道をやる人は覚えて置く必要があります。

 名称はうまく付けられていて、下の部分に上の部分を載せるのですから、三角形が安定すると思います。
 これも、下の横画が全てを載せる形になります。

  
(3) 上下相等法

上の部分と下の部分の割合を同じにすると言う事です。

 「思」の場合は、「田」と「心」の縦幅を同じにして、「心」の部分を幅広にすると安定します。

 「楽」の場合は「木」の上の部分と「木」の縦幅を同じにして、「木」の横画を上を支えるように長くする事でバランスを取っています。

 

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.
・余雪曼(1968-1990)『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』株式会社二玄社.

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