『組手考察』....<5/10>
「決闘」のシミュレーション実験を行ったのは、英バーミンガム大学のアンドルー・ウェルチマン博士のチーム。拳銃を相手より先に抜こうとする意識的な行動よりも、相手の行動を見て本能的に反応する方が速いことが判明した。
実験には54人が参加。拳銃の代わりに押しボタンを使い、相手より速くボタンを押そうとする時間を計測した。自らの意思で最初にボタンを押す場合と、相手の手の動きに反応して押す場合の時間を計ったところ、後者のほうが平均0.02秒速かったという。
同博士は「意識的に行動する場合と本能的に外部の動きに反応する場合の二つの速度を計測したのは初めて」としている。
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これは五輪の書で言われている先の先や後の先とは若干観点が違っていると思います。確かに科学的には自ら思いを集結した決断の結果を行動に移すより、反射的に反応する方が早いというのは経験上十分頷けるところではあります。しかし、ただ単に反応することには危険も介在しています。例えばフェイントと呼ばれる動きに反応してしまっては、次の反応についていけなくなります。
組手には居着き(心や動作が一つの所に居着いてしまい次の動作に反応できないこと)などの状況は即死につながります。
こういう心は「五輪の書」もそうですが、本当に命を懸けた時代にこそ学ぶべきことが残されています。空手道ではありませんが、日本の武道の中でも文化としても十分昇華された剣道があります。そして何より生死を懸けた中から生み出され、書き残され伝えられた書簡や巻物が数多く残されています。
数ある書物の中でも合理的であり、かつ私が考える組手に必要な要素が適格に言い表されていると思えるものに先に紹介した「五輪の書」とともに「不動智神妙録」があります。
一般的には、「不動智神妙録」というものは、沢庵和尚(澤庵 宗彭(たくあん そうほう)天正元年12月1日(1573年12月24日) - 正保2年12月11日(1646年1月27日)臨済宗の名僧。)が、柳生但馬守宗矩(柳生宗厳の五男で歴史上剣士の身から大名にまで立身した唯一の剣豪)に宛てた手紙文とされています。