『組手考察』....<6/10>
ただ、「『不動智神妙録』の原本は現存せず、沢庵から柳生宗矩に書き贈ったという事実を証する史料はないそうですが、沢庵の作であり、しかも柳生宗矩のために書いたということは当時から認められていたようであり、今日では定説となっている」と今村嘉雄(体育学者)は『大和柳生一族』の中に記述されているそうです。
諸説はあったとしても、その内容については、剣道家はもとより武道関係者の修行の道しるべともなる内容であると思います。特に心が身体におよぼす影響や、心を二つに分けた考え方などは、「髓心」との共通部分が多く見られます。
「不動智神妙録」は、原文を読むとか、解説文を読むなどすると良いと思います。ここでは、その内容を、私なりに解釈しながら紹介しようと思います。
沢庵和尚は、15の項目を挙げ(これも写本により違いが見受けられます)、これについてそれぞれ兵法の実際に当てはめながら仏教の教えを説明されています。ただし、14番目と15番目については趣が違いますので、ここでは次の13の項目についてごくごく簡単に解釈していきたいと思います。
1.無明住地煩悩
仏教でいう無明とは迷いの心を表している。
住地というのは止まる所ということである。
止まるということは止まった所に心が囚われてしまうと言うことで、これを迷いという。
したがって、この項では住地は迷いであり人の煩悩(身心を乱し悩ませ智慧を妨げる心の働きを言う)であると言っている。
2.諸佛不動智
動かないと言っても石や木のように無性にて動かないのではなく、四方八方に動きたいように動き一時も止まらいことをいう。
不動明王・千手観音の姿や具体的な戦いの場を想定して如何に心が留まることによる弊害があるかを説明している。
3.理之修行事之修行
心の修行だけでは刀を自在に操ったり、体を動かしたりする事はできません。