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「五輪書」から学ぶ Part-23
【水之巻】表第四・五の次第の事

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   【五輪書から】何を学ぶか?  

 【水之巻】表第四の次第の事と表第五の次第の事は、左右の構えが違うだけなので、同時に読み解く事にします。
 
 私たちは、初めの一手については最善を尽くしますが、次の一手、すなわち、初めの一手が上手く行かなかったときの方法は考えても、初めの一手と同等に身に付けて、対処する事ができるのでしょうか。

 ここで書かれている、五つの構えについては、この次の一手に、かなり重要な稽古方法が示されていると思っています。

 仕事は、時間の制約があり、次の一手に時間を掛けてはいられません。それでも、仕事以外の時間で、自分自身の教養のためにも、幅広く身に付けて置く事が重要ではないでしょうか。

 「若い時の苦労は買ってでもせよ」と言う故事の通りだと思います。何かを身に付けていて、損する事はありません。

【水之巻】の構成

 1. 水之巻 序           
12. 表第四の次第の事
13. 表第五の次第の事
14. 有搆無搆の教の事
15. 一拍子の打の事
16. 二のこしの拍子の事
17. 無念無相の打と云事
18. 流水の打と云事
19. 縁のあたりと云事
20. 石火のあたりと云事
21. 紅葉の打と云事
22. 太刀にかはる身と云事
23. 打とあたると云事
24. 秋猴〔しゅうこう〕の身と云事
25. 漆膠〔しっこう〕の身と云事
26. たけくらべと云事
27. ねばりをかくると云事
28. 身のあたりと云事
29. 三つのうけの事
30. 面〔おもて〕をさすと云事
31. 心〔むね〕をさすと云事
32. 喝咄〔かつとつ〕と云事
33. はりうけと云事
34. 多敵の位の事
35. 打あひの利の事
36. 一つの打と云事
37. 直通〔じきづう〕の位と云事
38. 水之巻 後書
『原文』
12. 表第四の次第の事 (原文を下記のルールに従って加筆訂正あり)
 第四の構へ、左の脇に横に構へて、敵の打ち懸くる手を下より張るべし。下より張るを、敵打ち落さむとするを、手を張る心にてそのまま太刀の道を受け、わが肩の上へ、筋交ひに斬るべし。これ太刀の道なり。また、敵の打ち懸くるときも、太刀の道を受けて勝つ道なり。よくよく吟味あるべし。

13. 表第五の次第の事
 第五の次第、太刀の構へ、われ右の脇に横に搆へて、敵打ち懸くるところの位を受け、われ太刀下の横より、筋違へて上段に振り上げ、上より直に斬るべし。
 これも太刀の道よく知らむためなり。この表にて振りつけぬれば、重き太刀自由に振らるるところなり。
 この五つの表において、こまかに書き付くることにあらず。わが家のひととほり太刀の道を知り、またおほかた拍子をも覚へ、敵の太刀を見分くること、先づこの五つにて、不断手をからすところなり。敵と戦ひのうちにも、この太刀筋をからして、敵の心を受け、いろいろの拍子にていかやうにも勝つところなり。よくよく分別すべし。
加筆訂正のルール
                 *仮名遣いを歴史的仮名遣いに統一
                 *漢字は現行の字体に統一
                 *宛て漢字、送り仮名、濁点、句読点を付加
                 *改行、段落、「序」「後記」を付けた


 『現代文として要約』

 12. 表第四の次第の事

 第四の構えは、左の脇に横に構えて、敵の打ち懸かる手を下から撥ねること。下より撥ねようとした時に、敵がその手を打ち落とそうとするのを、敵の手を撥ねる気持ちで、そのまま太刀筋に乗り、自分の逆の肩に向けて筋交いに斬る。これが太刀の筋道である。また、敵が打ち懸かってくるときも、太刀の筋道を考えて勝つ道理である。よく考えること。

 13. 表第五の次第の事

  第五の構えは、右の脇に横に構えて、敵の打ち懸かる太刀筋とすれ違うように上に上げて直ぐに斬る。これも太刀の道筋をよく知るためである。この構えからの太刀筋の振り方に慣れれば、重い刀を自由に振る事ができるようになる。
 これまでの五つの構えは、詳細に書くことが難しい。我二天一流の太刀筋をひととおり知り、また、大体の拍子を覚えてから、敵の太刀筋を見極めること。まず、この五つの構えと振り方を、怠ることなく鍛錬しつくした後、敵の反応心を察知して、いろいろの拍子で、どのようにも勝つ事ができる。よく道理を弁えること。

 『私見』

 五つの構えを読んでいく内に、武蔵が何を言おうとしているのか、概ね理解する事が出来きました。初めは、不動智と同じで、私以上にくどい書き方に思えましたが、じっくり読んでいくと、私のような、無駄なくどさではないように思えてきました。
 私は自分ではくどいとは思っていないのですが、かなり親しい友人から指摘される事もありました。自分でも、もう少し完結に言う事が出来ないかと、反省する事も多いので、自省しています。

 前の回にも書きましたが、これは、稽古のカリキュラムを、具体的に書き記したものと理解する事が出来ました。ちょっと、穿った読み方をすると、違った印象になり、かといって、上辺だけ読めば良いのでもなく、武蔵が自分の体験から、具体的に書き残したものである事を、改めて認識しました。

 【参考文献】 
・佐藤正英(2009-2011)  『五輪書』ちくま学芸文庫.


 
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