【五輪書から】何を学ぶか? |
武蔵の兵法に見られる特徴は、何と言っても「心理作戦」に見られます。それも、自らの経験から生み出された、心理学とも言える精緻なものです。いわゆる机上論ではないところに、学ぶべきものが見えてきます。
今回も、相手の心理をどのようにして、自分のペースに持ち込んで、戦いを有利に、いや勝ちに結びつけるかを書いています。
「うろめかす」と言うと、「うろたえる」「うろ覚え」などの言葉に「うろ」が付いていますが、ここでは、「どうしていいか分からずうろうろする」(出典:大辞林 三省堂.)という意味で使ってると思われます。ですから、「どうしていいか分からずうろうろさせる」という戦術でしょう。
自分が有利な方に導く、誘導する事が、武蔵が考える「うろめかす」という事だと考えています。
ビジネスの世界では、自分のペースに相手を誘導する事が、成功する秘訣と言って良いでしょう。言葉巧みに自分のペースに引き込むことも大切ですが、戦略として、標識を立てる事も大切な要素ではないでしょうか。
【火之巻】の構成
18. うろめかすと云事
19. 三つの聲と云事
20. まぎると云事
21. ひしぐと云事
22. 山海の變りと云事
23. 底をぬくと云事
24. あらたになると云事
25. 鼠頭午首と云事
26. 将卒をしると云事
27. 束をはなすと云事
28. いはをの身と云事
29. 火之巻 後書
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18. うろめかすと云事
うろめかすと言うのは、敵に確固たる自信を持たせない事である。
合戦でも、戦場において敵の戦術・戦略を図り、二天一流の智力をもって、敵の戦術をああでもないこうでもないと思わせ、どうしよう、こうしようと思わせ、遅いとか早いとか思案させ、敵が動揺する気持ちに乗ずれば、確かに勝てると判断する事。
又、一対一の戦いでも、時々の状況に合わせて、色々の技を仕掛け、或いは打つと見せ、或いは突くと見せ、又は、入り込むと思わせ、敵の気持ちがぐらつく兆しが見えれば、自由に勝つ事ができる。これが戦いの基本である。よく研究すること。
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『私見』
相手が自信を持ってしまうと、なかなか攻略するのは難しくなります。ここでは、そんな自信を喪失させるための方法が述べられています。
合戦の引用では、二天一流の智力で対処すると書かれてあり、具体的には表現されていませんが、一対一の戦いの場合に、その具体的な方法が示されています。
相手に対して、フェイントのように、一瞬こちらの仕掛け方を見せ、如何にも攻撃の方法を相手に悟られたように思わせて、思わせた事と違う事をします。そうすると、相手は思っていた事と違う事をされるので、確信したと思った事が揺らぎます。そして、自信喪失に繋げようと言う分けです。
相手の信念を惑わせ、心の定まらない一瞬を捉えて、攻撃をすれば良いと思います。
また、自信喪失に繋がらない場合でも、思い込んだ事と違う事をされると、何が起こったのか、一瞬理解できない精神状態に落ち入ります。
これは、競技空手でも競技剣道でも、あるいは柔道であっても同じ事が言えます。
しかも、合気道の合気上げと同様、生理的に思い込まざるを得ない方法を取っているのが、正に術であろうと、感心します。【写真は、嘉納治五郎先生(右)と三船久蔵先生(左)です。空気投げを掲載したかったのですが、著作権の関係でできません。興味のある方は、Youtubeで見れますので、参考にしてください。YoutubeのURL:https://www.youtube.com/watch?v=6oglpUmJeP8】
【参考文献】
・神子 侃(1963-1977) 『五輪書』徳間書店.
・佐藤正英(2009-2011) 『五輪書』ちくま学芸文庫.
【参考サイト】
・播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」http://www.geocities.jp/themusasi2g/gorin/g00.html
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