【五輪書から】何を学ぶか? |
「あらたになる」と言うと、「入学」「入社」、「心機一転」など、慣れ親しんだ場所や信条をリセットして、新しい気持ちになると言う事でしょうか。
今回のテーマは、何度か同じような内容のものが見られます。それほど、考えを、新しくして切り替えると言うものが大切であると言う事だと思います。
私は、空手に60数年携わっていますが、つい最近まで、常に基本に戻って稽古してきました。と、いうより、なかなか前に進めません。思うように進歩しない事が原因です。
例えば、平安初段を稽古しようと、始めますと、初めの動作で1時間位同じ動作を繰り返します。そして、次に進めない事も一度や二度ではありません。本当に難しいものです。
最近までと書きましたが、最近はいい加減という事をモットーにしていますので、何とか次に進めるようになりました。
今度は、歳のせいか、少し稽古を怠ると、退化してしまいます。特に心技体と言いますが、身体が固まって来るような感じです。関節という関節が固くなるというか、筋肉が伸びなくなって来ます。それで、筋肉を鍛えようとするとやり過ぎて、筋肉にダメージを与えてしまいます。鼬ごっこのような毎日です。
身体が「あらたになる」ことは、ないでしょうか。
【火之巻】の構成
24. あらたになると云事
25. 鼠頭午首と云事
26. 将卒をしると云事
27. 束をはなすと云事
28. いはをの身と云事
29. 火之巻 後書
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24. あらたになると云事
新たになると言うのは、敵と自分が縺れる気持ちになって、行き詰り動きが取れない時、自分の気持ちを捨てて、物事を新しく始める気持ちになって、その拍子を受けて、勝ちを知る事である。
新たになる事は、いつでも、敵と自分が擦れ合う気持ちになった時は、気持ちを変えて、今とは違う発想で勝つ必要がある。
合戦においても、新たになるという意味を弁えることが肝心である。
兵法の智力で見ればたちまち分かる事である。よく熟慮する必要がある。
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『私見』
まぶるゝと云事をテーマにして、膠着状態を解消する方法が書かれてありました。また、 四手をはなすと云事でも、同じ膠着状態を脱する方法を説いていますが、少しづつ状況が違います。
「まぶるゝと云事」では、相手と強く張り合う時、「四手をはなすと云事」では、相手と張り合う気持ちになった時で、時間的には、張り合う前と、張り合っている最中という差があります。
今回の場合は動きが取れない状態から、どのようにして勝ちを得るか、について書いてありますので、時間的には「四手をはなすと云事」と同じでしょう。
しかし、「四手」の場合は、自ら膠着状態になっていると考えられます。なぜなら、手を離せば離れられる状態だからです。今回は相手と、もつれ合っている分けですから、物理的な方法では解決しなさそうです。ですから、精神状態を解除する事に主眼を置いたのではないでしょうか。
少し、穿った見方をしましたが、単に同じ事が重なっただけかも知れません。しかし、それだけ、気持ちの入れ替えという事の大切さを、身をもって体験した結果なのかも知れません。
歳を取ると、同じ事ばかりを言うと、言われそうですが、それは、言った事を忘れてしまって、また、同じ事を言う事です。しかし、初代財団法人全日本空手道連盟会長笹川良一氏は、人に大事な事を伝える場合は、「同じことを繰り返して言うようにしている」と、聞いた記憶があります。啓蒙と言う事になるのでしょう。
いずれにしても、切り替えが上手い人は、現在の社会でも成功者に多いと思います。関取がインタビューに答えて、一日一番とよく言います。今日勝ったから明日も勝つとは限ません。また、今日負けたから、明日も負けると決まった分けでもありません。
啓蒙など出来る身分ではありませんが、「自分の現在のみが未来を作って行く」と口癖のように言います。この言葉には、自分に言い聞かせる要素が多いのですが、武蔵が「独行道」に示している、「我、事において後悔をせず」も、切り替えるための言葉ではないのでしょうか。
人と言うのは、良くも悪くも頭で物事を考える動物です。反省したり悔んだりするのも人間の特徴です。前にも言いましたが、「僅かな知識」でしか解決の糸口は見つけられません。新しい事に立ち向かえるのは、智慧のみが有効な手段です。
にっちもさっちも行かない時に、頼る事が出来るのは、自分の智慧しかありません。御釈迦様の最後の言葉として今に伝わる「自灯明」をよく考えてみる必要がありそうです。
【参考文献】
・神子 侃(1963-1977) 『五輪書』徳間書店.
・佐藤正英(2009-2011) 『五輪書』ちくま学芸文庫.
【参考サイト】
・播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」http://www.geocities.jp/themusasi2g/gorin/g00.html
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