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「五輪書」から学ぶ Part-36
【水之巻】たけくらべと云事

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   五輪書から】何を学ぶか?  

 私は、五月五日が誕生日です。ですから、「たけくらべ」と言うと、「背くらべ」の歌詞、「柱の疵はおととしの五月五日の背くらべ・・・」が直ぐに頭をよぎります。「やっと羽織の紐のたけ」と一番の歌詞は終わりますが、そんな時代がありました。一年に10cmも背が伸びたことも。それでも、最近はどんどん、身長も縮んで来ています。

 そんな他愛もない「たけくらべ」であれば、問題はありません。

 しかし、ここで武蔵が言う「たけくらべ」は、「勝つ利」の方法論です。身の丈6尺(約180cm)と言われた宮本武蔵が言う、「たけくらべ」とはどのようなものでしょう。

【水之巻】の構成

 1. 水之巻 序           
26. たけくらべと云事
27. ねばりをかくると云事
28. 身のあたりと云事
29. 三つのうけの事
30. 面〔おもて〕をさすと云事
31. 心〔むね〕をさすと云事
32. 喝咄〔かつとつ〕と云事
33. はりうけと云事
34. 多敵の位の事
35. 打あひの利の事
36. 一つの打と云事
37. 直通〔じきづう〕の位と云事
38. 水之巻 後書
『原文』
26 たけくらべと云事 (原文を下記のルールに従って加筆訂正あり)
 丈比べといふは、いづれにても敵へ入りこむとき、わが身の縮まざるやうにして、足をも伸べ、腰をも伸べ、首をも伸べて、強く入り、敵の顔と顔とならべ、身の丈を比ぶるに比べ勝つと思ふほど丈高くなつて、強く入るところ肝心なり。よくよく工夫あるべし。
加筆訂正のルール
                 *仮名遣いを歴史的仮名遣いに統一
                 *漢字は現行の字体に統一
                 *宛て漢字、送り仮名、濁点、句読点を付加
                 *改行、段落、「序」「後記」を付けた
 『現代文として要約』

 26 たけくらべと云事

 丈比べと言うのは、どんな場合でも、敵のそばに入り込む時は、自分の身体が縮まないよう、足も腰も、首までも伸ばして、強く入り、敵の顔と自分の顔を並べて、身長を比べて、比べ勝つと思うほど、身長を高くして、強く入ることが重要である。よく工夫する必要がある。

 『私見』

 私の好みではありませんが、戦いの場でなくとも、人を威圧したり、牽制したりして、少しでも相手より有利に、事を運ぼうとする人が多く見られます。

 国と国では、抑止力と言う言葉に変えていますが、同じようなものだと思っています。油断は大敵ですから、常に準備はしておくに越したことではありません。

 しかし、身の丈に合わない、砂上の楼閣のような虚勢だけは、避けたいと思っています。

 自分自身が小さいからかも知れませんが、たけくらべなどされても、一向に怯むものでありません。初めから大きい人よりも小さいのですから。そんな上辺の事で萎縮する必要はありません。

 仕事の面でも、相手との交渉事で、相手が3人だから、こちらは4人とか、私には理解できない事が、実しやかに実施されています。私から言わせると烏合の衆では、ものの役に立つものではありません。実際にそんな経験は幾度となくしました。

 野生の動物の世界では、「威嚇」はかなり有力な方法なのでしょう。牙をむき、大きさを競う状況は、色々なテレビ番組で見る事ができます。その威嚇や威圧だけで、すごすごと後退りする姿を見せられる事もあります。

 最近ではあまり見る事はありませんが、散歩をさせている犬なども、同じように吠えたりしています。犬の場合は、性格もあるのか、小さい犬程キャンキャンと吠えるような気がしています。

 幼少時には、我家に犬が二匹いました。一匹は秋田犬で、大きさは、立つと160cm程ありました。もう一匹はスピッツですから、小型犬です。
 どちらが、強いかと言いますと、スピッツで、秋田犬はすごすごと引き下がる方でした。ちなみに、スピッツは雌で、秋田犬は雄でした。
 今、このブログに時々登場するアーチャン(雌)の方が、練(雄)より体は半分程しかないのに、強いです。

 これを人間が真似する必要があるのでしょうか。もしかしたら、言葉を持たない野生の動物が、無駄な戦いを避ける為に、選んだ方法なのかも知れません。

 言葉を持ち、色々な教育を受け、教養を付けたり、修行のできる環境にいる人間は、もっと本質的な揺るぎのない心と技術を持ちたいものです。 

 【参考文献】 
・佐藤正英(2009-2011)  『五輪書』ちくま学芸文庫.


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