文武両道のために・・・・『徒然草』を読んで見る。【164】

 今日の文字は『てん』です。書体は行書です。今日読んで見ようと思う、『徒然草 第百六十三段』を読んで見て、感じた文字です。

原文 現代文を見る

 

 正月気分がまだ残っている人、すでに昨日から働いている人、また、正月が稼ぎ時の人もいると思います。

 いずれにしても、今年は「平成」最後の年となりました。「昭和」「平成」そして、どんな名称になるか分かりませんが、三つの年号を跨いで生きている事になります。 
 
 さて、「徒然草」は244段からなる随筆と言う事ですから、およそ3分の1を残す事になります。それでもまだ2か月以上かかりそうですが、一度やりかけた事ですから、諦めずに最後まで読み続けたいと、決意を新たにしています。

 国際的なニュースも気になる所ですが、今日は大人しく「徒然草」にかかる事にします。
 
 さぁ、今日も一日元気で過ごしましょう。

 
徒然草 第百六十三段 〔原文〕

 太衝たいしょうの太の字、點打つ打たずといふこと、陰陽のともがら、相論のことありけり。盛親入道 申し侍りしは、「吉平が自筆の占文うらぶみの裏に書かれたる御記、近衞關白殿にあり。點うちたるを書きたり」と申しき。

 

『現代文』

太衝たいしょうの太の字は、点を打つか打たないか、陰陽道の仲間内で言い争いがあった。盛親入道が言われたのは「吉平が自筆で書かれた、占いに現れた言葉を書いた裏に書かれた日記が、近衛関白殿にある。点を打った文字が書かれている」と言われた。』

 

 

『点』

 ここで、「吉平」と言うのは安倍晴明あべのせいめいの子供で、やはり陰陽博士なのです。ですから、この人が書いた文字が正しいとされたのでしょう。ちなみに、太衝たいしょうと言うのは、陰陽道で陰暦9月の事を言うと言う事です。
(出典:学研全訳古語辞典 学研.)

 現在でも、点を打つか打たないか、あやふやな文字もあります。例えば、名前に土の付く字がありますが、この土に点がついている場合があります。それも、右上につくのと、右の中ほどに打つ場合がありますので、迷ってしまいます。書道の書写体では、三画目の下の横画が少し右上に払い、その横に点を打つように書きます。

 書道で昔から書かれてある文字では、習慣として正確な文字ではなく、文字のバランスの為に点を書く場合もあります。例えば「導」などは、書写体の場合右下に点を入れます。

 しかし、これは漢字を書く時のバランスや見た目、あるいは、元になる文字の違いが点のあるなしになっています。この元になっている部分が違うものに、「博」と「専」があります。これは、「博」は、「甫」が元になっているので、点がありますが、「専」の場合は、元になる文字が「恵」という文字と同じで、点がありません。

 この「太衝たいしょう」と言う言葉は、天文学的な地球や月、太陽の位置関係を表すのでしょうが、なぜ「太」と言う文字を使ったのか、陰陽道が解りませんので、深入りはしないでおきたいのですが、推測すると、次のようになると思います。

 ちなみに、「太」は、大辞林第三版によると「祭祀などに関する名詞・動詞の上に付いて、立派な、すぐれた、などの意を表す。」とあり、「大」は、同じ辞書では「大きいさま。ゆったりしたさま。」がその意味であると解釈できます。同様に「衝」は、「太陽と外惑星との黄経の差が180度となる現象およびその時刻。外惑星はこの時刻の近くで地球に最も接近する。」と同じ辞書には書いてあります。ですから、やはり、「太衝たいしょう」が合っているのでしょう。

 陰陽道では、特別に基準となる月だったと思われます。

 現在では、漢字をどのように書けば良いのかは、文部省が決めていますが、昔と違い、辞典も豊富に出版されていますので、便利な時代になったと思います。