横蹴りの思い出

  【空手の蹴り技、横蹴りを考える】  

 横蹴りと言えば、苦い思い出があります。もう、半世紀(50年)以上も前になりますが、合同練習が終わった後、それぞれに、巻き藁を突く者、バーベルを上げる者、鉄下駄を履いて蹴る者など好き好きに自分の練習をしていました。
 そんな中、私は同僚から誘われて、自由組手をしていました。100%負けたことがない相手なので、軽い気持ちで、相手の攻撃を捌きながら数分経った時です。
 今でもその光景は脳裏から離れる事はありません。私が右手で上段追い突きをした時の事です、相手が右に動き、横蹴りを脇腹に蹴り込んだのです。一瞬右手で下段払いをしたのですが、時すでに遅しです。見事にその蹴りは右脇腹をえぐっていました。
 床にどっと倒れ、口から泡を噴きました。先輩が慌ててバケツの水をかけていました。別に気を失っていた分けでは無かったので、良く覚えていますが、息が出来ないし、動くことが出来ない状態がしばらく続きました。
 痛いというより、自分の油断を恥ずかしく思い、未だに忘れる事はできません。「百獣の王ライオンは、ウサギを狩る時にも全力をだす」と言う意味の言葉を噛み締めたものです。
 何か月か過ぎて、友達と銭湯に行ったとき、「ちょっと小さくなったんじゃないか?」と言われて、銭湯に置いてある体重計に乗りました。多分5kg位は減っていたと思います。あまり気にも留めていなかったのですが、それから10年程経った時、胃の検査で「十二指腸に傷がありますが、既に治っています。」と、告げられ、あの時の「横蹴り」かと思ったものです。
 正に、「油断大敵」気を付けたいものです。

 さて、横蹴りを練習する時のポイントを見て見ましょう。

  1. 前蹴り同様、膝がしらの動きが重要な役割をします。
  2. 相手に対して横を向いている状態で、膝がしらを相手に向けながら上げていきます。
  3. その時、太ももの内側が、自分に対して前向きである必要があります。
  4. 踵は、臀部に近い位置まで上げますが、膝がしらが上がりきるまでに、相手に対して回転しながら踵が相手に向かって足刀を出しながら飛び出します。
  5. 飛び出すという表現は、決して押していかないという事です。
  6. コツは膝がしらを、鼠径部に戻す気持ちで、踵を出すようにします。

では、動画で確認してください。

※横蹴りは、昔の書物を見ても、人によって色々工夫しているように思います。私が東京の道場に入門するまで行っていた横蹴りは、体を蹴りと一直線に倒していたと記憶していますが、定かではありません。

※ちなみに、横蹴りは一般的にはあまり馴染みがないかも知れませんので、どこで当てるのかを図で示します。
 今では、足の指を全て上に曲げるのが一般的だとは思いますが、私が始めた頃は、親指だけを上に、その他の四本は下に曲げていました。
 当てる場所は足刀と言われています。