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文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。 |
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十手-1~13
旧称ジッテ
全部で二四挙動、約一分にて全運動を完了する。
演武線は平安初段と同じ十字形である。
『平安初段と言うのは、印刷ミスと考えます。平安初段には演武線について記載はありませんが、平安二段に、「平安初段と同じ、演武線は工字形」との記載が見られます。なお、十手は足跡から十字形に見えなくもありません。』
(用意)のように、閉足立にて、右拳に左掌を軽くかぶせ、顎の前約20cmの処に構える。
(注)脇の下をひろく、やや肘を張る。
★「空手道教範」の写真では(一)となっていますが、次の項の(1)と紛らわしいので、写真の名称を「用意」としています。
1.右足そのまま、左足を後方に引く(前屈)と同時に、左拳は腰に、(1)の左手の形のように右手の五指を浅く曲げて指先に力を入れ、その甲をユックリと胸から顎にふれる位に前方に向つた円を描いて中段押え受の形(掌が上になる)。
(注)手首にて相手の手首を押えつけた形である。燕飛(33)の左手が腰に来た姿勢になる。この手の形は十手の特徴で(1)から(7)まで同じであるからよく練習せよ。
『この(1)は、「空手道教範」では(二)となっています。理由は、このブログでは、全ての動作に対して写真を撮りましたが、「空手道教範」では数枚の写真を元に説明を加えているためです。』
2.右手そのまま、左足を左斜前(左第一線上)に踏出す(前屈)と同時に、(2)のように左手(五指浅く曲げ)を下よりユックリ押上げるように中段受(甲は下)に、右手(五指浅く曲げ)を裏返して(甲を上に)上よりユックリ押えつけるよう中段受をする。
(注)指先に力を入れ、左右の手の開きは肩の幅位。右手は相手の手首を掴んで押えた形。
『髓心会では、(1)(2)共に足運びが定まってから、手の動きをゆっくり動作しています。足運びは、攻撃の時や受けの時の速さではなく、普通に足を運びます。』
3.両足及び右手はそのまま、左手(肘より先)を右へ倒す(手甲上に、前腕が胸部と平行して水平になる)と同時に、顔を右へ向ける。
(注)この手は、相手の手首・肘などを手甲にて押下げ、又は掌(手首に近い部分)にて押上げ、打ちのけるのである。
『髓心会では、(1)(2)はゆっくり、(3)は動作を機敏にします。』
4.左足そのまま、右足を右第一線上に進めると同時に、左手(拳として)を腰にとり、右手(五指浅く曲げたまま)の手首にて右方中段受け。
5.左足、左拳そのまま。右足を第二線上に移す(騎馬立)と同時に、右手(五指浅く曲げたまま)にて右横より打出すように(甲右上)中段受。右肘少し曲げて。
(注)(4)で右方の敵を防いだ時、前方より敵が突いて来たので、右足一歩踏出すと同時に、掌で敵の手を打払つた意味である。故に、顔は前方に向けよ。
6.右足そのまま、左足一歩第二線上に前進する(騎馬立)と同時に右拳を腰に引き、左手(五指を浅く曲げたまま)で左方より中段受け。
(注)(5)と反対の形である。(5)(6)(7)と三回繰返すが、顔だけは常に前方(敵の方)に向け、上体は足に従つて左・右・左と向をかえる。
7.左足そのまま、右足一歩第二線上に前進する(騎馬立)と同時に、左拳腰に引き、右手(五指浅く曲げたまま)で右方より中段受け。(5)と同じ姿勢である。
8.左足そのまま、右足を引いて左足の前に交叉すると同時に、両拳を頭上に交叉する(右手を前)。この時顔は第二線左方(身体の向つている方)を向く。
(注)(7)で第二線前方の敵を防いだ時、第二線左方(身体の向つている方)から別の敵が上段を攻撃して来たので、両掌を交叉して受けた所。両足を交叉するの、平安五段にもあるように、金的を蹴られない用心である。
『「右足を引いて」と言うのは、次の言葉で理解できると思いますが、左足の前に近づけると言う意味です。』
『髓心会では、交叉立、上段交叉受と呼称しています。』
9.右足そのまま、左足一歩左(第二線上後方)へ踏出す(騎馬立)と同時に、両拳両腿の左右へ打下す。(甲は上)(第二線の左方を向いたまま)。
(注)両拳は腿より約15cmの位置。左右より同時に脇腹へ攻撃して来る拳(又は足)を打払う心持。
10.騎馬立のまま、左方(第二線上後方)へ寄足すると同時に、両拳を大きく掻き分けるように(両肘を帯の前方で交叉すると直ぐに、そのまま両拳を頭上に突上げる様にしながら)左右に開き、(10)のように山構えをする(但し顔は横
を向かずに)。
(注)山構えとは頭と両手とが山という字の形になるからで、半月(両手を開いているが)にもある。前方より顔目がけて突いて来る敵の諸手を掻分ける意味。
『半月とあるのは、後日にこのブログに掲載予定の旧称セーシャンの型の名称です。』
11.顔を右(第二線前方)に向け右足原位置に、左手、左足(そのままの姿勢を崩さないよう保ちながら)同時に前方に打込む。この時顔だけは前の敵を見つめたまま(11)の姿勢となる。
(注)左手首で上段突を打払い、左足で敵の足に踏込む心持である。右足で身体を支え、左腿を高く上げて踏込むよう。
『顔を右と言うのは、自分から見て左手の方向です。』
★この写真では途中足を上げている部分を省略していますが、(11)から(13)までの移動は、すべて膝を抱え込んで床に踏み込んでいます。
12.顔は前方の敵に向けたまま、左足原位置に、右足(姿勢崩れない様)同時に第二線前方に打込む(11)と同じ姿勢で体の方向と顔の向方だけが反対になる。山構えで騎馬立。(注)(11)の繰返しである。(13)も同じ。
『顔は前方と言うのは、第二線方向で自分の態勢の前ではありません。自分の身体の向きからすると、右側になります。』
13.顔を前方の敵に向けたまま、右足原位置に、左足、左手同時に(姿勢を崩さないよう)、第二線上前方に打込む。(13)の姿勢となる。
『顔を前方と言うのは、第二線方向で、自分の身体の向きから言うと、左手の方向です。』
(注)(11)と全く同じ。
【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1979)『ベスト空手7 十手・半月・燕飛』株式会社講談社インターナショナル.
・中山正敏(1989)『ベスト空手7 十手・半月・燕飛』株式会社ベースボールマガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(下)』株式会社池田書店.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.