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文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。 |
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慈恩-1~17
旧称ジオン
全部で四十七挙動、約一分半にて完了する。
演武線は工字形に属する。
(用意)十手の用意の姿勢と同様で、閉足姿勢にて右拳を左掌で包むように当て、胸前にとる。高さは目より見下す位。十手(用意)参照。
★慈恩の用意の姿勢の写真を撮っています。
1.左足一歩後へ退くと同時に前屈となり、左拳を右肩前より、右拳を左股前より互に上下に引張る様な気持ちで、前方へ右拳中段受け左拳下段受けをする。
2.左足を左斜に一歩踏出すと同時に、両拳を一旦交叉(右上)にしながら中段掻分けの姿勢。
(注)このような掻分けの姿勢は、手の形が拳・手刀あるいは裏向、表向と種々あるが、掌の両手の間隔は肩の幅という事を忘れない様。
『髓心会では、掻き分けの動作はゆっくりしています。』
3.左足そのまま、右足を上げて両拳の間を高く蹴放す。
4.右足を前に踏込むと同時に、右拳で胸部を突く気持ちで中段突。
『文章では踏み込むとなっていますが、髓心会では蹴った足を下すイメージです。また、胸部となっていますが、中段突きをしますので、水月を目標にしています。』
5.足そのまま、右拳を引くと同時に左拳で中段突。
6.足そのまま、左拳を引くと同時に右拳で中段突。
(注)熟練の上は(5)(6)は連突きをする。又左右交換して引いた拳は、常に攻撃の構えをする事を忘れてはならない。
★(注)にある攻撃の構えを特別にとるのではなく、気を弛めないと言う意味だと解釈しています。
7.左足そのまま、右足を斜め右方に一歩踏出す(前屈)と同時に左右の拳を一旦交叉(右を上)にして中段掻分け。
『髓心会では、掻き分けの動作はゆっくりしています。』
8.左足を飛して両拳の中間を高く蹴上げる。
9.右足そのまま、左足一歩前に踏込むと同時に、右拳を引き左拳で中段突。
10.足そのまま、左拳を引くと同時に、右拳で中段突。
11.足そのまま、右拳を引くと同時に、左拳で中段突。
(注)熟練したら(10)(11)は連突きせよ。以上(2)より(11)までは平安四段の連突きと大体同様である。
12.右足そのまま、左足を第二線上に移すと同時に、右掌を前向きにして額上より引下し、左手(握つたまま)上段受けをすること、平安初段上段受と同じ要領。
(注)この時両手互に上下に引張る如く十字形を描く事も平安初段と同じ。
平安初段前半
13.足そのまま、左拳を左腰に引くと同時に右拳で中段突。
14.右足一歩前進すると共に左掌を前向きに、額上より引下すと同時に、右拳を上げて上段受けをなす、平安初段の上段受けと同じく手足同時に極まる。
15.足そのまま、右拳を右腰に引付けると同時に、左拳で中段突。
16.左足一歩前進すると共に、右掌を額上より引下すと同時に、左拳を上げて上段受けをする。平安初段の上段受けに同じ。
17.右足一歩踏出すと同時に、右拳で中段に突込む、左拳腰に。
【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1979)『ベスト空手8 慈恩・岩鶴』株式会社講談社インターナショナル.
・中山正敏(1989)『ベスト空手8 慈恩・岩鶴』株式会社ベースボールマガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(下)』株式会社池田書店.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.