空手道における型について【13】
鉄騎初段 20~37

 

 文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。
〔ページを遡る煩わしさを避けるため、説明部分は、前回までと重複して記載しています。

 

鉄騎初段
てっきしょだん
-20~37

今回は、鉄騎初段の後半です。前半部分は、 鉄騎初段前半を参照してください。

20.姿勢はそのまま、(20)のように右拳を右腰に引くと共に、左手を開いて(手甲を後ろに)左方から突いて来るのを、左手首に引掛けて受ける心持。
(注)(2)と反対の姿勢である。
『髓心会では、(2)の場合は肘を曲げ、(20)の場合は肘をやや曲げています。』

21.下体はそのまま、上体だけを(21)のように左に捻じ向けると共に、右猿臂を突出し(右拳握りたるまま甲を外に)ながら、左手にて相手を掴み引き寄せる心持にて、左掌にて右臂を打つ。
(注)(3)と左右反対の姿勢、下体が崩れないよう。
上半身の捻じりと、下半身の形のどちらを優先するかと言うと、上半身の捻じりを優先した方が良いでしょう。ただし、競技などで美しく見せるには、なるべく下半身の騎馬立ちを崩さない方が良いかも知れません。

22.下体はそのまま、(22)のように顔を右方に振り向ける(上体は前面に向く)と同時に、左拳を腰にとり、右拳をその上に(手甲外)重ねる。
(注)(4)と反対の姿勢。

23.そのままの姿勢で、右拳を肩前より斜めに、右側面下段受け。(23)の姿勢となる。
(注)(5)と左右反対の姿勢。

24.そのままの姿勢で、(24)のように右拳を捻じり上げるように右腰に引きつけ、左拳を胸部の前方に水平に構える。
(注)左拳の先が右脇腹より出ぬよう。胸と腕との間は約15cm、肘から手首にかけて少し下がり気味になる。いわゆる「水流れ」である。
『髓心会では、この部分は鍵突きにしています。』

25.上体及び右足はそのまま、左足は(25)のように軽く右足を越えて踏み出す。
(注)この際腰を落とし、膝を屈する事を忘れないよう、両足の開く時も交叉する時も、腰の高さは常に一定と思えばよい。

26.左足そのまま、右足を大きく一歩右に踏み出す(騎馬立)と同時に、(26)のように左手を起こして中段内受けし、顔も前方に向ける。
(注)(8)と反対の姿勢。

27.そのままの姿勢で、(27)のように左拳を右肩前(甲前)にとり、右拳を前下方(甲前)に伸ばすと直ぐに、その反動で直ちに、(次項につづく)

28.(28)のように右拳は右上に、左拳は左下に(共に手甲前)互に強く引張るように引くと直ぐに、(次項につづく)
(注)左右の手首にて敵の手足を同時に受けた心持。

29.右拳を右肩上に振り上げ(手甲後向)ざま(29)のように正面目がけて打ち下ろすと同時に左拳の手首を右肘下に接する。
(注)(9)(10)(11)と同様に(27)(28)(29)は一挙動として敏速に動作する。(29)の右拳は、相手の人中を打つ心持にて真正面に向わなければいけない。
『右拳は手甲後ろ向きと記載がありますが、「空手道教範」の写真では右拳の甲が外向きになっていますので、これを原点とします。』

30.そのままの姿勢で、(30)のように顔だけ右方を向く。

31.そのままの姿勢で、(31)のように敏速に右足を内側に蹴上げるように引く。
(注)右足裏が左膝頭の上あたりに来るよう、このようにして左足は屈して、腰を落としたるまま。熟練したら(31)(32)は一挙動とする。

32.右足を元の位置に強く踏み込むと同時に、(32)のように手と共に上体を右方に捻じ向け、中段受けをする。
(注)右手首をギリリと廻すように、手甲を上向にして、右手首で受ける。左手は右肘に接したまま。

33.そのままの姿勢で、(33)のように顔だけを左側面に向ける。

34.そのままの姿勢で、(34)のように左足を敏速に内側に蹴上げる。左足裏が右膝頭の上に来るように。
(注)右足を屈し、腰を落としたまま。これも熟練したら(34)(35)を一挙動とする。
『31.~34.の動作を髓心会では、波返しと呼称します。』

35.あげた左足を(35)のように元の位置に力強く踏み込むと同時に、上体だけ手と共に左方に捻じ向けて中段受けをする。
(注)下体がシッカリ騎馬立になつていなければならない。

36.下体はそのまま、(36)のように顔を右方に振り向けると共に(上体は正面を向く)左拳を腰にとり、右拳をその上に重ねる。

37.そのままの姿勢にて、(37)のように左右の拳を一時に右方に突出す。
(注)右手は右方に真直ぐに伸ばし、左手は肘を曲げて、前腕が胸部の前約15cmの位置に、左拳の先が右脇腹より出ないよう。

(直れ)直れの号令と共に、左足は動かさず右足を引いて先ずユックリと手足を元の用意の姿勢に復し、次いで顔も静かに正面を向く。

演武線ではイメージが湧きにくいと思いますので、実際の足跡をたどってみました。ここでは、黒の塗りつぶしの足形と黒枠の足形が後半になります。
 次回は、鉄騎二段前半を掲載します。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・道原伸司(1976)『図解コーチ 空手道』成美堂出版.
・道原伸司(1979-1988)『空手道教室』株式会社大修館書店.
・田村正隆他(1977)『空手道入門』株式会社ナツメ社.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1989)『ベスト空手5 平安・鉄騎』株式会社ベースボール・マガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(上)』株式会社池田書店.
・金澤弘和(1977)『新・空手道』株式会社日東書院.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.