【伝統的な回し蹴りの方法を検証する】 |
回し蹴りも、横蹴りも、上手く蹴るために、第一に上げるのは「柔軟性」でしょう。特に「股関節」の柔軟性が大きく、 柔軟ストレッチの記事で紹介したような、股関節に特化した運動を心がけることが必要になります。
しかし、どんな運動でもそうですが、局部の運動も必要ですが、ほとんどの運動は、全身の筋肉が総動員して一つの部位を動かしています。特に回し蹴りの場合は、上半身の捻転や、首の強さも関係してきます。
空手の場合は、水泳と同じで全身を使いますので、まず体幹を強くし、徐々に体幹に付随する末端の筋肉まで鍛えましょう。
通常は、「型」(参照)を「うつ」(参照)と、鍛えられるのですが、回し蹴りの技は、中国拳法で言われている「旋風脚」のように足裏を当てる、「三日月蹴り」という蹴り技しか、見る事ができません。私の知らない「型」(形とも書かれる)が多くありますので、その中にはあるのかも知れません。
護身術として、回し蹴りが紹介される場合は、動画で見られように、相手と自分との間に、障害物がある場合に、これを避けてその上を超えて蹴るという方法が、昔は書物でも映像でも見る事ができました。それだけ、護身術として捉える割合が多かったのでしょう。光陰矢の如しといいますが、時代と共にその技も変化する事は必要な事ではあります。「不易流行」という言葉がありますが、空手道を次の時代にも残しておきたい者としては、「ルールが変わるとゲームが変わる」のは、ゲーム(競技)だけに留めて置きたいと、願うものです。
回し蹴りを練習する時の、ポイントとコツ。
- 膝(太もも)を正面に対して40°~50°程度の角度で、床と平行になるまで上げます。(これは中段蹴りの場合です)
- この時、太ももと向う脛、踵が同じ高さになる事が必要です。これを抱え足と言います。
- この抱え足は、床と平行になっていますので、そのまま、床と平行に蹴りだして行きます。
- 動く順序は、骨盤を回転してからその動きを元にして膝が回転します。当たる瞬間、骨盤の回転を止めて膝、踵の順で回転させます。
- ただし、膝の回転は、当たってからも続けるつもりでなければなりません。
- 5.の理由は、前蹴りや横蹴りと違って、エネルギーの方向が常に回転にありますので、止めてしまうと膝に負担がかかると同時に、相手に対する作用の力が無くなるからです。
- 当てないで、空を蹴る場合は、膝が伸び切る寸前で引くようにしましょう。これも膝への負担を軽減するためです。
- 中段回し蹴りの場合は、足刀部分も床と平行になるようにしましょう。
- 回し蹴りは、当てる部分によっても、足首の形が違います。
- ここで、紹介しているのは、上足底を当てる場合です。ですから、足首は内側に折って、上足底を相手に向けます。
- 足の甲で当てる場合は、足首を伸ばします。足首や脛で当てる場合も同様です。
では、動画で練習方法を確認してください。
一瞬でモーションなく始動して、蹴り終わらなくてはならないのですが、力が伝わっていく順序があります。前屈立の後ろ足で蹴る場合を見て見ましょう。
- 後ろ足の足裏を僅か床に押し付けます。
- 床からの反作用を膝に伝えます。膝は内側に回転します。
- その力は足の腿(もも)を通して、蹴る側の腰を内側に回転させます。
- 蹴る側の腰は、回転すると同時に前に移動する力に変えます。
- 蹴る側の腰が前に移動する力に変わったとき、前足の膝も前に移動しまし重心は前足に移ります。前足を踏み込む場合は、この蹴る側の腰が移動する力が前足に伝わった、床からの反作用を利用して足裏を浮かします。
- 3.でエネルギーが足の腿(もも)に伝わったとき、足を曲げるためのハムストリングに力が入ります(ただし、これは絶対に意識しないで出来るように何度も練習します)。
- 足が曲げられる力を利用して踵を上げていきます。
- この時の静止状態は、腰が正面、膝及び太ももの外側が床と平行で上向き、ふくらはぎ、踵も床と平行まで上がっている。(上段を蹴る場合は、膝が蹴る方向を向きます)
- 蹴る側の太ももは、正面に向かって40°~50°にします。数字が小さい角度ほど早く蹴れます。数字が大きいほど遠心力が大きくなります。
- ここまでの、力の流れは、足裏→膝(内)→腰(内)→膝(上)踵(上)の順序です。
- 次の動作が、回し蹴りがうまく蹴れるかの分岐点です。
- 10.の力の流れは、始め、蹴る側の腰に誘導されて回転し、上半身の逆回転により、蹴る側の腰に急ブレーキを掛けます。
- この時、膝が相手の方に、ちょうど釣り竿を振った時のように、穂先が回転しながら前に飛び出します。この釣り竿の元の部分が蹴る側の腰であり、釣り竿の中間が膝で、足首が穂先になります。(足首より先は当てる上足底や足の甲により、動きについて行きます)
●七面倒(しちめんどう)くさい、説明を長々としましたが、最後に次の句を示して置きます。
【参照】
- 型 : 今では、空手と呼ばれるものには、流派が多く存在します。その殆どの流派では、基本・型・組手と言った練習体系を使って稽古しています。
松濤館流(船越義珍翁創始)では、15の型が有名です(平安の型初段~五段、鉄騎初段~三段、抜塞大、観空大、十手、慈恩、半月、燕飛、岩鶴などを主に稽古します。その他にも抜塞小、観空小、二十四歩、雲手、壮鎮、他にも多数継承されています。もちろん他の流派にも独自の型が伝わっています。
ちなみに、「形」と書かれる方も多くいますが、私は、「型」と書いています。理由については、日本空手道髓心会のホームページにも書いていますが、また、ブログでも紹介したいと思っています。 - うつ : 「うつ」という言葉は、空手界の仲間が集まると、型を一通り練習することや、演武することを「うつ」と昔は言っていました。沖縄から伝わった業界用語です。