お習字から書道へ Section 29

 東京書道教育会や書道界では「部分」、一般的には部首と呼んでいると思いますが、その部分に従って、文字を選んで通信教育の課題とは別に練習しています。

 前回は、「まだれ」「やまいだれ」を取り上げました。文字は「広」「床」「店」、「疫」「病」「疲」」を楷書で、「広」「疫」「病」「疲」の文字を書写体で書きました。

 今回は、「しかばね」「とかんむり」を取り上げました。
 文字は、「尽」「局」「屋」、「戻」「所」「扉」」を楷書で、「尽」「所」を書写体で書きました。


 「尽」は楷書で下にある文字は書写体です。

 楷書が先に出来たものか、書写体が先に出来たのかは、別にして、こうも違う文字が同じ漢字である事に疑問を持ってしまいます。

 楷書の方は、二つの点を少し変えて書くと、釣り合いが取れます。最後の点が中心を取ってくれるようです。

 書写体の方は、縦画と皿の位置に気を付ける事で、バランスを取っています。


「局」「屋」「戻」は楷書ですが、「局」「屋」は「尽」と同じ「しかばね」、「戻」は「とかんむり」です。

 この三つの文字も左払いがあります。左払いは何とか書けるのですが、その下にくる部分によってバランスが難しく感じています。

 どうも、開く角度が重要なのではないかと、考えていますが、「屋」は少し左払いが長かったかなと反省しています。


 「所」は楷書で下にある文字は書写体です。

 自分の感想では、楷書は縦に長すぎたような気がします。

 書写体は、バランスが取れたのではないでしょうか。


 「扉」は楷書です。こういう調和の取り方は、活字をいつも見ていると、なかなか発想が浮かばない文字です。
 活字と同じように書く場合はともかく、活字と楷書の字形が著しく違う場合は、楷書の手本などを常に見る必要があります。

 この文字の場合は、「非」の「点」の変化と、縦画の変化により、文字が全く違うものになってしまいます。
 

 一口メモ 

 前回からの続きで、『はじめての書道楷書』(関根薫園著)で、中国の李淳と言う人の手による「結構八十四法」と言う文字の組み合わせ方を説明していきたいと思います。

 今日は第三回目です。取り上げるのは、「上占地歩じょうせんちほ」「下占地歩かせんちほく」「左占地歩させんちほ」「右占地歩うせんちほ」の4つです。

 「上占地歩じょうせんちほ」は、上下二つが重なっている文字ですが、「二段にだん」や「天覆てんぷく」とは違って、「普」のように上は「並」で、下が「日」ですが、「並」を広くゆったりと書き、下の「日」は、狭く絞って力強くまとめるようにすると書いてありますが、要するに、並の字の最後の横画を長くとり、それを安定させるために、扁平に書いてしまうと、「日」では無くなってしまうので、上の横画に負けないように小さめではあっても、釣り合いの取れる「日」を書かなければならないでしょう。その為には、大きさではなく、線質に工夫が必要かと思います。

下占地歩かせんちほく」、これも上下二つの字画から出来ている「表」などの文字の場合の書き方です。上の部分を小さめに書きますが、重みをつけると書いてありますので、これも大きさではなく、線の太さなどで調整すると、面積は小さくなりますが、程よい重量感を表す事ができるでしょう。
 下の文字は広めに左払いや右払いをのびのびと書くと上とのバランスが取れると思います。

左占地歩させんちほ」は、「敬」を例に上げていますが、部分を左右に分け、左側の部分は、右側より画数が多いので、細めに縦長に書きます。右側は左側とバランスを取るため、やや太めに小さく書くと良いでしょう。

右占地歩うせんちほ」は、左右の部分が「左占地歩させんちほ」と逆になります。「施」を例にあげていますが、「方」は、狭く書きますが、右とのバランスを取るためやや太めに書いて調整します。右側は画数も多いので線は細く書きますが、文字を扁平にして「也」の最後をゆったりと書くと調整が取れます。

 

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.