お習字から書道へ Section 58

 台風の被害が思いのほか大きかったことに驚いています。
 毎年自然災害が大きい事は、政治の姿勢にあると思っています。地震はともかく、台風などは、それこそ田中角栄氏の日本列島改造のように、お金を掛ければ防げるように思います。
 日本全国の河川を深くし、排水管を今の倍ほどの排出量があるものに変えるとか、方法はあると思っています。
 それでも、原子力発電をまだ止めようとしないのですから、人間の浅はかさをみる思いです。
 世の中には絶対と言う事はないと思いますが、最善を尽くす事は可能だと思います。

 口をついては愚痴ばかりが目立ちますが、昨夜は、閑防印を彫りました。「書画の始まりの位置を示すために押す長方形の印」の事です。彫る内容は様々で、座右の銘など、詩句でも良いと言う事なので、『只管』と彫りました。これは「ひたすら」と読みます。『只管打坐』から取りました。
 白文・朱文は、彫り直した物を載せました。

 さて、今朝も文字を選んで書く事にします。

 今まで通り『楷行草筆順・字体字典』(江守賢治著)から、上手く書けそうな文字と、難しそうだな、と思う文字の二種類の文字を選ぶようにしました。

 前回は、「とます」「ふでづくり」「おおがい」を取り上げました。
 文字は、「料」「斜」、「粛」「肇」、「頂」「順」「頭」を楷書で、「粛」「肇」を書写体で書きました。

 今回は、「ふるとり」「れっか」「したごころ」を取り上げました。
 文字は、「隻」「集」「雑」、「烈」「然」「無」、「恭」「慕」を楷書で、「雑」「烈」を書写体で書きました。
 

 自分のイメージよりも縦長に書きました。まとまりは出来たと思います。
 上下の部分と下の部分の大きさを考えて書いています。
 ポイントは横画の角度を変えない事だと思います。

 

 「集」の文字のポイントも、横画の角度を変えない事ですが、上の文字を下の横画で支えるようにする事も大切な要素だと思います。

 

「雑」のふるとりの一画目は、縦画の所で止めています。これは手本を観察しての事です。通常は縦画を越えた下の書写体のように書くと思います。

 私にはその意図は分かりませんが、文字としてのバランスは取れていると思います。

 

 
 「れっか」と言うのは漢和辞典では「ひへん」にありますが、この一画目の書き方は、右上から左斜めに点を打つのが普通よく見られる方法だと思います。
 ここでは手本がこのような書き方になっています。『毛筆書写事典』(續木湖山編著)でも、右上から左斜めに点があります。後の三つの点はどれも同じようですが、一点目だけが違います。これも江守賢治先生特有のものなのか、書写体が左下から右上にはねていますので、昔から楷書はこのようになっていたのかも知れません。
 ちなみに、九成宮醴泉銘の臨書では江守賢治先生のように書かれてあります。
 
 
 「然」の書写体は失敗作です。やはり線の太さには注意して書かないといけません。

 まだまだ、俯瞰して文字を書く事ができていない証拠です。細部にばかり目がいってしまいます。

 

 
 「無」は、文字通り無難にまとめましたが、横画の線の太さに問題があります。

 ここでも、「れっか」の一画目が現在の文字とは違います。

 江守賢治先生が言われている、書道では、楷書は昔ながらの書き方が良いと思うのですが、今では、この書き方は、東京書道教育会では添削で手直しされるでしょう。

 

 

「したごころ」と言うのですね、何も魂胆がある分けでは無いのですが、部分の名称は、もう少し考えれば良いのにと思う位、安易な名称が目立ちます。

 私は、書写体の方が上手く見えます。くさかんむりは、離れている方が格好が付くように思っています。

 ここでも、三つの点の方向に工夫していると思います。手本ではこのように打ってあると観察しました。

 

 
「慕」、少し長めかなとも思いましたが、格好良く書けたと思っています。受ける感じは、爽やかな感じです。

 

   

 一口メモ 

 「書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘」(余雪曼著)が、「結体三十六法」と「結構八十四法」を基に九成宮碑文の特殊な結構を参酌して四十四に書き表したものを紹介します。
 今回は、その10回目です。
 【ここで書いてある文字は、九成宮醴泉銘を私が臨書したものです。赤い線は。『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』を参考に入れています。】
  
(21) 全包囲法
 外枠は大きく書かない事、右側の縦画を太くする事、外枠の中は一杯に収める。これが、要旨として書かれています。

 それ以外にも中の部分は、やや右寄りに書く事がポイントだと思います。ほんの少しですが。

 

 

(22) 半包囲法
 ここで書かれているのは、二面を囲むものとなっていますが、三面を囲むものを含みます。

 ここでも、『端正で調和がとれ、ゆったりしている』と書かれていますが、表現が文学的過ぎて私には理解しがたい言葉です。

 私なりに解釈してみますと、一方又は二方が開いているので、その空いている方向に中の文字がでない事がポイントだと思います。
 先の全包囲法の線を想像して、その中に書くと、窮屈にもならずに調和が取れると思います。 

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.
・余雪曼(1968-1990)『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』株式会社二玄社.
・續木湖山(1970)『毛筆書写事典』教育出版株式会社.