お習字から書道へ Section 27

 東京書道教育会や書道界では「部分」、一般的には部首と呼んでいると思いますが、その部分に従って、文字を選んで通信教育の課題とは別に練習しています。

 前回は、「あさかんむり」「あみがしら」「かみがしら」を取り上げました。文字は、「麿」、「署」そして、「髪」を楷書で、「髪」だけ書写体がありましたので、書写体を添えています。

 今回は、「ひらび」「がんだれ」を取り上げました。文字は「書」「最」、「原」「厚」「厘」を楷書で、「書」「最」「原」の文字を書写体で書きました。 


「書」と言う文字は、今まで何度も書いていますが、上手く書けたことがありません。私にとっては非常に難しい文字です。

 何が難しいかと言いますと、横画が多いので、変化がなく、単調になりがちな文字になってしまいます。

 手本にした文字は、全ての横画に僅かづつ変化があり、そして奇を衒うような変化でもありません。手本のとおりには、書けていませんが、それでも、何も見ずに書いた文字とは、一味違う文字が書けました。

 「書」には「書写体」がありますが、この程度の違いで、なぜ「楷書」の文字を違えたのでしょうか。
 


「最」と言う文字も「書」と同じ「ひらび」に属しますが、なぜ、「ひらび」と言うのでしょうか。単に「平たい日」で「ひらび」と言い、意味はないとの解説もあります。

 「ひらび」に似た部分の名称に「ひ・ひへん・にち・にちへん」と言うものがあります。

 この「ひらび」と言うのは、日の扁平なものを表していますが、扁平でなくても、太陽に関係のない漢字を「ひらび」と呼んでいます。太陽に関係すると言うのは、太陽の光や時間に関係すると言う意味で、「晴」「暑」「昨」「昼」などがありますが、すべて太陽と無関係ではありません。

 この文字を書く時のポイントと言って良いのか分かりませんが、私は、今回手本を観察して、文字の下部にある長い縦画が重要だと思って、縦画に注意を払いながら書く事にしました。意外と思うよりも長めに書くとバランスが取れるようです。
 またまた、但し書きですが、『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』を手本にした場合と言う事です。
 


「原」は「がんだれ」が部分の名称ですが、私にとっては非常に調和の取れにくい文字の一つです。
 
 確かに「日」の上の「点」と下の部分の「小」の縦画が基準にする事ができるのですが、中心線にするには、二画目の左払いが気になります。 

 特に左に払う角度を注意して書かないと、中の部分との調和が取れなくなります。

 


「原」同様 、左払いの角度がポイントだと思います。少し縦長に書いたのは、手本によりますが、バランスは良く書けたと思っています。自画自賛ですが。

 

「原」や「厚」と同様に「がんだれ」ですが、書写体を見つける事が出来ませんでした。 

 自分ではもう少し、「がんだれ」の中の「里」の上の部分が小さい方が良いのか、と思っています。少し手本とは違うものになってしまいました。
 

 一口メモ 

 今『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』を手本にして、東京書道教育会の冊子に記載の部分の名称のとおり、文字を選んで書いていますが、これは、「偏」「旁」「構」「冠」「沓」「繞」と分類されてい文字の部分を取り上げています。

 漢字を書く場合は、ほとんどの場合この部分の組み合わせで出来ていますが、この組み立て方を「結構」というそうです。
 『はじめての書道楷書』では、この文字の組み立てを、中国の李淳と言う人の手による「結構八十四法」と言うものを載せています。

 一口メモの中で、21回に渡ってこの「結構八十四法」を説明していきたいと思います。

 まず第一回目として取り上げるのは、「天覆てんぷく」「地載ちさい」「譲左じょうさ」「譲右じょうう」の4つです。

 「天覆てんぷく」は、冠を広くとり、逆三角形に書く方法です。Section24に書いた「守」などがこれに当たると思います。

 「地載ちさい」と言うのは、「天覆てんぷく」とは逆に一番下に横画がくる場合に、これを長くして、三角形に書くと安定する書き方を言います。「呈」などがこれに当たるでしょう。

 「譲左じょうさ」は、名称のように左を主役にして、偏を上に書き、旁の方を下に書いて、バランスを取ります。文字としては、「即」や「印」を書く場合は、「譲左じょうさ」が良いと思います。

 「譲右じょうう」は、「譲左じょうさ」の逆で、旁の方が偏よりも大きく書く事で釣り合いが取れる文字の事です。「いとへん」の「織」などは、その典型かも知れません。 

 

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.