お習字から書道へ Section 53

 毎日筆を持つ日が続いていますが、空手の場合は、書道よりも惹かれる度合いが高いのか、続けることに、少しの迷いも無かったのですが、書道の場合は、続けることに精神的な圧迫を感じます。

 元来、勉強がきらいな人間ですから、当然と言えば当然ですが、マラソンのように、目標を見つけて、あそこの電柱まで、あそこの角まで、と目標を見つける事も、続ける方法だと思っています。

 これは、「道」に到達していないから起こる事で、空手道の場合は、坐禅で言う「只管打坐」、すなわち、ただひたすら座る、空手道の場合は、何も考えずにただひたすら稽古をする事に意味があると思っています。

 まだまだ、お習字から書道への道は、遠く感じています。

 さて、今朝も文字を選んで書く事にします。

 『楷行草筆順・字体字典』(江守賢治著)から、上手く書けそうな文字と、難しそうだな、と思う文字の二種類の文字を選ぶようにしました。

 前回は、「みへん」「ほこへん」「むしへん」「きばへん」「ひ」を取り上げました。
 文字は、「身」、「矛」、「虹」「蚊」「蛮」、「牙」、「化」「北」を楷書で書きました。
 今回は、「ふしづくり」「おおざと」を取り上げました。
 文字は、「印」「卵」「卸」、「邦」「邸」「郡」を楷書で、「邦」「郡」を書写体で書きました。
 

 「ふしづくり」の文字を三つ書きました。「印」と「卸」の場合は、「結構八十四法」の「譲左」にあたります。

 「印」のポイントは、三画目の横画と「ふしづくり」の一画目の横画の高さを同じ線上にすることだと思います。そして、この横画を少し長めに引いてから折れに入ると形が取れると思います。

 「卸」は、五画目の短い横画と「ふしづくり」の高さを合わせる事に注意しました。

 残念ながら「卵」は好きですが、字は上手く書けませんでした。
 

 「邦」のポイントは、縦画にあると思っています。縦画が並んでいるので、偏と旁の収筆の方向を変えるとバランスが取れました。

 「書写体」の方は、「おおざと」の縦画が少し曲がってしまいました。縦画は、少し曲がると字が安定しませんので、注意が必要です。この文字の特徴は収筆を止める事にあるのでしょう。

 


 「邸」は、少し「おおざと」が小さかったように思います。偏とのバランスが良くありません。旁を大きくするか、偏を小さくするか、書き始めにしっかりイメージを持たないと、こういう失敗に終わります。

 

 
 「郡」の楷書の場合は「譲左」になりません。しかし、書写体は、すこし「譲左」のように見えます。これも「結構八十四法」では見れませんが、余雪曼がまとめた四十四の結構法では、「譲左法」では、この「郡」を例にあげています。

 ポイントは、偏と旁の横幅を同じぐらいに取る事だと思って書きました。

 

   

 一口メモ 

 「書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘」(余雪曼著)が、「結体三十六法」と「結構八十四法」を基に九成宮碑文の特殊な結構を参酌して四十四に書き表したものを紹介します。
 今回は、その5回目です。
 【ここで書いてある文字は、九成宮醴泉銘を私が臨書したものです。赤い線は。『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』を参考に入れています。】
(10) 左右相等法
 この書き方は、赤い点線で示したように、左右の幅を均等にして、中心軸を取る事がポイントになります。

 「離」と言う文字は、一見右上がりに見えますが、左右均等と言うことに変わりありません。

  
(11) 左寛右窄法
 
 「針」は左右均等に見えますが、「金」の左払いで幅を取り、旁の「十」の横画を短くする事で安定した文字になります。左を広く取って、右を狭くする書き方です。

 「動」の場合は、「重」の方が画数が多いので、自然と横幅が大きくなります。

  
(12) 左窄右寛法
 
 ここでは、左を狭くして右を広く取ります。広く取る方法として、曲がりからの横画を十分に伸ばす事が「地」で見られますし、「皎」の書写体の方は、右払いを伸ばして、横幅を取っています。

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.
・余雪曼(1968-1990)『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』株式会社二玄社.
・續木湖山(1970)『毛筆書写事典』教育出版株式会社.