前回の最後に、上の人と食事を共にする機会があった場合の事で、どうなのかなと思った事を書いて見ます。
何年か前と言っても、二昔ほど経っていますが、ある知名度の高い方と、会社の幹部社員10名ほどで、焼き肉を食べに行った時です。
私の感覚では、いわゆる上の人と同席する場合は、その人が主客であると認識しています。ですから、例えその人にご馳走して貰うとしても、もてなすのは下の者だと思っています。ですから、その人が話している時は、視線を向け、耳をそばだて聞き入る態度が必要だと思っていました。
しかし、その主客が話されていない時など、思い思いに自分たちで勝手な話をしています。しかも主客が話され始めても、一向に話を止めようとはしません。その席はまるで居酒屋のような喧噪になっていました。
それも、会社の幹部社員ですからいい大人です。呆れるとともに会社の将来を案じたものです。
昨年、先輩が説教をしている時に云々と言う話がありましたが、先日もテレビで芸人の間でも、そんな風潮になってきていると話していましたので、私のイメージでは、スポーツ界以上に縦の社会ように感じていましたので、そんな時代なのかと考えてしまいました。
私などは、体育館であっても、いつ呼ばれるか分からないので、常に先生の影を追っかけていました。たとえ、体育館の端と端に居ても、直ぐに飛んでいけるように、気を張っていたのを覚えています。これをへつらうとか、ごますりと考えるのは、下衆の勘繰りです。私は、先生に対しても上司に対しても、へつらいや、ごますりをした事はありません。反って諫言する事の方が多かったと思います。その諫言に耳を貸してもらえる関係を気付くには、常日頃の『礼節』に適った態度であったのだと思います。また、換言する時のタイミングや言い方なども工夫する必要があると思っています。
まして、食事の場では、私の先生と他の流派の先生と同席する機会が何度もありましたが、冬なのに家に帰ってくると下着が汗ばんでいた事を思い出します。
さすがにこの歳になると、そこまで緊張する事はなくなりましたが、衣を正す必要はあるのではないかと思います。衣を正すと言うのは、相手に対しての『礼節』です。自由気ままも、ほどほどにしたいものです。
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さて、今日は洋食がテーマです。ここでも、テーブルマナーのようなハウツーを記載するのではなく、これだけ知っておくと恥ずかしくない程度の作法を紹介します。
テーブルマナーで最初に覚えておきたいのは、ホールスタッフ(ウエイターやウエイトレス)が色々気を使ってくれますので、例えばホークを床に落とした場合なども、自分で拾う事はやめましょう。片方の手を少し上げるだけでこちらに来てくれます。これも作法です。
席に着く時も、そのスタッフが椅子を引いてくれる場合もあります。女性と一緒の場合は、レディファーストが西洋のルールですから、女性が着席するのを手伝います。そんな時は、女性が席についてから、座りましょう。女性が主客になります。これは西洋の風習なので、レディファーストを守らない事が一番『非礼』になりますので、注意が必要です。
ただし、フルサービスレストランだけではありませんので、その点はその店の程度に合わせた方が良さそうです。
席に着くと、目の前にナプキンがある場合は、食事の注文が終わってから膝の上に二つに折って、空いている側を膝側、折り目がある方を自分の方に向けて広げるように、習いました。
ナプキンは、テーブルマナーでは大切な作法なので、必ず使うようにします。首から下げるのは作法に適っていません。また、自分のハンカチなどを使うのも良くありません。
食事の時に汚れた、口元や手を拭くためにナプキンはありますが、膝側の開く部分の内側で拭くようにします。これで自分の服も汚す事はありません。
途中で席を立つときは、テーブルの上には置かずに、椅子の上にナプキンの真ん中を掴んで無造作に置きます。ただし、汚れた部分が見えないように気を使います。きっちり畳んでしまうのもマナー違反になります。
これは、食事が終わった時もざっくりと畳む方が良いとされています。きっちり畳むと、料理がまずいと言う合図になるそうです。食事が終わった時は、椅子ではなくテーブルに置いてあるデザート皿の右上に置くようにします。
あえて言う必要も無いと思いますが、ナプキンで鼻をかんだり、汗を拭いたり、しませんよね。
テーブルの上にはナイフ、フォーク、スプーンなどが初めから置いてあります。これを総称してカトラリーと言うそうですが、知らなくても良いと思います。しかし置かれてある方法は世界共通なので知っておくと便利です。
このナイフ、フォーク、スプーンの順序ですが、スープから運ばれてくると思います。これを右端のスプーンで飲みますが、イギリスとフランスではスプーンの扱いが逆です。スープ皿の手前から外側にすくうのがイギリス式、外側から内側にすくうのがフランス式です。また、スープが少なくなった時、スープ皿の手前を左手で少し上げるのがイギリス式、外側を上げるのがフランス式です。どちらか一方で統一して覚えておいた方が良いでしょう。
パンは、一口サイズに手でちぎってバターを少し塗って食べます。大きいまま、口に入れないように。しませんね。それから、スープにパンを浸さないようにしましょう。嫌われますよ。
肉は、左から口に入るサイズに切り分けて食べましょう。初めに全部切る人を時々見かけますが、マナー違反です。
魚は、和食の食べ方に似ています。ひっくり返さない事です。左側に頭がある事も同じです。まず、中骨のある所に切れ目をいれます。切れ目の外側から食べて、内側を食べます。そして、ここからがちょっとテクニックが必要です。ナイフを中骨の下に入れて中骨を外します。それから残りを食べます。これは作法に合っているか分かりませんが、私は、ナイフを中骨の下に入れる前に、頭と胴の付け根にナイフを入れて、頭と胴の部分に骨を分けておきます。こうすると、骨が外しやすくなります。試して見てください。
この程度身に付けて置けば恥ずかしくはないのですが、やってはいけない事を並べて見ましょう。
ナイフとフォークを立てない事、ナイフの刃先は常に自分の方に向け、上に向けたり、外側に刃先がこない事が作法です。食事の間にナイフとフォークを左右入れ替えない事。この程度は知っておきましょう。
右利きの人用にナイフ、フォークは並べられています。出来ればこれに慣れた方が良いのですが、左利きの人は、店の人に断って並べ替えてもらう方が良いでしょう。自分で並び替えるのはマナー違反となります。
さて、日本ではパンの代わりにご飯がでてくる場合があります。これは元々テーブルマナーには無かったのでしょう。色々な食べ方をしています。一番多いのは、フォークの背に塗り付けるようにして食べる方法です。これはマナー違反ですが、昔は日本ではこの食べ方が一般的でした。私も随分この方法で食べていました。フォークを右手に持ち替えてフォークの裏側でご飯をすくって食べる人も見かけます。これもマナー違反です。フォークを左手に持ったまま、真ん中にあるお皿の上で裏返し、左手でご飯をすくいます。その時フォークは壁の役目をします。口に運ぶときはフォークだけにしましょう。
最近結婚式などでナイフ、フォークを使う機会が多いと思います。基本的には外側から使っていきますが、一つで用の足りる物、左右に置かれてある物を同時に使う場合があり、また、同じナイフフォークを使う場合もありますので、少し慣れる必要がありそうです。
もし、間違ってしまった場合は、さりげなく片手を少し上げて、ホールスタッフを呼んでナイフフォークを追加しましょう。場所にもよりますが、フルサービスレストランであれば、お客様の動向に注意していますので、声をださなくても直ぐに近くに来てくれます。
これは、懐石料理などでも同じです。懐石料理などはお客様の食べる速度まで把握して次の料理を出すタイミングを計っています。
もう一つ、知っていて損しない事があります。それは、ナイフ、フォーク、スプーンの持ち方です。よく外国の人に見かけますが、ナイフを鉛筆や箸を持つように使う人を見ますが、これもマナー違反です。必ず、手のひらの生命線の手首側でナイフ、フォークの柄を固定します。そして刃先や爪先の根元に近い部分を人差指で押さえます。こういう持ち方をすると、見た目ナイフフォークは八の字の形になります。中座する時などは、この八の字の状態で皿に置きます。食事が終わった合図は、右側に刃先を自分の方に向けて並べます。中断する時も刃先は自分の方に向けておきましょう。
和食、洋食に作法があるのは、相手に対しての気遣いですから、あまり堅苦しく考えない方が良いと思います。ただし、身に付けておくと『礼節』の意味が分かると思います。
TPOが必要な事は、食事の場でも同じです。ここに書いた作法は正統派のお店の場合です。カジュアルな場所では、カジュアルな場所にあった方法で食事をした方が良いと思います。ただし、作法が板についている場合は正式な方法で食べる事が出来ると思います。
食事の作法と言っても、基本となるのは立ち振る舞い、服装、履物、持ち物などが整っていなければなりません。
レストランや料亭は、戦場ではありませんが、戦場に着のみ着のまま行く人がいないと思いますので、用意はする必要があると思います。
ここでも、知っている事、身に付けている事は大切なのですが、『礼節』と言うのは、人に強要するものでは無い事も知っておくべきです。
強要するものではないにしても、何のために作法やしきたり、あるいは世界中でマナーが伝わっているのかを考えて見ても良いのではないでしょうか。