ものには仕方がある

  【仕方が違うと結果が違う】  

 原因が同じでも、そのプロセスが違うと結果が違う、ごくごく当たり前の事ですが、このプロセスによって、往々にして結果が違ったり、目的を見失ってしまったりするのが人間です。
 ビジネスの世界では、計画を立て、実行して、反省をして、次に繋げる(PLAN-DO-SEEあるいはPLAN-DO-CHECK)。など、物事の達成のために、計画や企画を立てます。この計画や企画の事を仕方と言います。本当に計画や企画が正しく、その計画や企画の通りに遂行できれば、最後の反省は必要ありません。
 しかし、その計画を実行する間にも、環境が変わるかも知れませんし、人のする事ですから、計画通り遂行する能力に欠けるかも知れません。内部の要因だけではなく、外からの力が遂行を阻害するかも知れません。ですから、最後に、これを反省したり、検証したりして、次に繋げるのです。

 私は、何かにつけて、「ものには仕方がある」と言います。 空手道の「型」を考える Part-2にも載せましたが、その修行の段階に応じた「仕方」によって、空手を武術から武道への「道」と誘ってくれます。

 仮に、この「仕方」を空手道の大きな枠組みとします。呼びやすいように、この投稿では「空手の枠組み」と言うようにします。
 「空手の枠組み」は、小さな枠組みの集合体だと思ってください。今まで、 【逆突き】 【順突き】を、腕を使った攻撃の技として載せましたが、その中で、エネルギーの流れを説明しました。
 エネルギーとは、力がどのように増幅しながら伝わっていくかを示したものです。このエネルギーの流れを習得する方法が、小さな枠組みの一つの「仕方」です。

 ここでは、今まで紹介した中で、逆突きについての習得方法を例に挙げ説明します。
 まず、エネルギー(力)の流れの復習です。

【エネルギー(力)の流れ】

  1. 初動は、足裏です。(足裏を床に少し踏み込む)
  2. 膝が内側に回転。(床からの反作用を利用して膝を内側に回転)
  3. 太ももが内回転。(膝の内側への回転力で太ももを内側に回転)
  4. 骨盤が回転。(膝、太ももと回転した力を骨盤に伝えて回転させる)
  5. 鼠径部の張り。(踵から膝、骨盤が一直線になり、鼠径部に張りを感じる)
  6. 骨盤の回転を止める。(踵、膝、骨盤が移動しなければ骨盤の回転は止まる)
  7. 上半身の捻じり(腰部の回転が急に止まるので、脊柱を中心に腰部から徐々に螺旋状に力が増幅し、捻じりが大きくなる)
  8. 肩(脊柱の回転力で肩が回転し、肩が正面を向いた時、脇を締め肩の回転を止める)
  9. 肘(脇の締めを脱力すると、下からの力が腕全体に伝わり、肩を中心に肘が振り子のように前に振り出される)
  10. 手首(当たる直前で手首に力を入れる)

【イメージを感じて流す】
 さて、何のイメージを感じるのでしょうか。床を踏んで、反作用の力を感じる事は、直ぐに感じる事が出来たと思います。
 その力を、体を浸透してくる気体として感じてみてください。ちょうど、胸の前で、手のひらを向かい合わせにすると感じる、ムズムズするような、手のひらを圧迫するような感じです。太極拳など中国拳法ではこれをと呼んでいると思っています。生体エネルギーと呼ぶ科学者もいます。
 ただし、「気」についての見解は、哲学的な意味合いも含めて色々ありますので、ここでは、生体エネルギーと呼ばれているものを、仮に「気」と呼ぶことにしましょう。そのムズムズ感が【エネルギー(力)の流れ】の通り浸透して螺旋状に回転しながら上に上って来るのを感じます。
 この気を呼吸と共に、ゆっくりと感じて行きます。
 この呼吸も、実際の内蔵の動きではなく、イメージを作ります。
 吐く時は、唇を少し開けます。吸うときは唇を閉じ、鼻で吸うようにしましょう。

  1. 鳩尾(みぞおち)の場所に横隔膜があると感じて、これを軽く上に持ち上げるつもりで息を吐きます。この吐く動作の基になるのは、臍下丹田と言われる所から発信します。同時に上と下に気を送り下に行った気は床を押します。
  2. 足裏の反作用を感じたら、直ぐに横隔膜(イメージ)を下に膨らませながら、息を吸い込み、下腹を膨らませます。下腹が膨らみ終わったら、鳩尾も少し膨らませす。しかし、胸はその膨らみに引っ張られるように萎む感じで力を抜きます。含胸抜背の姿勢が大切です。
  3. 息を吐きながら(膨らませたお腹の状態はそのまま維持すると、若干臍下丹田に力が自然と入ります)、気を足裏から手首に【エネルギー(力)の流れ】の通り流して行きます。
  4. 【エネルギー(力)の流れ】では書いていませんが、手首に気が届いたら、掌(たなごころ)に気を集める意識を持ちます。
  5. この掌(たなごころ)に集まった気を包むようにして拳を握ります。ちょうどマシュマロのような柔らかいものを包むようにです。
  6. 初めは手を開いて指先から気を外に送っても良いでしょう。慣れてきたら、拳にして同じような感覚にして、突き出します。
  7. 言葉にすると、クドクドと面倒に感じますが、1.~6.までが一呼吸です。

    ゆっくりした動作と呼吸によって、自分の意識でを動かして行くことが重要です。動画で動きを確認してください。

 こうした、ゆっくりした動きの場合は、特に形ではなく、呼吸と意識で「気」を移動させる事が大切で、呼吸と共に外気を取り入れ体の中を巡らす事で、その「気」のバランスを安定させ増幅させるものと考えています。
 瞬発力は、「脳」の記憶によると考えています。その瞬発力に耐えるために、強靭な筋肉が必要ですが、その瞬発的な起動を促す役割が「気」と考えています。